![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172858902/rectangle_large_type_2_838d4976b4f6b8567567dca690a111d4.png?width=1200)
第3回:利用者の成長を支える小さな意思決定の力
はじめに:小さな選択が生む大きな変化
社会的養護の現場では、利用者が自分で選び、決める経験を持つことがとても大切です。しかし、虐待や否定的な経験を持つ利用者は「自分の選択には意味がない」「選び直すと怒られる」と感じていることがあります。
支援者が「どちらを選んでも大丈夫」「選び直しても問題ない」という保証を与えることで、利用者は少しずつ自己表現に前向きになり、自分の意思を尊重する力を育んでいきます。今回は、小さな意思決定を支援する意義とその方法について考えていきます。
小さな意思決定がもたらす3つの効果
自己肯定感の育成
支援者が「選んでくれてありがとう」「選び直してもそれでいいよ」と選択そのもの、あるいは選び直す姿勢も認めることで、利用者は「自分の選択には価値がある」と感じられるようになります。実例:Aさんの場合
Aさんは、支援者の質問に対して「なんでもいい」と答えることが習慣でした。支援者が「なんでもいいって思う日もあるよね。でも変えたくなったら教えてね」と伝え続けました。ある日、Aさんが「やっぱりジュースじゃなくてお茶がいい」と言ったとき、支援者は「それもいいね」と即座に受け入れました。この経験を通じて、Aさんは「変えても大丈夫なんだ」と安心し、自分の意見を言う場面が増えていきました。
自己表現の練習
小さな意思決定はもちろん、意思を変えることも自己表現のひとつです。支援者がそのまま受け止めることで、利用者は「どんな形でも自分を表現していい」と感じられるようになります。実例:Bさんの場合
Bさんは支援者から「今日はどっちの道を歩きたい?」と聞かれ、「こっち」と選びました。しかし、途中で「やっぱり向こうの道にする」と言いました。支援者が「うん、そっちもいいね」と受け止めると、Bさんは笑顔を見せました。このような体験がBさんに「気持ちを変えてもいい」という安心感を与えました。
自分の生活への関与感を育む
小さな意思決定を繰り返すことで、利用者は「自分もこの生活に関わっている」という感覚を持つようになります。実例:Cさんの場合
Cさんは「何を選んでも意味がない」と感じる利用者でした。支援者は「今日は何を食べるか一緒に決めようか」と誘い、最初は「なんでもいい」と言うだけでした。しかし支援者が「途中で変わってもいいよ」と伝えると、Cさんは「やっぱりカレーにしよう」と自分の選択に自信を持つようになりました。
支援者が意識すべきポイント
選択や選び直しを否定しない
「それもいいね」「変えても問題ないよ」と柔軟に受け止める姿勢が大切です。
選択肢をシンプルにする
初めは2〜3つの選択肢を提示することで、利用者が迷わずに選びやすくなります。
選択結果よりも選んだこと自体を認める
「その選択、いいね」と結果ではなく、選ぶ行為自体を評価する姿勢を持ちましょう。
実践事例から学ぶ支援のヒント
支援者が焦らず寄り添うこと
利用者が選ぶまで時間がかかっても、「ゆっくり考えていいよ」と伝え、支援者がその時間を見守ることが大切です。選択に意味を求めない
なぜその選択をしたのかを問い詰めず、「そうなんだ」と受け止めることで、利用者は自分の意思を大切にできます。変わる意思も受け入れること
支援者が「前に言ったことが変わっても全然大丈夫だよ」と伝えることで、利用者は安心して意思を示せるようになります。
まとめ:選ぶことも、変わることも未来を支える
利用者にとって、小さな意思決定や選び直す経験は自己表現の大切な一歩です。支援者がその選択や変化を否定せず受け止めることで、利用者は「自分の気持ちを大切にしていい」と感じられるようになります。
次回は、「トラウマインフォームドケア(TIC)の視点と日常支援」をテーマに、トラウマを抱える利用者への具体的な支援方法についてお話しします。
あなたへの質問
あなたの支援現場で、利用者の意思決定の変化をどう受け止めていますか?
次回もぜひご覧ください!