『植物電子の本』を先駆けて読んだ著名な先生方の読書感想文
2019年に開始、2022年より表記と形式を変えて2024年まで継続されたイベント、『平沢進170奇炉の1分間』内で公開された動画の中で、平沢進に寄せられた世話役一同からの感想のまとめです。
2022年6月23日〜7月11日に公開された3本の動画(一曲目の感想)では、世話役一同より寄せられたコメントを画面上にスクロールしていましたが、2022年7月17日に公開された動画からは平沢進本人による読み上げへと形式が変わりました。(この形式では『〇曲目』『感想を寄せた人物』のみは書き記されていました。その際の表記揺れも概ねそのままに起こしてあります)
よって、感想を述べた先生方の想定とは表記が大きく異なる可能性がございます。
当時、楽曲が着々と制作されていた頃の関係者の皆様のリアルタイムでの反応の参考程度にして頂けたらと存じます。
2022年6月23日公開 1曲目
鎮西エンジニア
今までよりもアレンジが更に進化していますね。
正にギターアルバム。色々な音色が噛み合っています。
この曲は煌びやかでたくさんな音がありながら、夏に島でのんびりと休んでいたい。そんな時に聴きたいと言う感じです。
人の兄
一頻り降った雨が上がり、未舗装の道にあちこちに出来た水溜まり、若草から落ちる雫、蜘蛛の巣に陽の光りがきらきらと反射して、きれい。俳句の様。
湯本(ケイオスユニオン)
アコギや弦やピアノや声など、メインのギター以外の音の役割が補助的性質に留まらない点に平沢作品らしさを感じます。泰然とした境地に導かれる曲調ですが、私には何度聴いても憶えられないフレーズが出てきて悔しいです(笑
2022年7月4日公開 1曲目
平野(ケイオスユニオン)
聴いていると、心底緊張がほぐれます・・ポイントに現れる声も、心地よい鍼のように効きます!
何故か冷たい清流にある山葵を思い出しました笑。
なんか、血流サラサラになりそうというか、無駄な熱は取れ、涼し気に流れていく感じ。ちょっと刺激。外界の雑多な情報は閉じて、エンドレスで聴いていたい曲です。
ルビイ
途轍もなく高い砂の壁が立ちはだかっている。
そんな、さすらいの果てに辿り着く場所から聴こえてくる音楽。寄せては返すリフレインの優しい波に包まれるような心地。
中腹部の硬質なギターは、俗世の喧騒との意識を切断してくれる工具のようだ。ジリジリと重くなってゆく瞼がその証である。視覚情報を遮断して、ただ、なだれ込む音の安寧に身を揺らがせる。
そうしているうちに、息を潜めていた鍵盤の調べが薫ってくる。それは時間の狭間をたゆたうだけの階層へと誘ってくれた。さて、たまには静かに独りごちるのも良いかもしれない。
「この音楽は誰が作ったものですか?」
上空からの陽光は、ただ降り注ぐばかり。
シトリン
まるで見えないほどに透明なアクリルの湖のほとり。
まるで聴こえないほどに静かな心。
ふと鳥の囀りが辺りに響きわたり空に小さな亀裂を作った。これは?はるかはるか遠い記憶の戯れ。美しく悲しかった記憶の戯れ。
2022年7月11日公開 1曲目
TAZZ(会人)
アルバム一曲目にふさわしい一曲目。
毎度お見事であります。
定位が絶妙でどのパートも耳に心地良いです。曲の展開も本当に美しいですね。イカしてます。
冷気漂う朝方の空、黒から青へのグラデーションが思い浮かびました。
SSHO(会人)
窓越しに見える鉛色の空からゆっくりと落ちてくる雨粒の清廉なこと。
雲は低く遠くどこまでも続き、水面に落ちる雨粒の音を響かせている。
ふと、この雲の下にはきっと自分以外に存在していないと感じる。
それは寂しくもあり心地よくもあり。
2022年7月17日公開 中間報告
2曲目に着手する時が迫っている。
