『劇団朱雀十九(二十四!)役者絵図』写楽の元絵まとめ
こんにちは!じごくでっす🔥
劇団朱雀2023年公演「祭宴」とのコラボレーション企画として、画家の柏原晋平さんが描かれた『劇団朱雀十九役者絵図』。
こちら、東洲斎写楽の役者絵を下敷きに制作されたものということで、原作厨の血が騒ぎまして、今回は元絵とその役どころについてまとめてゆきたいと思います💪
長くなる予感〜!
※ 当初の記事内では麻奈ちゃんの原案作品を写楽第一期作品から二人大首絵の「おなよ」と推定していましたが、正しくは第三期作品から「大和屋杜若」でした!2023.06.05 22:20ごろ修正し公開しています。
※【わぁぁあ!!!】2023.06.30、東京と沖縄の計6公演にゲスト出演された須賀健太さんと、福岡の計2公演にゲスト出演された喜屋武豊さんを柏原晋平さんが新たに描いた20&21枚目の役者絵が、須賀さんのTwitter上と、喜屋武さんのInstagram上で公開されました🙌 2023.07.01、追記しています。
※2023.07.01、東京で計2公演にゲスト出演された橘大五郎さんの役者絵も、大五郎さんのブログにて公開されました🎊 2023.07.01、追記しています。
※同じくゲスト出演された川原正嗣さんと柄本時生さんについて、柏原さんのinstagramにて2023.07.02、絵柄が公表されていましたので、2023.07.03、追記しています!
◎東洲斎写楽という浮世絵師
みなさん、写楽についてどのくらいご存知?まあ私もたいして知らないのだけれど。ちょこっとだけまとめておきますね。
⚪︎活動期間:寛政6(1794)年5月〜寛政7(1795)年1月の約10ヶ月間。出版時期と作品内容によって4️⃣つの期に分類される。
⚪︎現存作品数:144図(諸説あり)
⚪︎版元:全作品、蔦屋重三郎より出版🖨️
⚪︎各期の評価:
☝️第一期(28図)...役者の特徴を容赦なく写し取った大胆なデフォルメが特徴。また28図全てが上半身を描いた大首絵で、背景には黒雲母が施され豪奢なつくり。発表当時には役者本人やファンを含め、賛否両論を巻き起こしたと記録される。
✌️第二期(38図)...全身図や細判。これ以降デフォルメは影を潜め始める。
🤟第三期(58図)...勝川派を模倣した描写も見られ、凡作が増える。死絵や相撲絵を手掛けたのもこの時期。
🖖第四期(20図)...線の細さが目立ち、写楽らしい勢いを失った作品がほとんど。
特筆すべきは異様に短い活動期間と、その中で144図もの浮世絵を出版している点。しかも、デビューのタイミングから28図と多くの作品を一挙に出版し、背景に雲母を引くという手のかかる技法まで用いられてる、という謎の特別待遇。
写楽って本当に特別な絵師なんすよ。
普通売れるかどうかもわかんない(しかも万人受けする作風じゃない)新人のデビュー作で、全部フルカラー!それどころかキラッキラの特殊印刷かけます!しかも一気に28種出します!とかやらないでしょ?
浮世絵師ってほぼみんな、どこのなんという家に生まれて、生家は何屋さんで、どこ派の誰のもとで修行して、どういう経歴から絵師になって、って、明らかになってるんですね。
写楽に関しては、近年なんとなく明らかになっては来ているものの、活動期間前後の経歴もわからず、どこからやってきてどうして絵師になったのか?なぜ出版されたのか?結局その正体が誰なのか?まるっと不明。
そんなわけで、昔から「謎の絵師」と呼ばれ、色んな研究家たちを虜にしてきた存在が東洲斎写楽くんなわけでございます。
◎朱雀十九役者絵図の元絵一覧
☞第一期&第三期から選出
今回柏原さんが描かれた役者絵たち24図は、内19図が写楽の真髄とも言える第一期の作品、残りの5図が第三期の作品を元としています。(たぶん。ポージングと着物などからの推測です。)
こんな感じ👇
(敬称略です。画像と名前の並び順は対応しています。色のバランスとかで感覚的に並べたので、年齢や五十音順などにはなってないです、めちゃくちゃです、すみません。)
ずらずら〜っと並べてみました。
タイトルを見ていただいたらお分かりかと思うのですが、ご想像の通り、役者絵というものはただ絵柄が云々ではなくて「いつ」「どの演目」「どの役者」「なんの役」などの情報が付随します。
書き出してみると、「元絵ではこことここが夫婦ってこと?!?!」みたいなことが起きてるのがわかりますね。さあ面白くなってまいりました!!
