ウクレレな日和
写真のウクレレは、若きギタービルダーが母のためにつくったものだ。
ギターと同じように、すべてが手作りのウクレレは、木目を美しく出すために、ごく薄くセラック塗装を施し、まるで何も塗っていないようだ。
ソプラノサイズで小さく持ちやすいし、弾いても聴いていても、耳にも心にも気持ちよく、ポロポロとお菓子が転がるような、明るい音がする。
プレゼントされた母は、いろいろな病で、うまく指が動かなかったり、思ったようにメロディーを覚えられなかったりと、なかなか前へ進まないのだが、焦ることなく、ポロンポロンと弾き続けている。
一日中、こたつに入り、弾き続けている。とても楽しそうだ。
世界中に母親はいるだろうけど、息子が作ってくれたウクレレを弾いて、病の日々を過ごしている母は、そうそういないだろう。
じいさんは、少しだけ羨ましい眼差しを隠して、新しく弾きたい曲の譜面を見ながらノートに3弦の2フレット→2弦開放→1弦3フレットなどと、書き写している。
弾きたい曲の見本演奏と、調弦や譜面変換した進行表作りは、じいさんの担当だ。
今は、ウクレレを弾かせたら右に出る人はいない、と勝手に思い込んでいる「富永寛之」さんの曲集にある、「ダニーボーイ」を弾いている。
一度に二つの弦を押さえたり、和音を押さえるのは難しいので、単音に変えた進行表だ。
ハイポジションがあるので、なかなか進まないが、少しずつ曲になっていくのを毎日聴いている。
うまく弾けているときなどは、二人で合奏したいなと思うのだが、プレッシャーになるといけないので、心の中で頑張れとガッツポーズをしている。