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「事業者育成型公募」による地域プレイヤーの創出―町有空き家を誰が・どう活用する?【福井県池田町①】

人口減、高齢化率の上昇一。 それに伴う課題のひとつが「空き家」の増加。 空き家の情報収集・発信に加えて所有者と利活用希望者をつなぐ「空き家バンク」を展開している自治体も少なくありませんが、活用できていないという悩みも抱えています。 福井県の豪雪地帯にある池田町も、町が所有する古民家(空き家)の利活用に悩んでいました。 そこで実施したのが、町と地域金融機関、エンジョイワークスの協働による「事業者育成型公募(空き家再生プロデューサー育成プログラム)」。 活用の事業者と物件のマッチング事業です。

実践CASE:福井県池田町「事業者育成型公募による地域プレイヤーの創出」
<基礎データ>
人口/約2100人(2025年1月現在)、面積/194.65㎢
概要/福井県の南東部に位置し、県内17市町で最も人口が少なく、過疎地域・特別豪雪地域、振興山村、特定農山村などに指定されている条件不利地域。近年は急速な人口減少と高齢化が進行しており、特に若年層の流出が顕著で、「消滅の可能性がある自治体」と指摘されている。

<抱える課題>
|課題①|公的遊休不動産増加と人口減少
|課題②|地域事業者の掘り起こしとまちの賑わい




|課題①|
公的遊休不動産増加と人口減少

特別豪雪地域に指定されている福井県池田町。町のホームページに掲載されている「空き家」の中には、築100年超という古民家がいくつかあります。雪が深い場所とあって、雪の重みに耐えられるように太い柱や梁があり、とにかく建物の構造が頑丈。どの物件も土地・家屋の面積も広いのが特徴です。「住まい」として使うには、手を入れ直す必要もあり、利活用に手をあげる人がたくさん出てくる訳ではない、というのも町の悩みでした。

加えて、人口減少も顕著で、将来的な町の存続も危ぶまれるような状況で、「移住」の施策にも頭を悩ませていました。魅力的な空き家があったとしても、仕事がなければ「地元で働く」も難しいし、暮らしにつなげるイメージが湧きづらいという現実も。自然に囲まれた環境を活かしてPRするにも、空き家の情報をどのように発信すればいいのか?

遊休不動産のプレイヤーを育てながら公募する
「事業者育成型公募」というソリューション

町は「空き家バンク」を移住の受け皿にしたいけれど、待っていても移住者が来るわけではありません。そこで、2021年の夏に実施したのが、エンジョイワークスの「事業者育成型公募(空き家再生プロデューサー育成プログラム)」です。きっかけは、その数年前にエンジョイワークスが石川県で実施した、空き家再生プロデューサー育成プログラム。「町でも何かできないか学ぶ機会になれば」と、これに参加していたのが、池田町の職員(現・副町長の溝口淳さん)でした。ちょうど、エンジョイワークス自体も、自治体と金融機関と協業したモデル事業を考えていて、「成果につながる、地域にコミットするプログラムができないか」と溝口さんに相談。「町には寄贈された空き家があり、それも遊休不動産になっている。これを活用する(空き家再生の)プレイヤーを育てられることができれば」と意見が一致し、事業がスタートしました。

事業は、町所有の2件の古民家を対象に、空き家・遊休不動産を利活用して「持続可能な運営ができる事業者」を募集するもの。「地域活性化に資する事業」という部分がポイントで、地域住民の参加や関係人口と定住人口の増加を目指すプログラムです。空き家に移住する人を呼び込むための手段も必要ですが、定住を促すには、仕事や人を巻き込む場も必要です。産業が固定化している町に新たな風を吹き込ませる。その場所として空き家を活用した事業の創出に期待が集まったのです。

今回のプログラムで提供された町有所有の古民家2棟。このうち左の物件を事業化

公共の施設の利活用と言うと近年、「プロポーザル(企画競争入札)」という形式を導入する自治体が増えています。施設の規模にもよりますが、大きな企業や団体の参加を想定したものがほとんど。小さな町の「古民家再生」にこうした従来形式のプロポーザルは現実性がありません。それなら、地域でこれらの物件を使った事業を実践できる「プレイヤー」を創出して伴走する。それが「事業者育成」の「公募」なのです。

ただし、場所を提供すれば…事業が進むわけではありません。まず、町所有の2物件を対象に、事業をやってみたい人を募集し、町内外から8組が集まりました。参加者に向けては、事業コンセプトやストーリーの整理、企画立案や収支計画など、空き家再生のノウハウに関する講座を開催しました。「起業に向けて何から手をつけていいのかわからない」「起業を考えているけれど本当にこれでいいのか、もう一つ自信を持てない」――そんな悩みやプロセスに寄り添い、企画の実現性ブラッシュアップに併走するのが「事業者育成型公募」の特徴。自治体と私たち民間企業の二者だけではなく、地元の金融機関である福井銀行とのタッグもポイントで、事業の継続性なども専門家の目線でアドバイスしてもらいながら、サポートする体制を構築しました。


自治体:池田町、金融機関:福井銀行、プログラム運営:エンジョイワークスという構成

このプログラムでは、県内の事業者が選定されて実際に事業化しています。次の記事では、「事業者育成」のプロセスと空き家が何に再生されたのか…? 地域での事業創出について解説します。

REFERENCE【参考】

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