さて、元絵を演目ごとに見ていきましょう☺️
◎演目ごとの元絵比較
ここからは演目ごとに元絵を見ていきます!が、歌舞伎の演目のあらすじを書くにあたり、登場人物の名前の横に、柏原さんが割り当てた騒ぎ屋メンバーの名前を()で書き込んでます。
演じたわけでもないのに。なんかもうしわけないね。ご了承くださいませ...。
あと、記載の内容は文献(2011年の東博写楽展図録が主)を参照しましたが、歌舞伎の演目内容やその他もろもろ、間違えてる記述などあったらお知らせください...!
(浮世絵の画像に関しては基本的に東博、ボストン、メトロポリタン、シカゴのいずれかから、摺や保存状態、色味などが見やすいものをお借りしました。本来はそれぞれに出典記載すべきです、申し訳ありません🙇)
⚫︎花菖蒲文禄曾我
[祐也、トミー、Yui、南、奈々、喜屋武、大五郎、時生]
取材された演目、「花菖蒲文禄曾我(はなあやめぶんろくそが)」は寛政6(1794)年5月に上演されました。
あらすじと簡単な相関図はこちら💁🏻♀️
はい。動画で太一さんにいじられてた、「祐也くんの腕が筋肉むきむき」だった件の理由がわかりましたね〜。ずいぶん乱暴者キャラなのでございました。一生懸命で憎めない祐也くんのキャラとはけっこう遠い印象の役どころを選んできたなあ、と面白がっていたんですが、絶対誰にも伝わらないので、伝えるべく今こうして書いている。伝われ〜〜〜〜ッッッッ!!!!!
あとトミーさんと奈々さんが夫婦役なのも見どころっすね。この夫婦は貫禄ある役どころな気がしているので、多分あらすじをお調べになったわけではなく、ここにこのおふたりを割り振った柏原さんすごいな?!と思っています。
興味深いのが、この演目の大首絵は田辺文蔵とか石井源蔵とかもかなりかっこいいんですよね。ほぼほぼ主役ですし。にもかかわらず、その辺りの中心人物は選ばれずに、周辺人物ばかりが取り上げられてる。
きっとなんらかの選定基準があって元絵をセレクトしたりメンバーを割り振ったりしたんだろうなと想像できて、柏原さんが何を基準に絵を選んでたのかめっちゃ聞いてみたいな、と思いましたッ。
って言ってたらさあ!喜屋武さんが!!源蔵としてやってきたよ!大五郎さんも!文蔵としてやってきたよ!!ときおくんも!袖助になったよ!!!!!ひゃっほう!
お察しの通り(?)、この絵はゆうやくんの絵と対になります🫰
主君の敵討に命かけて同行する家来というめちゃくちゃ誠実で肝の据わった、けど娘を売ることへの悔しさや申し訳なさも垣間見える、人間的な感情も強く持った役柄!私は大五郎さん初心者だけど、にあう〜ッ!と思った。ファンの方々の視点からの感想も聞きたい...あと純粋にめっちゃかっこよくないですか?この絵。いちばん好きかも。
⚫︎恋女房染分手綱
[陽之介、太一、創、礼佳、熊倉、儀輝、Mai、川原]
取材された演目、「恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)」も、同じく寛政6(1794)年5月に上演されました。
あらすじと簡単な相関図はこちら💁🏻♀️
近松の浄瑠璃をお家物風にアレンジした話らしい。
言いたいことがたくさんあるよ。まず1番有名な大谷鬼次の江戸兵衛、これを太一さんにしたのはわかります。まあそうなるでしょう、ビジュアルの強さ的にも、絵の有名さ的にもね。
で、です。江戸兵衛と対になる役どれですか。
奴一平なんだよなあ、どう考えてもサ
こうなるようにできてんすよ。この絵って。実は。
高さとかも揃ってるでしょ????江戸兵衛がニュッと突き出した手で金を奪い取ろうと、前のめりな姿勢になってるのに対して、一平が懐の金を守るように少し後退りしてんのよ。ナァ〜〜〜。面白くない?!
