「ハタラク」とは~カフェの店員さんから教わったこと~
今朝、いつものカフェでいつものメニュー(ホットコーヒーのショートサイズ)を注文しようとしたところ、その店の若い男性の店員さんが、
「いつものホットのショートですね。
入口でお見かけしてから用意してましたよ。」
と笑顔で言ってくれたのだ。
そして、即座にコーヒーが出てきたのだが、
受け渡し時に「今日はこれまでで最速だったでしょ?」
爽やかな笑顔でひと言。
私はこの店員さんのファンになってしまった。
この人は最近見かけるようになった新人だが、
この人の接客中には、笑いがよく起こっている。
その時から、「この人は愉しそうに働いているな」と思ってはいたが、
今日の一件で、この人がどう仕事を愉しもうとしているのかが
少し分かった気がする。
「働く」とは「ハタをラクにする」ことだという。
ともすれば、「自分を犠牲にして他者に尽くす」とも受け取られがちだ。
私の公務員時代は、「公僕」としてまさにそういう「ハタラキ方」を
組織の内外から押し付けられていた気がする。
だから、できるだけラクな職場を望んでいたし、
早く定年時期がこないかと思っていたのだ。
しかし、この若い店員さんは、違う。
自分をご機嫌にしつつ客をご機嫌にしているのだ。
この人の接客は茶目っ気もあるが、実はそれだけではない。
客が入り口から入ってきた時点で、その客を確認し、
頭の中のデータベースでその客のいつも注文しているものを先回りして
用意するということをやっている。
客の注文を受けてから初動を起こすという「ハタラキ方」と比べると、
圧倒的な違いが生まれている。
その人の「ハタラク」は、その2歩手前から始まっているのだ。
また、客からすれば、注文する前に「いつものやつですね」と
店員から言ってもらえるのは、嬉しいことである。
ある種、その店の常連客として認めてもらえたようで、
それは所属と承認欲求にも関わる部分である。
そうした基本欲求を満たしてあげるサービスをすることで、
コーヒーという商品以外にも大きな付加価値を提供できている。
この人はサービス業に興味があってそれを極めようとしているのかも
しれない。それに、この人は仕事の中にゲーム感覚というものを
取り入れているようでもある。
今の世の中は「働き手不足」だと言われている。
特に、サービス業などではカスハラ問題などが言われている。
できるだけ働きたくないし、客とも関わりたくない。
そう思う人が増えても仕方がない。
そんな中、この若い店員さんのような接客をしてくれる人が
いるのは希望がもてる。
それに、どんなにカスハラ気質を持つ客でも、
あのような接客をされて不機嫌でい続けることは難しいだろう。
「ご機嫌さ」というのは、伝染するものだ。
そして、「先手必勝」という理は、まさに「ご機嫌さ」において
発揮されるものではないか。
そういえば、赤ん坊というのはあの笑顔で誰しも虜にしてしまう。
「ご機嫌さの先手必勝」のいい見本だろう。
不機嫌になる理由というのは誰しもいくらでも簡単に見つけることが
できるし、しかもそれに引っ張られやすい。
だからこそ、自分で自分をご機嫌状態にでき、
それを他人におすそ分けできる人というのは、素晴らしく輝いてみえる。
これってスゴイ才能のようでいて、
単純に「注意の向け方と解釈の仕方のパターンの違い」に過ぎない。
おまけに元手はゼロである。ならば、やらない手はないだろう。
僅か1~2分の接客の間に、この店員さんからは、
とても大事なことを学ばせてもらった。