雑務A34からF273までが終了し、残る雑務はJKC17から911までだ。これは数日で終わるだろう。
著名な先生方のコメントから、一曲目はアンビエントに近いニュアンスの物を想像したかも知れない。二曲目はやや活動的になりそうな予感がする。
活動的と言っても、机の前に座り、様々なタスクを急がず、しかし着実に落ち着いて処理していくような活動をイメージしてもらえばよい。
窓からは木洩れ日が差し、時折小枝に何らかの小型鳥類が羽を休めてはまた飛び立っていくような時間帯の心地良いタスク処理だ。
ただしこれはあくまで予感。作業を始めた途端、別方向へ舵が切られる可能性もある。
2022年7月26日公開 M02
ルビイ様の感想
呼び声のする方に目をやれば、どこまでも透き通る冷たさが胸を打った。
吐き出されるような逆再生の渦に巻き込まれていって、どこへ連れ出されるのだろう。
海の底で出会った巨大な貝殻が泣いている。重低音のホーン、肌を撫でる泡沫はフルートだ。
ああ、これは妖しく歌う深海魚。シンプルなパーカッション。これは沈没船の記憶。
ならばこの地へと手を取ったギターの音色は人魚だったのか。
地上にいた時に見た、ちりぢりの光を「綺麗な思い出だった」と振り返る。
浮上したくない。浮上したくない。どうかこのまま。
遠くへ泳いでいく人魚が微笑んだ。
「次はどなたが連れて来られるのでしょうか」
私はここで待っている。
2022年8月1日公開 M02
湯本様(ケイオスユニオン)の感想
ギターが活躍しますが突出してはおらず、オーケストレーションの一部に留まり続けています。ギターアルバムという前提がなければギター曲とは思わないかも。
導入が魔術的に美しいです。
鎮西エンジニア様の感想
重たいオーケストラとギター、その後に流れる川のようなパート。その中で朗々と歌うソロ。と、思えば力強いドラム。
この曲は瀟洒でモダンな組曲です。
人の兄様の感想
どこまでも続く深く黒々とした森。老いた馬の背に揺られ旅を続ける青年の数十メートル先を、大鹿がゆっくりとした歩調で時折こちらを振り返りながら先導する。
青年も大鹿も、行き着く先に待つこの惑星最後の「華の香り立つ開花」を目指して旅をしてきたのだ。
あと少しで見届けることが出来るのだ。
青年は背嚢から水筒を取り出し、ごくりごくりと喉を鳴らして水を飲む。
2022年8月8日公開 M02
シトリン様の感想
ここはまた別の星。私は異邦人だ。
果てしない荒野を歩く。乾いた風の向こうに荒くれ者と美女が待つ。
行進、行進。私の向かう先。
交信、交信。私の声が聴こえるか。
はるか荒野は続く。少し良い風が吹いてきたようだ。
オアシスの幻影が降ってくる。なんだこの星は。
SSHO(会人様)の感想
澄んだ深い川底からゆっくりと川面に向かって行く。水面あたりで見上げる景色は、青を基調とした涼しげなもの。
聴覚は相変わらず水の中。空気の振動を、柔らかな粒子に包んで耳に届ける。
ただじっと景色を見上げながら川の流れに身を委ねる。景色は右に傾き、左に傾き。
TAZZ(会人様)の感想
何とも形容しがたい複雑な楽曲ですが、テーマ・旋律がとてもイカしています。恐らくどんな歌詞もそぐわない、インストゥルメンタルであるべきラインだと感じました。
いっそオルゴールにして無限に聴いていたいくらいだし、声だけで演じられる部分はサイレンスピーカーから流される定時チャイムに使われたら、一気に禍々しくなりそうでそれもまた良さげ。
次から次へと意表を突かれる展開に耳がヒリヒリさせられましたが、エンディングの潔さは心地良し。
2022年9月17日公開 3曲目
鎮西エンジニア
7分を越える曲ですが、全く感じない。
