素晴らしい店舗で体感できた「空気の影響」
私が時々行くモスバーガー店はチェーン店でありながらも、その他店舗と比べて明らかに抜きんでているように感じる。
店内の内装が洒落ていて落ち着きのある雰囲気と何よりスタッフの方達の接客が素晴らしい。兎も角、元気で愉しそうに接客しているので店内の空気が良く、僅か数秒のやり取りでも気分が良くなってしまう。
大きな道路に面する住宅地であるため、近隣の常連客が多いようで、客は客で店員との血の通ったコミュニケーションを楽しんでいる様子だ。
今まで私は全国チェーンのファーストフード店で働く人達は大変だと思っていた。
その理由としては、単価が安い割に横柄な態度の客が多く、
店員は理不尽な対応に耐えるべく仕事中はマニュアルに則って自ら機械と化しているという辛い印象を持っていたからだ。
店というのは、幾ら店側がサービス向上に努力しても、そこに来る客の態度次第でその努力が水泡に帰すことがあるのではないか。
だから私は、良い店というのは店と客との共創関係があって成り立つものだと思っている。
その点、このモスバーガー店は実に見事に客との共創関係が築けている。
働くスタッフ同士のやり取りも生き生きとしており、それがそのまま接客に反映されているので、至極自然な感じである。
愉しく働いている雰囲気でそのまま接客するし、愉しく接客する雰囲気がこれまたスタッフ間のやり取りに繋がっている。
そうした一連のやり取りにより生まれた空気感は確実に店内のムードを形成してくれている。
この素晴らしい空気感の循環はどのような過程で生まれたのか?
チェーン店とは言いながらも、各店舗毎にカラーがありそれをどう打ち出すかは、店長やスタッフのあり方によって決定されるのではないか。
だとすれば、誰か素晴らしい個人がその雰囲気づくりを引っ張っていい循環を生み出しているのか?
水面に小石を投げれば、そこから波紋が拡がっていくように、
たった一人の心地よい言動が、心地よい循環の起点になりうるのだとしたら素晴らしいことである。
そんな事を考えている最中、スーツ姿の団体客が入ってきたが、
仕事の打ち合わせのために席を探している様子だった。
その状況を認識すると同時に、私が座っている場所は、まさに彼らにとって絶好の場所ではないかと感じたので、
思わず私の方から、「どきますのでここを使ってください」と申し出たのだ。
今までの私は、どちらかというと、周囲の状況に対して反応が鈍い方だったので、こうした反応が自然とできたことにとても驚いている。
何故、このような対応ができたのか不思議になりながらも嬉しかったのだが、恐らくこの店の空気感がそうさせてくれたのではないか。
つまり、私がこの店の空気感に共感し、自分もまたその空気感を形成する循環の一員になりたいと思えたのだ。
そういえば、山本七平著の「空気の研究」という本の中で、日本海軍の特攻作戦は、軍首脳部の合理的判断ではなく「空気」により実行されたのだという事が指摘されていたが、
なるほど、空気というのは良くも悪くも目に見えぬ大きな力を持ち、人々の思考や言動を無意識に操るものだと、この自らの不思議体験により実感した次第である。