11/29 ニュースなスペイン語 Desmarcarse:一線を画す
Des-は「否定(negación)」とか「反意(sentido contrario)」を意味する接頭辞(prefijo)、marcarは「印を付ける、マークする」を意味する。
従って、例えば、サッカーなどで「相手のマークを外す」時に、この動詞を使ったり、その名詞形「el desmarque」という語を使ったりする。
ただ、今回の「desmarcarse」はそういったスポーツ用語ではない。
11月23日の続報である。
先の記事では「性的自由を保証する基本法(Ley Orgánica de garantía de la libertad sexual(以下、「基本法」))」を適用した裁判所が、これまでに出した判決を次々と見直し(revisar)、減刑(rebaja de condena)ドミノが起きている現状に対して、検察庁(Fiscalía general)が同法を適用するための基準(criterios)を一本化し、基本法の適用は一律自動的(automatismo)ではなく、個々の事件の特性などを考慮すべしとの見解を表明した、ということを紹介した。
小生は、こうした検察庁の通達によって、ある程度の減刑ラッシュは収まるのかなと思っていたのだが、そうでもなさそうだ。
28日付のスペイン国営放送(RTVE)のサイトには、次のような見出しがある:
11地域の裁判所が検察庁とは一線を画し、減刑する予定(Los tribunales de 11 provincias se desmarcan de la Fiscalía y rebajarán las penas(太字は筆者))
上のタイトルにse desmarcanという語が見える。つまり、検察庁からのマークを外し、独自路線で減刑を執行する裁判所が11の地域にあるということ。
現在分かっているだけでも、マドリード(Madrid)、ムルシア(Murcia)、カンタブリア(Cantabria)の3州、そして、アラゴン州のサラゴサ(Zaragoza)、アンダルシア州のマラガ(Málaga)、グラナダ(Granada)、コルドバ(Córdoba)ならびにアルメリア(Almería)、バスク州のビスカヤ(Vizcaya)、カスティージャ・イ・レオン州のバジャドリ(Valladolid)、バレンシア州のアリカンテ(Alicante)などの各地で減刑判決が出ようとしている。
一方、現段階では、ナバラ州(Navarra)、カナリア諸島州のラス・パルマス(Las Palmas)、ラ・リオハ州(La Rioja)では、検察庁の意向に沿う形で、減刑判決を出さない(apuestan por no hacerlo)ようだ。
日本で同じような事態が起これば、もう少し、足並みが揃うかなと思うのだが、これが、自治制(autonomía)を敷くスペインの怖いところ。
お上の言うことに裁判所は忖度しない。
判決は被告の人生を決める、大きな決定だから、法律と客観的事実によって決められなくてはならないというのが本来だろう。
しかし、上の状況を見ると、スペイン社会労働党(PSOE)政権の息のかかっていない、マドリード州をはじめ、ムルシア州、アンダルシア州、カスティージャ・イ・レオン州など、知事が国民党(PP)所属の地域で減刑判決を敢行しようとしている。
政治的な風向きによって、減刑の決定が左右されているように思えてしまう。
減刑の検討を始めた11の地域は、果たして、少数派なのか、それとも、これから巻き起こる減刑ドミノのほんの最初のコマなのか。
写真は最高裁判所(Tribunal Supremo)。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20221128/audiencia-madrid-desmarca-fiscalia-aplicara-penas-minimas-ley-solo-si-si/2410090.shtml