最も満足した280円の使い方
私の町内にはKFC(ケンタッキー)がある。
もう10年程昔の話になるが、その時は仕事帰りにそこにより、
夕飯までの1時間ほどをそこで読書や仕事のアイデア構想に費やしていた。
こういうファーストフード店の良い所は、喫茶店よりもずっと安い値段で
喫茶店のように落ち着いて過ごせるところである。
帰ったら夕飯を食べるので、チキンは頼まずドリンクだけを注文したい。
当時、そこで売っていたオレンジジュースは一パック140円。
さすがにそれだけでは気が引けるので2パック注文。
合計280円を支払う。
私は週に4日くらいは通っていたので、
スタッフの方達とも顔見知りになった。
ここのスタッフの人達はとても感じのいい方ばかりだ。
気持ちのいい心の籠ったサービスを受け、その後の読書や仕事もはかどる。
注文したジュースは紙パック保存なので、日持ちもする。
災害時などいざという時の備えにもなる。
(実際、その数年後に熊本地震に遭遇したが、
その時にこのジュースが役に立った)
そんな感じで、仕事帰りの夕方のひと時をそこで過ごし、
僅か280円で、充実した時間を過ごすことができたので、
ありがたい店である。
退店する時も、気持ちの良い挨拶で私を送り出してくれる。
ここで過ごす1時間の時間価値は280円の何倍もの付加価値がついている。
なんとハイリターンな投資であろうか!
ジュースは2パックあるので、少なくとも1パックは自宅に持ち帰る。
それは冷蔵庫に保存すれば、妻が喜んで飲んでくれる。
時々、2パック持ち帰ると、
どんどんと冷蔵庫の中にジュースが増えていく。
ある真夏の日。
私のアパートに植樹されている樹木の剪定業者の人達が
炎天下の中で作業されていた。
この人達は夫婦で、とても感じのいい挨拶をしてくれる。
そこで妻が、この人達に冷蔵庫のジュースを差し入れることを閃いたのだ。炎天下での長時間の作業後に飲むキンキンに冷えたジュース。
「おかげ様で生き返りました!」
と喜んでもらえた。
妻からこのやり取りをきき、私が使った280円というのが、
物凄く生かされているようで嬉しくなった。
お金を循環させることで経済は回っていくというが、
循環するのは、お金だけではないことを知った。
KFCで私が払ったお金は、一見、オレンジジュース代だけであるし、
受け取った商品もそれだけではあるのだが、
気持ちのいいやり取り、そこで過ごさせてもらうことで生まれた生産性、
持ち帰ったジュースの有効な使い道、などなど循環できた価値は280円よりも遥かに大きい。
お金というのは、こういう風にして使えたら最高だとしみじみ思えた。
この時の280円の使い道に匹敵するような方法を次々と編み出していきたい。
それこそが、私がやっていきたいアートの一形態なのである。