これまでの2曲のものでもゆったりとしていましたが、さらにテンポは遅く、Landscapeを感じる大きな雄大さがあります。
湯本 CHAOS UNION
アンビエントの背景が際立たせるギターの伸びやかな跳躍、痙攣的舞踏。
ダンス向きの曲とは違います。ギターが踊っているのです。
平野 CHAOS UNION
しなやかに淡々と進んでいくようで、底の方に深いうねりのような動きがあるとても気持ちのよい曲です。
ここで1曲終わりと言う区切りのない、いつでも続きのある物語のような不思議な時間が流れて行きます。よいですね。
YOU1 人の兄
ガラスの海にゆっくりと小舟の櫂を漕ぐナリンゴワ。
遥か向こうの小島に立つ、小さな灯台で長い年期の明けた夫・ナザフを迎えに行く。
旅の途中で会ったイルカに教わった、秘密の歌を歌ってあげよう。
2022年9月23日公開 3曲目
ルビイ
朧げだった感触が確固たるものとして蘇ってくる。
光学的シンセパートは一見するとフィルム状だが、聴いている内に身体内部を押し出される程の重厚さだ。
そうしてこちらがペラペラの紙切れ一枚になった所へ、回路をひとつひとつ繋いでいくギター。
ニューロンの発火音。隣のあの人。街を行く猫。今朝飛び立った鳥。全ての意識が溶接されて、巨大な一塊になっていく様だ。とろみのある液体が耳に流れ込んでくる。ホログラムの夕暮れに絡め取られていく。
誰の記憶でもない、誰かの帰路。
シトリン
静かの海が語るには、私はかつて液体で、時間や風の友達だったがICE-9という物でこのような姿になっているのです。眩しいほどの光の景色。その下にはとても深い闇もあって、眩しいほどの光のように静かで硬い。透明な闇でもあるのです。
2022年9月30日公開 3曲目
SSHO
浅瀬に流れ着き、身を起こすと海が見えた。鳥の声に導かれて、空は白み始めるが陽が顔を覗かせるにはいましばらく。肩の水滴が乾くまで、いましばらく。
陽が顔を覗かせたなら、肩の水滴はどんなに煌めく事だろう。鳥の声は相変わらず陽を誘っているが、どうか、いましばらく。
TAZZ
間違っていたらすみません。これ今回のリード曲ですかね。
これまで平沢さんの新作には常に心震わされて来ました。歌声は勿論の事、トラックの音色、アレンジ構成、そしてそこから生成される余白。
本曲に関してはこの余白がとても素晴らしいです。イカしています。前半であっという間に浄化されました。そして、美しい余白を残したままエンディングを迎えます。
私の拙い言葉ではなかなか言い表せないのですが、この余白、切なくもあります。
ひょっとして福間君の奏でるEMSがここに存在する予定だったのか、とそんな事を想像させる余白です。ホント、間違っていたらすみません。
2022年11月9日公開 M04
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■鎮西エンジニア■
最初はインドハーモニーと思いきや、美しいストリングスが醸し出す映画音楽のようです。
ディストーションとクリーンなギターが印象的です。
■人の兄YOU1■
この複雑に捩れた鮮やかな色使いの紐の塊を目の前の老婆はいとも*簡単にほぐしていく
窓からは朝の柔らかい光が部屋を満たし陽だまりで微睡んでいた猫が老婆の踊るような手さばきに小さな関心をよせ始めた
私はといえば出されたお茶を飲み干し猫の微睡みを引き継いでいくのだろう
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■湯本(CHAOS UNION)
いくつかの層から成る音像を重ねて同時に聴いているような印象です。
各層それぞれ独立しているようでいて。ちゃんと一つの曲になってるから不思議です!
