元空自が語る イスラエルの日本人退避について
イスラエルの日本人を自衛隊機が連れて帰るニュースが出ています。
今日は私が知っている限りの補足をします。
国外の日本人を帰国させるために自衛隊機が現地へ向かう任務は在外邦人輸送と呼ばれ、日本に限らず各国の国民は自国で連れて帰るのが基本です。
今回はヨルダン経由でイスラエルピックアップだと思いますが、現地の情勢が悪化している場合は着陸云々の前に飛行禁止の空域が設定されますので直接上空を飛ぶことはありません。
戦争状態になった場合は当事国の防空の目的上、飛来してくる一機一機の国籍や目的地等を識別している場合ではないので、このような空域を設定します。
イスラエルが現在設定しているかは定かではありませんが、ロシア・ウクライナの場合を見てみると、ウクライナの上空は飛べなくなっているため、欧州への国際便は現在も迂回していると思います。
このような緊張が高まっている地域に飛行するということはとてもリスクがあり、パイロットと各国の管制官の交信も一つ間違えると危険を招きかねないため細心の注意を払って任務飛行をしているのです。
今回、邦人輸送に用いられている機体はKC-767とC-2です。
C-2は国産の輸送機で、収容人数も多く人・物を運ぶための設計がされています。
一方でKC-767は旅客機のB-767を空中給油機に改修したものです。
空中給油機は上空で別の航空機に給油する機体ですが、中が広く海外訓練等の際に人員輸送に用いられます。
通常、機体内部に座席はありませんが、人員輸送の際には専用の座席が敷き詰められます。旅客機の座席のようなものではなく簡易的なもので、隣との距離も近く、より多くの人員を積むことが可能です。
イスラエルの事案で自衛隊機の運航がニュースになっていますが、整備能力がある飛行場に降りる場合を除き、展開先にOPMと呼ばれる運航に必要なメンテナンスをする整備班を連れて行きます。
また、展開した先に十分なセキュリティがない場合は、展開地警備要員を連れていきます。着陸して離陸するまでの間、展開地での切れ目ない警備を行います。
これらの機能はごく一部で、他にも多くの自衛隊が動いて航空機の運航を支えています。
自衛隊だけでなく、飛行計画の調整や領空通過許可の業務を持つ企業や機関の方々は、自衛隊のフライトがあると泊まり込みで調整をするようです。
スケジュール便のように定時のものではないため、夜中であろうと政府の決定に従い各種調整を早急に進めるみたいです。
これは関係企業の方の話ですが、ピークは連続で25時間も飛行調整をしたそうです。
「自衛隊が飛ぶ」の現地の空がどのようになっているか、どれくらいの人が動いているか、ということが分かるとニュースの見え方が変わってくるかもしれません。
では!