なぜ子どもはすぐに大人にならないのか?
子どもの成長と子育てのコストの意外な関係
子育てをしたことのあるお父さん、お母さんは子どもを育てることがいかに大変か身に染みてわかっているのでしょう。
考えてみると、子どもを成人まで育てることは自分の寿命の20年近くを子育ての為に費やすことを意味します。
仮に、中学校卒業まで育てるとしても15年間はさまざまな資源を提供しなければなりません。
子育ての大変さを感じたことのある方の中には「すぐに大人になってくれたら、楽なのに」と思ったことはないでしょうか?
しかし、どうやらその考えは誤りのようです。
チンパンジーなどと比較しても、人類は成長を遅らせるように進化してきたことがわかります。
さらに、人間の子どもは食料調達を自分で行うことはできませんので、子どものうちは親に依存するということです。
もし、チンパンジーのような速度で子どもが大人になれば、親の負担は減るのでしょうか?
これを確かめた研究があります。
この研究によると、子どもがもしチンパンジーと同じような速度で成長した場合、約10%~50%程度の余分なエネルギーが必要だと仮定しています。
つまり、子育ては楽になるどころか、むしろ大変になるわけです。
これは、ヒトが幼少期の体の発達を抑えることにより、食事から得られるエネルギーを脳の発達に費やしていることを示唆しています。
しかし、ヒトが進化してきた環境とは異なり、現代社会では飢えに困ることがめったに無いということを考えると、子どもの発達に多少余分なエネルギーが必要であっても、親の負担は増えないのかもしれません(しかし、進化はゆっくりとした速度で進むので、子どもを育てる苦労はしばらくは無くならないでしょう)。
参考文献:
Gurven, M., & Walker, R. (2006). Energetic demand of multiple dependents and the evolution of slow human growth. Proceedings. Biological sciences, 273(1588), 835–841. https://doi.org/10.1098/rspb.2005.3380