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第二の故郷

気がつくと、どの土地よりも長く住んでいるこの町で。

この土地に根差したひとたちから感じた、同世代の香り。
なんという懐かしさか。
ただそれだけで、幸せを感じてしまう。

ここで語ってきた、わたしのルーツが、このまったく縁すらなかった土地で、蘇る。

遠く離れた故郷は、すでに価値観の違いを感じる存在となり。
切なくても、寂しくても、もう諦めるしかないと知った。

そんなとき。
この土地に、私の生きる意味を見た。

かつて、気やすさと、孤独を感じつつも、自由だった、わたしが愛した、異国の地よ。
懐かしみ、帰りたいとまで思っていたはずだったが。

今はもう、その思いはない。
言葉が通じる、価値観が近い、同じ視点で話せる、そして、笑える、という至福は、やはり私には、変え難いものだと気づいた。

この国で、見知らぬ土地だったはずのこの土地で、私は生きていってもいいのかな。

そう思える土地になるまでは、私もそれ相応の苦労はあったはずだが、もうよく覚えてはいない。
忘れるのが、すっかり得意になってしまった。

がむしゃらにやるうちに、知らぬうちに、受け入れてもらっていたのだろうか。

なんと幸せなことか。

親すら、故郷すら、「ここではない」という思い。
一生を賭けたはずの相手すら、いまはただ虚しい。

そんな中での、地域のつながりを感じるこの日々よ。

わたしは、わたしでいていいかな。
わたしでいられるかな。

いくつになっても不完全な自分だけれど、その瞬間瞬間を、心から楽しめるように。

どうでもいい苦しさなんて、いらない。

こうやって、縁もゆかりもなかったひとたちと、ただ繋がっていって。

まさにそれこそが、わたしが求めていたものではないか。

いらない自分、苦しい自分は消えないけれど。

これでいいのかな。

これでいいと、そう思おうか。

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