欲を言えば隣に飾って欲しかったね。でもそれって無理な話じゃないですか、だって太一さんの隣はゆっくんだものな〜!どう考えても!じゃあ一平をゆっくんにする?それはそれで、うーーーーん。みたいな、おれが勝手に難しい話がある。そもそもどっちもめちゃくちゃ主役級の役どころではないしなあ、みたいな。
でも見て、こうなった場合100%よしきんぐは負けるであろうから笑っちゃうな。おもろすぎる。この2人が一対一で戦うこと絶対ないもんな。
不義密通なお二人。はちゃめちゃ顔のいいお二人の枠、だと個人的には思っています。全員めちゃくちゃ整った顔してるけどな?!
この2人のわりふりもいいよね〜ッ
正義の裁きをくだすキャラに創さん、娘を守って死ぬ役に陽之介さん。こ〜れはいい偶然っすね。柏原さんの読み取りぢからが半端ないんだと思われます。わかりませんが。
まいちゃんの元絵は、一平の姉とも、定之進の妻とも言われていてはっきりしてないんだ〜〜〜
どっちにしたっておもしろい組み合わせですよね、、?よしきんぐの姉、もしくは陽之介さんの妻です。
やっちゃー!!!一番大好きな悪役にも朱雀の役者絵がついたよ!
正味ねえ!!!!!!!!このいわゆる悪役な鷲塚八平次、桃さんだと予想してたんですよ。いや、キャラ的にね?デザ的にね?桃さんご本人が素敵でお優しくてかっこいい方なのはもちろん知ってますよ??でもいわゆる朱雀のお芝居で「ありそう」な悪役じゃないですか。
それを...川原さんに...うぇぇ...そうか...なるほど、、、というわけで咀嚼に時間かかりました。
川原さんが今回の朱雀ゲストで演じられた、(遊侠三代)の川北父、人斬り松五郎...たしかに、たしかに、こういう目、口、表情をしていなさる。けど、ずっとずっと譲れないものや貫いてきたものの大きさが鷲塚とは比べ物にならなくて、ここをあえて対比させてくるの、エグいなあと思いました。
⚫︎敵討乗合話
[友貴、智之、アヤノ]
取材された演目、「敵討乗合話(かたきうちのりあいばなし)」こちらも、同じく寛政6(1794)年5月に上演されました。
あらすじと簡単な相関図はこちら💁🏻♀️
なんか2つの敵討ちの話を混交させてあるらしい。けど、写楽は片方の話しか描いてない模様。なのでそっちの話だけします。
こいつなんなん?????志賀大七ってなんなん?????????怖い。
めちゃくちゃすぎんか。居合わせた人殺してるけど...?どの図録とか書籍読んでも「居合わせた人を殺した」としか書いてなくて震えてる。
でもゆっくんのど腐れ悪役見たいですよね(急に)
今回のキービジュちょっと悪そうにも見える感じだったしね。
元絵可哀想すぎるよな。ちなみに志賀大七の絵は今にも造酒之進を殺そうとしてるところらしいので、これもこういうことです👇
うーん、これもちゃんと智ちゃんさんが負けるだろうからじわじわくるね。アヤノさん敵討ちしてくれるかしら。
智之さんの娘(次女)だと思うとちょこっとおもろい。ね。別に上に書いた以外で特筆することはないです。
あ、元絵は帯が超綺麗なのでどっかで実物見てください。
⚫︎男山御江戸盤石
[沙也香、Peco]
取材された演目は「男山御江戸盤石(おとこやまおえどのいしずえ)」。上演は寛政6(1794)年11月。写楽の作画期でいうと第3期にあたります。
この辺は資料が少なくてな〜あらすじ?は以下。
わかる?私はわかんなかった。わかんない人が書いてるのにわかる訳ないですよね、ごめんなさいね...なんか難しかったです...。
とりあえず沙也香ちゃんの元絵のてりはは粋でかっこよくて人情に厚そうな女性、ぺこちあの義家は主役級のかっこいい男ってことで、さすがの割り振りである。
⚫︎閏訥子名和歌誉
[桃太郎、須賀]
取材された演目は「閏訥子名和歌誉(うるおうとしのめいかのほまれ)」。上演は同じく寛政6(1794)年11月。あらすじ...といえるか...?
桃さん〜!!!意図がわかって良いですね
柏原さんもそれぞれの方のキャラクターとか、キービジュとかを意識して描いていらっしゃるんだろうな〜と1番楽しくなったのがこの絵でした!