ギターも表情豊かですね。
2022年12月3日公開 M 04
TAZZ
平沢さんの楽曲においてアンサンブルの素晴らしさは言わずもがなですが、それらを構成するパーツを単体で聴いてみたいという願望が昔からありました。
今回の4曲目ではそれが叶ったかのよう。一つ一つの構成要素がくっきりと姿を顕にしてくれている。
最小限のアンサンブルにより、企業秘密かも知れない術が惜し気もなく晒されているようで、その潔さにも感服します。中盤のエフェクト処理されたギターにストリングスが絡み出す所が特にイカしています。
そしてヒラサワの声はやっぱり無敵ですねえ…。
平野 CAOSUNION
『個性が滲み出るバイプレーヤーたちのみで成立した名作』という感じです。
突出した箇所がない故、一歩引いた複数の名脇役が一つの大きなうねる個性を織り成した名曲。また新しいタイプの名曲。
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2022年12月23日公開 M_04
RUBY
摩訶。
門への階段は長い。進める足は、悠久の時を以てして既に大樹の幹と同化した。
流動する大地。奇術の類のテクノ。亡命の友として、言葉少なげに語るギターは意図を隠す。
フラクタルに攫われ、仰ぎ見れば蜘蛛の糸。
ああ、聞き覚え。この声は最初から鳴っていたはずだ。
しかし、糸が引っ張り上げるものなのか、足元に絡み付いてくるものなのか、はたと。
摩訶。
citrine
澄み渡る空をゆったりと泳ぐ熱帯魚。想い出に似た閉塞感の中で、確かな重さを持ちながら、ゆらりゆらり泳いでいる大きな熱帯魚。
そして空は過去となり、もっと大きな、大きな、金魚鉢の中。
SSHO
弾む金属は水滴の粒のごとく、流れ、たわむれ、陽の光を虹色に写し、大地の熱を虹色に写し、転がり続ける。
流れる金属は水滴のごとく、弾み、転がり、陽の光に潤いを溶かし、大地の熱に潤いを溶かし、流れ続ける。
2023年1月11日公開 M_05
人の兄の感想
雪の深々と降る朝に、その熱気球は音もなく降りてきた。
鬱蒼と茂る黒い森の片隅に寄り添うように静かに着地すると、錆の浮いた鉄兜を被った男が背嚢を重そうに肩にかけてその場を離れて、目の前に広がる小さな町に向けて歩き出す。
家々の窓を見るともなく見ながら歩いていると、窓辺の食卓で老人が一人、男の雪を踏みしめる音に気付いたのかゆっくりと顔を上げ、微かに微笑む。男は少し手を上げて老人に応えるが、足を止めることはなくしっかりとした足取りで前進する。
広場に向かう途中の家々の窓にも、男に気付いた人達が窓の向こうから手を振るが、もうそれには応えず広場に向かう。やがて広場の中央にかつての旧為政者の銅像が倒され、朽ちて雪に覆われて横たわっているものが見える。男はそれに目を向けることなく、歩みを進める。
町のはずれにある畑の横に、移動遊園地の朽ちかけたメリーゴーランドが見えてきた。
そこに辿り着くと男は、白い息をふうっと一つ吹き、背嚢から工具一式を取り出しその遊具がどうすれば動くかと思いを巡らす。笑いながら。
2023年1月16日公開 M_05
湯本(ケイオスユニオン)の感想
重なりあう波紋が背景を描き、進行を担うギターは時に即興に聴こえるけれど、多分違います。
思い出そうとしても思い出せないフレーズなので、もう一度聴く。それを繰り返しています。美しいです。
鎮西(エンジニア)の感想
幻想的な曲。
最初は切り裂くような音色でメロディは始まり、全体で遠く近くのギターたち。
聴きながら物語が見えるようです。
TAZZ(会人)の感想
僅かな、湧き水のようなシンセサイザーのシーケンスフレーズ上を、様々な音の断片が交差して行きます。
凍てつくような緊張感のあるギターの音色には、正直どこか重苦しさを感じて、「一体いつまで続くのだろう」という不安にも駆られますが、シンセがもたらしてくれる潤いのおかげで、ずっと聴き続けたいという思いにもさせられます。
この相反したヤバい気持ちが限界まで膨張したところで、曲は美しい余韻とともに不意に消えて無くなります。
ここがもう快感でしかありません。見事にイカしています。
2023年1月21日公開 M_05
RUBYの感想
追いかけっこ。足場はない。
張り詰めたギターの音が不意に眼前を掠める。自らを焼き切ってしまいそうな声で叫ぶその楽器は、一人で歌う術を知らない。まるで赤子を暖めるかのように、幾重もの繊細な音たちが叫び声を包む。
いつしか耳に届くまでの間、その群れは何を見ているのだろうか。旅路の回顧録に、馳せる。
SSHO(会人)の感想
遥か上空に浮かんだそれは、庭園のような佇まい。
雲の上の陽光を浴びるそれは、開け放たれたケージのような賑わい。
時間、空間を無視して集まり、去っていく。
一言で言えば、楽園のような…飛び交う羽音や鳴き声に騒々しさなどなく。
2023年2月2日公開 M_05
平野(ケイオスユニオン)の感想
朝。いつもの公園に散歩に行くと、いつの間にか異世界に移動している。足元は大きな泉。見知らぬ生物たちが寛いでいる。
でも、違和感も恐怖も無く、ぼんやりただ眺めていると、ふと意識が遠のいていつもの公園に戻る。
景色は夕方になっている。
CITRINEの感想
幽玄な風景が広がるモノクロの世界。霧立ち込める湖の上を、一人のアイススケーターが滑っている。
時折聞こえるのは、遥か遠くからの通信波。
それは距離なのか時間なのか。ゆっくりと、それとも不意に?
