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Photo by
take_kuroki
お似合いカップルの闇
その先輩は、明るくて、格好良くて、皆から人気があった。
だから、その先輩が、
「これ、やるよ」
と、お店の軒先の靴をヒョイと取って、後輩に渡したって聞いて、ビックリしたんだ。
ひとは、わからないな、って。
そんな人気者の先輩のことを大好きだった子がいた。
スタイルも良くて、可愛くて、みんなからも人気者。
誰もが「お似合いのカップル」だと、口をそろえて言った。
とても幸せそうなふたりだった。
なのに....
何年かして、その子を見た時、その子はビックリするくらいに痩せ細っていた。
その子は、先輩に見合う自分になりたくて、なりたくて、ご飯が喉を通らなくなっちゃったんだって。
目の前のその子は、顔も手も、げっそりとしていて、ほとんど骨と皮だけの見た目になっていた。
(前の方が、ずっとずっと、可愛かった)
私は、その言葉を飲み込んだ。
なんでこんなことになったんだろう?
なんでこんなことになったんだろう?
笑顔さえ、弱々しくて、でもきっと、この子なりに、精一杯生きているんだろうなと思うと。
私は、微笑んで、うなづくことしかできなかった。
微笑みながら、遥か遠くで、私はこんなことを考えていた。
(みんなそれぞれ、ひとに言えない心の闇がある)