ライオンズの強さは打線「だけ」にあらず
パリーグを制した埼玉西武ライオンズ。
圧倒的な打線で打ち勝った…とよく言われがちですが、それだけ見てたら真の強さがわからないのがこのチームの魅力。今回はそれを解き明かしていこうと思います。
※この記事には試合やデータを見ての独自研究が強く含まれています。引用は自由ですが鵜呑みにすると…なので何卒ご理解のほどよろしくお願いします
UBR走塁はすべてのキモ
打線とともに「足がある」はよくライオンズを評する時に言われる言葉。金子41盗塁、源田30盗塁(9/26試合前現在)と数はぶっちですが、数だけ見てたら強さを解き明かせないぜ!と誇れるのが山賊。
すべては「身体能力」と「次の塁を狙う意識づけ」とそれを実現する「高い走塁技術」で作られています。
「UBR」という言葉をご存知でしょうか?
UBRとは「盗塁以外の走塁による得点貢献」のことで、タッチアップや進塁打の際にしっかりと次の塁に進めたかどうかで、その選手の走塁でのチームの貢献度を図る統計指標です。
ライオンズはこの「UBR」を非常に大切にするチームであり、相手のわずかなミスでもしっかり次の塁を“適度に”狙います。
具体的な例を2つ。
こちらはこないだの優勝決定試合。注目は黒田コーチと木村と秋山。(03:44~)田村のパスボール処理に時間がかかるのを一瞬で見破った黒田内野守備走塁コーチと全力で駆け抜ける木村。田村の送球が2塁からそれたのを「一瞬で」見破って全力で3塁へ進む秋山。
もう一つの例はこれ。
一瞬のスキを見て3塁に余裕で進む中村。そして当たり前のように2塁を奪う栗山。
盗塁「数」ばかりが注目されて久しいですが、ライオンズの強さはこの「UBR走塁」にあります。「ただ次の塁を盗む」のではなく「あの手この手で100%次の塁を確実に奪う」ことが重要だと私は考えています。これにより、アウトのリスクが最小限にしつつ容易に1、3塁やチャンスを作ることができるのです。お前の塁は俺のもの、俺の塁は俺のもの。
また、これを実現するためには相応の判断力が必要となります。どのラインまでいったらアウトになるのか、どのラインだったらセーフになるのか。ライオンズは佐藤コーチとのすり合わせで、この課題をクリアしています。
そして、この走塁能力の高さにより、相手バッテリーに強烈なプレッシャーをかけることができます。最終的にこれは「ストレートなら強くしばかれて長打にされる、変化球なら盗塁される」といった「2択の突きつけ」による心理戦になり、山賊行為を大きく助くことができます。
この辺りのお話はこれからの「山賊行為概論」をお楽しみに。
また、この圧倒的な走塁能力により、山賊が最も恐れなければいけないものは失策ではなく「牽制死、走塁死」になります。牽制で刺されれば塁上が空になり、山賊行為へのトリガーが発動できません。私は山賊が衰える時はこの2つが極端に増えた時だと思っています。
話が逸れてしまいましたが、山賊走塁を支える一人、赤田コーチの言葉でこの項目を締めたいと思います。
「本人の調子や、相手のピッチャーとの力の差もあることだからヒットを打てないのは仕方ない。でも走ることはできる。全力で走ってアウトなら納得するけれど、そうじゃなかった。たとえ凡打でも、何かあったらセカンドをねらうつもりで走れと話しました」
守備は華麗なロックンロール
当たり前の話ですが、山賊行為をやって100点稼いでも、次の守備イニングで101点取られたら話になりません。守備が良いことはそれほどまでに重要です。
内外野に分けてみていきます。
まずは内野。源田たまらん、「ファウルフライ処理の神」中村剛也とスター揃いですが、この男について触れておく必要があります。外崎修汰。今シーズンからはセカンドに座ったユーティリティプレーヤーですが、浅村の後釜に座ってめでたしめでたし…という話で終わらないのが山賊の凄み。外崎は既に2017年、セカンドを守ったことがあります。そのプレーがこちら。(02:39~)(04:09~)(03:35~からは今はおなじみになった源田との併殺奪取)
この試合、私は現地にいて彼のプレーを練習から見ましたが、前年にショートで叩かれまくったとは思えない安定したグラブさばきだったのを鮮明に覚えています。
西武の内野守備は浅村(以下あのつく人)が抜けて弱くなる、といった開幕前の予想を何度見たことか。西武の内野守備を支えているのは人ではなく「技術」だと私は考えています。腰を落としすぎず、素早い握り替えと無駄のない動作。源田くんが代表例ですが、基礎を抑えた上で自由度も高いので応用も危機対応もばっちりなのです。
お次は外野編。山賊の外野といえば金子侑司。フェアになりそうな打球を危なげなく捕られ、涙をのんだ方も数多いと思います。
守備範囲の広さと落下点までの移動の素早さに定評のある彼ですが、ここでクイズ。それを実現できる技術は何でしょう?
答えは「動きだし一歩目とトップスピードまでの素早さ」です。外野手に必要なのは打球判断と足の素早さとはよく言われますが、金子はプロ野球選手の中でもはずば抜けた速さを持っています。
打球音が聞こえた瞬間にはもう落下点に向けて全力疾走。元々の足の速さがそれを支えています。そしてこの一歩目の動き出しの速さが、優れたフライ処理に大きく貢献しているのです。
「打球音が聞こえる→フライ性の打球が飛ぶ→どこに落ちるか判断する→動き出す」、この一連の動きを圧倒的に素早く、正確に行えるのが金子選手の魅力です。メジャーリーガーではカージナルスのハリソン・ベイダー選手なんかがまさにそうです。圧倒的な一歩目の速さをご覧あれ。
コンマ0秒で判断しなければいけない世界で、これほどの判断力を持つ選手はそれだけでチームの守備力を大きく向上させることができると私は考えています。え?木村は打球判断そんな良くない?当たりですね。
木村選手の凄みはこっちにあります。ライオンズのスタメン外野手は全員「送球によるUBR走塁阻止能力」を兼ね備えています。走塁編の逆で、それをさせないようにするのです。
レフトでもこの強肩。これぞUBR走塁阻止です。またこれによって、進塁打を打たせない強みを発揮することができるのです。ライオンズを相手にするとなかなかヒット以外でランナーが前に進まない、というのにはこれが要因となっている可能性があります。これぞ抑止力。
まとめ
本日のまとめはこちら。
・ライオンズは打線だけで勝っているのではなく、UBR走塁と技術ある守備力も一緒に合わせて勝ちを支えている。
・UBR走塁を行うことで、アウトになる恐れなく、安全に大きくチャンスを広げることができる。
・内野は技術、外野は足の速さと判断力、肩の強さによるUBR阻止能力でライオンズは山賊行為による大量点を守り切ることができた。
当たり前ですが野球は打線だけでは勝てません。走塁、守備、そつない投手力、すべてが揃って初めて1勝を手にできるのです。最近のライオンズが強くなったのはもちろん選手の力もありますが、コーチ陣を始めとするすべての人々の「青炎」によって支えられています。これからもしっかりと見守っていけたらいいなと思います!(今日の試合を見ればわかる通り控えメンバーの技術向上はこれからです)
さて、シーズンも間も無く終わり。
やっぱりライオンズファンはやめられない。
大好きです。
全力・情熱・無償の愛で、
狙いは一つ、日本一。
じはんき