氷は割れて、アイススケーターは湖の底に沈んでいく。それともどこか高い所へ?
距離なのか時間なのか。未来のデジャブ?
静止した時間が繰り返し見せる情景。
2023年4月12日公開 M_05*
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YOU1(人の兄)の感想
ずいぶんと上手くノコギリバイオリンを弾く者がいるもんだと振り返ると、やはり隣村のラティオ爺さんであった。
爺さんの孫や弟子たち、踊り手の双子の姉妹を伴い、しばらく床に伏せっていた爺さんの快気のお披露目ってコトらしい。近郷で唯一人の医者のグスタフ先生が爺さんの後ろで軽く肩を叩きながら、「早いよ」とか、「うんうん」「そうだそうだ」などと調子を取っている。
病み上がりとは言え爺さんの頬には赤みが指し、いかにも楽しそうに弾いている。
興に乗った見物人の、抑制の効いた絶妙な合いの手が彩りを沿えている。
孫のプーカが爺さんに呼応して、いつもの悲しそうな作り顔で電気リュードを操るのも、ある種の趣を感じるなあ。
なんや、もう終わりかい。
2023年4月19日公開 M_06
鎮西(音響技師)の感想
久々のダンサブルな曲。そして空の天気を想う。
雨から曇り、晴れから雨から曇り、晴れ、と聴こえます。
湯本(ケイオスユニオン)の感想
引っかけ問題みたいな曲ですね。「ヒラサワ作」という銘は刻まれているものの、それをうっかり聞き逃してしまうと全体的な印象としては青春映画のサントラに使われても違和感ありません。
軽快で伸びやかなよい曲と思います。
平野(ケイオスユニオン)の感想
しゃがんで両手を伸ばし、掌を上にして両手の指先を組んでくねらせながら少しずつ立ち、身体を天に向かって伸ばす。頭の中の想像は自由。
目いっぱいの伸びの手前でまた少しずつしゃがんでいく。これを2回繰り返す動作と時間に合う曲です。
言葉でまとめにくくて、動きで書いてみました。
2023年5月5日公開 M_06
SSHO(会人)の感想
迷い込んだ水面の集落では、光は水中を進み空中に散り、声は空中に放たれ水中に反響する。
日々の営みは液体と気体を境に、淡々と紡がれる。
ここへは、耳を澄ませばいつだって戻って来れる。
TAZZ(会人)の感想
プレーンなギターサウンドとシンプルなシンセフレーズを軸に、実に見事な遊び心が満載。楽曲への構成力への驚きは今回も更新されました。イカしています。
独特な浮遊感は清々しくて心地良く、あれこれ手放して新しい事を始めたい気分にさせてくれます。良い季節に聴かせて頂きました。
ナカムラ ルビイの感想
無限回廊でフリーフォールしている感じ。
有機的な線を描きながら、ハチドリが自由に飛んでいる。羽ばたきの余韻を追っていると、『簡潔な複雑さ』というダブルシンクにぶつかる。頭の中のピースがはらはらと崩れ去る。
ギターは金槌として一役買った。いともたやすく行われる脳内リフォームだ。
オリモマ サミの感想
白い蛍光灯の照明が眩しい真夜中のダイナー。真夜中でなければ、今より遠い過去か未来。
騒然とした店内に置かれた水槽。
不思議な落ち着きの中の、不協和音に耳を澄ましている。
耳を澄ます私も、そんな不協和音の一員であることに不思議な落ち着きを感じながら。
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2023年5月14日公開 M_07
SSHO(会人)の感想
いつもの散歩道に見つけた路地。路地というよりは獣道。
好奇心に抗えず、足を踏み入れれば静かな宴の真っ最中。
見覚えのない生き物どもが木漏れ日に舞い踊る。
TAZZ(会人)の感想
これまた巧妙な仕掛けが満載で、たっぷりと「ヒラサワ」が詰まった感じの楽曲。サビの展開は本当にイカしています。
なぜだかこれまでになく、ライブで披露しているイメージが湧きました。巨大な振り子時計を背景に、弦楽四重奏を従える、といった感じでしょうか。この一曲のためだけの演出としても、アリではないかと思います。
アルバムの発売の折には、是非お願いします。
2023年5月18日公開 M_07
YOU1(人の兄)の感想
おいおい、そこの子。お前はどこの子だや?
