【考察】衆議院の解散権。果たして国民のためになっているのだろうか?
6月15日、岸田首相は今国会での衆議院解散を否定した上で、16日に立憲民主党が提出した内閣不信任案を否決し、同日通常国会は事実上閉会しました。
ただそこに至るまでに、岸田首相は散々解散を視野に入れていると示唆する発言を繰り返し、衆議院の解散はあるものだと思った方も大勢いらっしゃったのではないでしょうか?(私もその1人です)。
自民党はおそらく、非常に高度な選挙対策を持っているのだと思います。綿密な状況分析を行い、今解散するのは有利ではないということとなり今回の国会での解散は止めたのでしょう。(下記の記事に自民党の選挙戦略が説明されています。※有料会員の方のみ読めます)。
マスコミでは今年秋の解散もかなりの確率で報道されています。
岸田首相には、このまま首相を続けるために、専権事項である解散のカードをいつ切るのか、検討に検討を重ねているのでしょう。
それを伺わせるのが、巨額の防衛費増額、そして目玉政策とされる異次元の少子化対策の金額です。
防衛費増額では2023年度から5年間で総額43兆円の増額となる予定です。それに対する財源確保の法案が、先日成立しましたが、具体的な増税の日程は2024年以降の適切な時期とされていました。しかし、自民党内では2025年以降とする案が有力となっているようです。
そして、異次元の少子化対策では、年3兆5000億もの増額が決まりました。その上岸田首相は、財源確保策として、医療保険料の上乗せを念頭に消費税などの増税は否定しました。安定財源は2028年度までに確保し、それまでの間は「こども特例公債」を発行するとしましたが、具体的な国民負担の規模は明らかにしませんでした。
ここから明らかになる姿勢は、防衛費の増額や少子化対策で今まで以上のバラマキをする、ただ財源に関して決めるのは先送りする。という姿勢です。
たしかに今国民負担を増すことになる増税や、社会保険料の増額は提示しにくいのでしょう。何せ慎重に、衆議院を解散する時期を探っているからです。
日本の与野党は、国民に根強くある負担増への忌避感から、選挙で負担増を訴えることは稀です。そのため、選挙を意識すると国民負担を増やす議論ができなくなってしまいます。
欧州各国のように、国民の間に健全財政を意識する共通認識があれば問題ありません。しかし、日本はそうではありません。それがゆえに、衆議院がいつでも解散できるとなると、与野党は常に選挙を意識しなければならなくなります。そうなると、本当に必要な、長い目で見ていかなければいけない政策も、選挙対策のためのバラマキに終始してしまうのではないかと考えています。
本当に国家のことを考えるのなら、衆議院の解散権にはある程度の制限が必要なのではないでしょうか?そして、私たちも、衆議院の解散は当たり前のことという認識の前に、果たしてこの状況は国家のためになるのだろうか?という疑問を持つことが必要なのではないかと思います。