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山賊行為概論 ② -好球強打はともだち怖くないよ編-

こんにちはこんばんは。じはんきです。
山賊行為概論、久々の更新です。
さっそく前回の続きから!

※この記事には試合やデータを見ての独自研究が強く含まれています。引用は自由ですが鵜呑みにすると…なので何卒ご理解のほどよろしくお願いします

【2020/4/23追記】

この戦術を標榜したアレックス・コーラ元監督、および好球強打の戦術で勝ち進んできたボストン・レッドソックスについて「レギュラーシーズンで映像機器を使った不正行為(サイン盗み)」があったとされる調査結果が、日本時間2020/4/23に公表されました。これは好球強打の存在確証に多大な影響を及ぼすものであり、山賊の研究において今まで上げてきた説が崩れることさえありえると考えています。本稿ではこの好球強打に代わるもの、もしくはレッドソックス以外の好例が出てくるまではこのままにして研究を進めようと思っておりますが、現在はここから下の文章は現時点では存在確証のほとんどとれないものとなっています。あらかじめご了承の上お読みください。

好球強打ってNANDA?

•緩い球が来たなら早いカウントでも強振し、強い打球を飛ばす「好球強打」の戦術を採用しているからではないか?
これが前回の最後で挙げた山賊行為のカラクリの一つ、とは言ってもなんじゃそりゃという方のためにご説明を。

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好球強打とは、MLBボストン・レッドソックスの元監督、アレックス・コーラが標榜した打撃戦術です。
「甘い球、緩い球が来たら早いカウントでも強振し、ハードヒット=強い打球をヒットゾーンへ飛ばして相手投手を打ち崩す」という非常にシンプルながら奥深い戦術です。

ただの早打ち?いえ、この戦術には大きな意味が込められています。

リリーフが打てないなら早めに試合を決めちゃえばいいじゃない

現代のMLBでは、逆転することが非常に難しくなっています。その主たる理由は強力リリーフ陣の存在です。
有名な投手の名前を上げるだけでも、“ミスター回転軸調整”ブレイク・トライネン、“奪三振マシーン”ジョシュ・ヘイダー、“無敵のクローザー”カービー・イェーツ
彼らをレギュラーシーズンで何回打ち崩せるでしょうか?レッドソックスがよく戦う相手には豪腕アロルディス・チャップマン、えげつなく綺麗なジャイロ回転を持つディエゴ・カスティーヨなどなど…
同地区にいればこうした強力リリーフらと、必然的に対戦回数も増えていきます。できれば彼らと対戦したくないのがホンネでしょう。

そんな中でコーラ監督らが生み出した彼らへの解答は「ハードヒットの連発で大量点を取り、先発投手を打ち崩して大差をつけて勝つ」でした。
「リリーフが打てないなら早めに試合を決めちゃえばいいじゃない」というマリー・アントワネットのような考えです。

好球強打の本質は、「相手リリーフ陣との対戦を避けつつ勝ち星を増やす」ことにあります。
そのために、甘いゾーンに投じられる緩い球を高い確率で強く打ち返す必要があるのです。

例を挙げると主軸となったムーキー・ベッツのヒートマップ。

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Fangraphsより抜粋した、2018年のベッツのContact%のヒートマップです。内角から真ん中にかけて、高い割合でコンタクトしていることがわかります。

この年のベッツのHard%は40%、wFBも+40得点以上を叩き出し、データ上も強い打球が打てていることが裏付けられています。

(ただし強い打球だったかどうかのデータには主観が大きく混じるので、ぜひぜひ当時のハイライトの動画をみて感じていただければ…)

ここで落とし穴をひとつ。
当たり前ですがプレーオフのような短期決戦に入れば好球強打では勝てなくなります。レッドソックスはそこに「パワプロのようなバントを決める」といったスモールボールの要素を取り入れ、トータルベースボールで勝ち進みました。また、抑えられる投手陣も短期決戦で勝つための重要な要素の一つです。絶対に軽視してはならないと強く思っています。

もう一つの効能

日本での実例を見てみましょう。
山賊ライオンズの好球強打がハマった例がホークス大竹を打ち崩した昨年の5/22。

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2アウトになるリスクを承知で緩くきたチェンジアップを強く叩き、2塁打。

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ゲッツーリスクでも甘いところにくれば強く叩いてヒットに。

こういった積み重ねが、早期大量点を呼びます。(2巡目あたりまでが勝負で、基本的に山賊はここまでで決めきれないと消化不良を起こしやすくなります。)こうなってしまうと強力リリーフ陣を投入しようにもできなくなってしまいます。連投中ならなおさらです。
ビハインドで甲斐野ワンポイント?5点差で平井準備?あれらはちょっと思うことがあるのでいつか記事にできれば…

ここで一つの疑問を。年140試合以上あるペナントでは、なぜ大差がつけられた状態であればあるほど、強力リリーフ陣を投入しなくなるのでしょうか?
「お前何アホなこと言ってるんや…」と思う方もいらっしゃると思いますが、なぜの整理はとても重要です。例えばの話、勝者のメンタリティを持っているチームなら、強力なリリーフ陣をつぎ込めばいずれは相手がプレッシャーに負けるのを待つ、と言った展開も期待できそうなのに、なぜ注ぎ込もうとしないのでしょうか?
登板数がかさむから?意味のない登板だから?

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私はこう考えています。
大差をつけられた相手は、逆転できないと分かった時に試合を諦める」からです。
当たり前じゃん!と言う方もいらっしゃると思いますが、「この試合は諦めよう」という気持ちにさせることはそれだけで大きな効果を持ちます。その瞬間から自軍投手が打ち込まれない限り勝利がほぼ決まるからです。

もちろん先の2つの回答も正解です。大差をつけると相手が諦めモードに入りやすい理由は以下の2つ。

①「質のいい50登板」を作るために、勝てないゲームと分かった段階で強力リリーフ陣の投入を諦めることは、登板過多のリスク回避にも繋がるから。
②1/144を捨てて落としても、次の試合から勝ち進めばいいので、強力なリリーフ投手温存により、適切な場面で登板させられる可能性が高まり、結果的に好成績を残せる可能性が増えるから。

しかしながら、好球強打を戦術として採用するチームの本当の恐ろしさは、繰り返し大量点を取ることで「何度もゲームを捨てさせる」ことにあります。「次があるじゃないか」をなくす、「“捨て試合にしよう”という心理状態を強引に作り出す」ことが、好球強打のもう一つの効能だと私は考えています。

まとめ

本記事のポイントは以下の3つ。

・好球強打とは、「甘い球、緩い球が来たら早いカウントでも強振し、ハードヒット=強い打球をヒットゾーンへ飛ばして相手投手を打ち崩す」を基本とする打撃戦術である
・好球強打の本質は「強力リリーフ陣との対戦回数を減らしながらペナントの勝ち星を増やす」ことである
・好球強打によって早い展開で大差をつけるとと、相手はそのゲームを捨てることを選択する心理が働きやすくなる。これを繰り返すことで、野手力だけでペナントを有利に進められる

こんな感じで今回の記事はおしまい!
余談ですが、最近の山賊は「甘いゾーンをよく見逃す」ことが多くなっています。(マーカス・鷺ヌーマンさん @L_CHC_HOU_16019 のツイートより)
これに関しては後々触れようと思います。先にヒントワードだけ出しておくと「スラットボーラーの急増加」「平均球速アップ」「ドリルすんのかいせんのかい」。

次回は「ストレート誘い込み編」。プラスで「山賊打線の打線観」もやっていきます、ぜひぜひ!

それでは、また。
じはんき

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