こんな強い陽射しの中をそんな大きなトランクを抱えてこんな道を行くのかい。
なに? 隣村に嫁いだ姉ちゃんが患ってるんで見舞いに行くのか。
おじさんの荷車に乗りな。うむ、これでよし。どうだい? 楽ちんだろ?
ここら辺の道は花が咲いているし、綺麗な鳥も飛び交っているし、ほおら、少し風が吹いて鳥や花が笑っているみたいだろ?
ロバがまた軽口を叩いているぞ。何言ってるのかは分からん。
2023年5月29日公開 M_07
平野(ケイオスユニオン)の感想
今まで訪れたことのない国の、ふと通りで見つけた古本屋で、ふと手に取った怪しいお伽話の表紙を捲った途端、ページから聴こえてきた音楽。すごくよい。
CITRINEの感想
電気羊は世界旅行の夢を見ています。
世界はどこまであるのか、電気羊は知らないから、広い国から狭い地下室まで、深い海底から素粒子の先まで、隅から隅まで旅行中です。
あら? ここは青の間、デスクの上。誰かさんに軽く会釈をしてまた出掛けます。
電気羊は世界旅行の夢を見ています。
2023年6月2日公開 M_07
湯本(ケイオスユニオン)の感想
事実は異なるでしょうが、印象としては『いくつかのシンプルなアイデアを試しに重ねてみたら、愉快で実験的な曲になった』みたいな感じです。
飄々とした味わいで、大好きです。
RUBYの感想
芽吹いていく何かをつぶさに観察する。虫眼鏡の代打、ギター。
刻々とその場に透明の彫刻を施していくようでもある。光の屈折を耳で感じる。
驟雨の溜息は思案か、コンダクトか。するりと滑り込む和らぎが、背骨をノックした。
2023年6月6日公開 M_08
YOU1(人の兄)の感想
暗い森の中の小さく開けた場所で、3つの青い惑星が薄暗く広場を照らす。
その中心には旗頭を求め富と善意と悪意を弄んだ挙げ句、大いなる力にか、一瞬で滅ぼされた傲慢な者たちの物語を、螺鈿と楔形文字で施した大きなつづらが一つ。
その上で大きなヒクイドリがじっとこちらを見て立っている。それを取り囲むように半裸の男たちが各々手にした楽器を奏でる。
鉄の板で奏でるカムランに呼応して、ガラスの琴が歌い、ふいごの風がバグパイプの声を響かせ、伸びやかに絡み合う弦の旋律の魔力が、私を黄金の夢の旅へと誘う。
インドシナの神殿の、王妃の夢が導く謎解きの意味が、森を離れようとする私のイカダを押し戻す神秘の旋律。
永遠に聴き続けられるわ、これ。
2023年6月10日公開 M_08
SSHO(会人)の感想
金属の壁で覆われた地下道を進む男の、体に張り巡らされたワイヤー。触れるものは全て振動に変えられ、出口へと放たれる。
反射の末に放出される乾いた響きは、荘厳なエンディングを奏でるのだった。
平野(ケイオスユニオン)の感想
土を縫い、迸る清流。でも、透明で爽快なだけのものではない、みなぎる怪しさ。
今回のアルバム、歌詞がないのもあって、聴いている人、場所、時間、それぞれにさらに刻々と変わる感情が生まれて来そうで、発売がもう待ち遠しいです。
鎮西(エンジニア)の感想
どこの国にも見えない曲。あえて言えば中近東?折り重なるように疾走するギター。短いブレイクでさらにノリノリ。カッコ良いです。
2023年6月14日公開 M_08
湯本(ケイオスユニオン)の感想
風変わりな主題。意表を突く変奏。展開は奔流。3分に満たない曲の中に、器楽曲ならではの心憎い試みが多々詰め込まれていて、楽しいです。
どの曲にも似ていないのに、オープンエアーのヘッドホンから漏れ出した音だけを聴いた家人は平沢曲と看破しました。
TAZZ(会人)の感想
ここに来てギターの良い音が正面から素直に堪能できる曲か、と。
ここに来てヒラサワ固有のフレーズに絡む、流麗なストリングスアレンジも一段とイカしています。そして、ここに来て短めな曲というのが、なんともニクいです。
RUBYの感想