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ここから余談٩( ᐖ )و
ちなみにnoteを読んでくださった方が惟喬親王の生い立ちについて調べて呟いておられたのが超刺さったので追記(2023.06.06)
芝居でどこまで描かれたのかわからないんだけど、前提として惟喬親王という人は、どうやらこういうややこしい家庭に生まれたお方らしい。
藤原氏の他氏排斥の初めとなった承和の変で立太子した文徳天皇の、第一皇子。
承和の変というのは嵯峨天皇の大家父長的な支配によって①→②→③→(4)と平和に皇位が継承されていたところに、嵯峨天皇(この時はすでに上皇)に気に入られた藤原良房が自分の甥(後の文徳天皇)を天皇にしたくて他の人を排除しちゃった、的なお話。
惟喬親王は第一皇子だけど、母の後ろ盾がなく、逆に惟仁親王は第四皇子だけど藤原良房の孫なので、一番皇位に近い。
文徳天皇は第四皇子の惟仁を皇太子としつつ、惟仁が成人するまでは第一皇子の惟喬に皇位を継がせようとするが、良房はそれを許さず...。良房は、兄弟間で皇位を譲り合う行為は承和の変の前と同じ状態であり、皇統が分裂することで再び同様の事件が起こるのを心配していたんだとか。
で、惟喬親王は結局14歳で現在の福岡県、大宰権帥になるらしいのだが、なんか、、、こう、様々な人たちの思惑が渦巻く中に生まれてしまって、ずっとそれに運命翻弄されてる感じ...こんなのお芝居にしたくなるよなぁそりゃあ!そして桃さんこの荒波感似合いそうだな!!!
長くなりましたが余談でした。他にも刺さりそうな情報あったら教えてください٩( ᐖ )و
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そんでこの孔雀三郎さんって人はなんなのかっていうと、解説読んでもよく分からんかった。同じく写楽が、テーマになったであろうシーンを別の細判二枚続にも描いてるんだけどもさ。
「関寺の場」というシーンらしい。そもそも、錦の御旗(にしきのみはた)という概念の説明からしなくちゃならんかも。Wikipediaによれば、
とのこと。
そんで、皇位継承争いをしてるわけだから、その錦の御旗を手に入れたいよ〜って話な模様です。右の紀の名とらは、浪人姿で描かれてますが、陽の旗を持つ六十六部を殺してそれを奪ってきたそうな。はい、六十六部ってなに???また知らん単語出てきた。
コトバンクによれば、
だそうです。
で、その六十六部を殺して、紀の名とらさんが錦の御旗のうち陽の方を持ってますと。対して、左の孔雀三郎なり平さんは、合羽を着て飛脚姿。こっちは月の旗を持ってるらしいです。その2人が相対する場面なんだってさ!このあと立廻りがあるんだってさ!なるほどね。わからん。
そしてちょっとツイートしたけど、この須賀くんの役者絵元になった写楽の役者絵に描かれてる人、三代目沢村宗十郎です。そう、トミーさんの絵の人と一緒。
⚫︎ 松貞婦女楠
[麻奈]
取材された演目は「松貞婦女楠(まつはみさおおんなくすのき)」。上演は同じく寛政6(1794)年11月。あら...すじ......。
演目自体がいくつかの物語から成るそうで、麻奈ちゃんが準えられてる「おとま」が出てくる話は以下。
どういう話...???どうやら4つの話からなる芝居の4つ目の物語のようで、登場人物たちがその前の段に出てきた人々とリンクしているらしい。歌舞伎って難し〜ね。
さて麻奈ちゃんの原案となった作品は「おとま」ちゃんとされていますが、この芝居の中で半四郎は4つの物語においていろんな役を演じていた模様です。だから誰なのかはっきり分かってないんだって!日々研究が進められているそうな。
なんの役にせよ、四代目岩井半四郎だよ!ということだけが確実みたい。この役者さんは丸顔で愛嬌あるひとだったんだって!麻奈ちゃんにめちゃくちゃぴったりじゃない?!なんだかとっても嬉しくなってきてしまった。
以上、『劇団朱雀十九役者絵』の元ネタを追いかけて参りました〜長くてつかれたね🤯
この絵たちは祭宴が終わったらどこへ行くのかしら。もうちょい重厚で個性のある額に入れてどこかに飾られておくれ、という気持ち。
私の祭宴は終わりましたが、これから会場に行かれる方、ぜひぜひ役者絵に近寄って、よく見て楽しんでね!それでは〜👋