このギター、いきなりハイキックを食らわせてくるなんて。
その後、光の破片となった音が身体の周りをキラキラと舞う。
かと思えば、旅先で出会った無邪気な子供のように、からから笑いながら手を引っ張ってくる。こちらが躓きそうになるのを気にも留めずに駆け出す。
まあいいか。どこへ行こうか。
2023年6月18日公開 M_08
平野(ケイオスユニオン)の感想*
土を縫い、迸る清流。でも、透明で爽快なだけのものではない、みなぎる怪しさ。
今回のギターアルバム、歌詞がないのもあって、聴いている人、場所、時間、それぞれにさらに刻々と変わる感想が生まれて来そうで、発売がもう待ち遠しいです。
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CITRINEの感想
ここは地下室にある古いラボの一室。今日も未知の生命体の研究が続いている。この生命体の中には、どうやら地球のような物があり、深い森を抜けると、広大な青空さえ出現する。
なんということだ。生命体の中の見覚えのある通りを抜け、我々は今地下室に降りようとしている。
2023年6月22日公開 M_09
YOU1(人の兄)の感想
韋駄天走りで飛脚がやってくる。ハチマキに手裏剣3本おっ立てて。
襷掛けに尻端折りの浪人が走ってくる。三間あとを「旦那―!旦那―!」と、十手片手に目明かしが走る。
遥か後ろから御用提灯と六尺棒の男たちがわらわらと追ってくるが、轟音立てて蒸気機関車が捕方たちを蹴散らして走る。そいつを難なく追い抜くのが、顔色一つ変えないハロルド・ロイドさね。
あ、あれはメロスだ。メロスじゃないか。すごい勢いで4人と機関車に迫ってくるぞ。地煙上げての5人と機関車の、抜きつ抜かれつのデッドヒートだ。
長くて辛い旅が君らを待っている。危険に満ちた長い道のりの先に、驚くべき光景を目にするだろう。その為に君らは走り続けるんだ。
走り続けよ、尻に帆掛けて。心地良い夏の雨が、走る男たちの力水だ。
2023年6月27日公開 M_09
湯本(ケイオスユニオン)の感想
他の曲にも言えることですが、ギターをカッコ良く弾かせるための構成というより、むしろ構成の面白さを際立たせるためにギターが貢献している印象です。
ギターはかっこいいけれど、主役は構成なのかもしれません。
RUBYの感想
どことなくオールドスクールなビット感が旋回する中で、執刀医に扮したギターに緩やかに解体されていく。四肢を繋ぐ関節が全て柔らかいゴム紐になった辺りで、鮮やかに展開されていくパラレルな空間に手も足も突っ込んでしまった。
Attention!これはアセンションしてしまう。
SSHO(会人)の感想
幾重にも重ねられたネット状の球体は、各々回転と停止を繰り返す。通過する光は切り刻まれたのち、幾何学的に影を形成する。
ある時は踊っているかのように、そしてまたある時は眠っているかのように。
2023年7月1日公開 M_09
平野(ケイオスユニオン)の感想
これはまた…80年代P-MODELを想い起こさせる名曲ですね。こういう平沢さんならではの特殊曲、良いですね。
ああ、歌詞付けて頂きたいです。
CITRINEの感想
サバンナを行くのは教授とその弟子。この教授というのは、動物たちと話が出来るので今日も大忙し。
あちらではゾウの腹痛。薬草を用い、急げ弟子よ。
こちらでは迷子のライオン。母親を探し、急げ弟子よ。
2023年10月23日公開 M_10
SSHO(会人)の感想
満々と水を湛えた巨大な水のドームは、一切の不純物を拒む故の揺らぎを保つ。
閉ざされた大海が奏でるのは、安らぎとやがて来る沿革の兆し。
CITRINEの感想
柱がたくさん立ち並ぶ。これは私の宮殿だ。
ここから始まる景色といえば、柱の根元から突如緑の蔦が伸び、それは天まで届く。
全ての柱が一斉に倒れ、突然乾いた荒野に一人居る。
もはや、地平から遠く離れ、星々と言葉の間を縫って走る。近くに誰がいようと、断固として孤独な……。
これは私の魂の宮殿だ。
2023年11月15日公開 M_10
鎮西(エンジニア)の感想
テーマのメロディが普通にならないところがヒラサワ曲です。最後の曲ですね。最後に相応しいと思います。
リフのギターの音色、素敵です。
湯本(ケイオスユニオン)の感想
どのギターも鳴る事を楽しんでいるように聴こえます。弾いている人の顔は楽しそうじゃないと思います。
多分ですけど。
RUBYの感想
「ここがゴールだよ」と言わんばかりの荘厳なゲートがゆっくりと開いていく。
ふうっと一息もつかぬ間、天空から現れた大きな手につまみ上げられる。ぽいっと放られた先で、小さな編隊たちに全身をつつかれる。
なるほど、自分は巨大であることを思い出した。
大地に穴ぼこが出来るほど大きな一歩を踏み出す。雄大に響いた足音はギターの音色だった。
2023年11月20日公開 M_10 FINAL
平野(ケイオスユニオン)の感想
歌詞もなく歌もなく、音数も少なめなのにとても濃厚です。2回目聴いた時には別の感想、3回目も、と感想に良い意味で決着がつかないです。
聴く人によっても感想の振れ幅、大きい気がします。
変な希望ですが、いつの日かこれらの曲に歌詞を付けて安心させて頂きたく思います。
タイトルが決まる日が楽しみです。
YOU1(人の兄)の感想
巨大な体育館のフロアで、数百人の黒ずくめの男たちが一糸乱れず踊り出し、四方の出入り口から同じ数の白いドレスの女たちが現れ、男たちの間を縫うように加わり、交ざり合い、大きな輪となってうねり踊るさまは、いとをかし。
これをもちまして『170奇炉の1分間』は終了です。
イベント開始当時は「おそらく終了まで3年以上は掛かるかもしれない」と私自身が予測した通り、なんと、4年の歳月を費やしようやく終了まで漕ぎつけました。
実際ギターアルバム制作はこのイベントが始まる前から行われていましたが、ご存じの通り作業は空いた時間に行われるという制作体制のため、このような長い時間が掛かってしまったというわけです。
このイベントは感想を寄せてくださった世話役の皆様のおかげで成立していました。改めて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
そして長い時間お付き合い頂いた皆様にも厚く御礼を申し上げます。おかげさまでギターアルバムは、完成しました。現在発売に向けて最終調整が行われています。発売までしばらくお待ちください。
そして現在聞こえているこのBGM*は、アルバムの中の一曲です。発売に先駆け、ほんのわずかの間ですがお楽しみください。
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それでは、2019年9月より始まりました『170帰路の1分間』は、これで終了です。ありがとうございました。
以下、諸先生方の感想から勝手に行った予測です。
どの感想を根拠としているのか、などを記そうかと思いましたが、全てフィーリングなのでやめました。
世話役の皆様はそれぞれ音楽的に見ている人、世界観的に聴いている人のバランスが良く、音楽畑ではない人間にもなんとなく分かるものを共有して頂けるのをありがたく思っています。
1曲目→01-記憶草の万象歴
M02→07-遠征する青い花が光に根を張る谷
3曲目→03-浮揚花の野辺で
M_04→05-連峰の雪の赤い花の領域
M_05→09-見えるのは光ですか? はい 光です
M_06→08-受粉電荷 未来へ帰る蔦
M_07→02-植物電子の本
M_08→04-登山する植物
M_09→10-思い出してください やって来ます
M_10→06-放浪種子 電離層へ向かう