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怖くても、立ち向かう

PTA本部の役員をしたことがあります。
息子が小学校1年生のとき、いきなりでした。
しかも、ウチ 一人っ子なので、何もかも初めてです。
くじ引きで 選ばれてしまいました。
辞退しようかどうしようか迷いました。でも 経験するのは大事だし、
いつか どこかでやるのなら、今でも良いかなと引き受けました。
(その くじ引き自体にカラクリがあった事を 後で知りますが。)

大体、PTA本部の役員って言うのは、ベテラン揃いです。
そうでなくても 6年生の親が中心です。
そこへ 1年生の親が出てきた。
見た目は 老けてるけど 初顔やな、どんな奴やろ?
しかも 女やぞ。
そういう視線や雰囲気は 痛いほどビリビリ伝わってきます。
正直言って すごく怖いです。怖かったです。でも立ち向かうしかありません。
だって、PTAは本来、子供たちの学校生活が 安全で安心なものにするために
あるのですから。(最初は、マジでそう思ってました。)

PTA会長より威張ってたのは、庶務会長をしていた男性。
PTAという組織を影で回す、ラスボスです。
会社経営者の その男性は、最初から とてもとても威圧的でした。
定期的に行われる会合では、
それぞれの部会長が発言をしなくてはならない事は よくある事で
それぞれの部門だけで動くことも よくある事で
1年任期の部会長さんたちは 4月5月は引き継ぎしたばかりで 
わからない事が多いのです。が、
庶務部会というのは 2〜3年携わるらしいんです。
だから正直、裏の裏まで知っている。
知っているなら、サポートしてくれるだろうと 思ってたんです。
が、サポートなんて 何もしません。
会議中の部会長の報告も イライラしっぱなしで
「だから?!」 「それでぇ!?」と 威圧しっぱなし。

先日の どっかの誰かさんみたいじゃ ありません?
実際は知りませんけど。

でも ご自分の報告する時には その場の雰囲気を和ませているかのように
ご自身の自慢話と どれだけ根回しをしたかという話と、自分がこれだけ
頑張ったから、「会長!あんたもやりやすいだろうねぇ!」と恩を着せる。
「俺が これだけやったんだ。やってやったんだ! どうだ、すごいだろう。
 みんな、俺を褒めろ」
心の声が 大音響のスピーカーから聞こえて来るようです。

最初はビックリしました。
PTAという組織は 基本、地域に住む様々な職種の方がいると思ってました。
ところが、すごく狭い範囲の、利害関係の巣窟のような場所でした。
しかも田舎ですから、誰と誰が本家と新宅だとか 先祖代々 あそこには
頭が上がらないだとか それが300年経っても続いているような土地柄。
そんな所に 女の私が、しかも どこにも所属していない ただの女が
(つまり会社員でもない、自営業者でもない ただの主婦が)
そこにいるってだけで、庶務会長は 不機嫌極まりない。

事あるごとに敵意剥き出しで
「あんたみたいな素人には わからないだろうけど」
「あんたみたいに 非常識な奴には わからないだろうけどね」
と言われ続けました。
でも それは女性の部会長さん達は 多かれ少なかれ同じだったらしく
学校以外の場所で たまたま一緒になった部会長さんからお聞きしました。

最後の全体会議の時、
「質問は、一つにしてくれないかな。時間ばっかり掛かるから」
と言われました。女性の部会長は3人いて 私の発言の 直前でした。
今日が最後だから、ちゃんと言わなきゃ、言い返さなきゃ。

「かしこまりました。では、
 ご自身のご発言も この場の趣旨に合うものだけにして頂けませんか?」
 勇気を振り絞って言ってみました。

すると みるみる顔が赤くなり
「貴様! 貴様如きが なにを偉そうに言ってるんだ!!
 ここは どういう場所でどういう会議か 分かっているのか!」
と怒鳴られました。

私は 初めて睨み返しました。そして 何を言おうか 考えました。
でも 震えていました。
悔しさと怖さがあったからです。
でも涙だけは流さないように気をつけました。
前の会議で、別の女性が同じように怒鳴られ、思わず涙ぐんだ時に
「女は、すぐに泣く。泣けば誰かが味方してくれると思ってやがるんだ。」
と言われたのを覚えていたからです。

すると、ずっと黙っていたPTA会長が
「これも議事録に残るの? 大丈夫かなぁ、庶務会長? まだ下のお子さん、
 小さいんだよね? これから先も PTAに関わる可能性あるよ。良いの?」
と聞いてくれました。そして
「この会議は 庶務部会の方のセッティングや
様々な方への 根回しがないと成り立たないのは、承知しています。
ただ、この場に参加している人たちは 
少なくとも この学校に通う子供の親であり、地域の担い手であり、仲間です。
上下関係はありません。
だから そのような発言は 謹んで頂くのがよろしいかと思いますが、
いかがでしょうか?
そしてね、そこまで仰るなら 下のお子さんが6年生になった時には、
是非とも 彼に会長をやって頂く。
これは とても有意義な事だと思いましたので 
実は、あちこち根回ししておきました。
まぁ、僕には それくらいしか出来ないのですけども。
僕の貢献は、これくらいですかね。」
と 笑顔で発言しました。

会長も自営業の方なのですが、お子さんが沢山いるらしく
「一番下の子が6年生になったら お引き受けしようと思ってました」
と言っていました。

みんなが笑顔で 大きな拍手をしました。
庶務会長だけが青ざめていました。彼は 黙って座るしかありませんでした。

こういう場面を穏便に、でも 相手をギャフンと言わせるだけの手腕のある方は
経営者として さすがだなぁと思いました。
今でも街で 元会長さんとお会いすることがあります。
私の手術のことや様々なことを覚えていて下さって
「その後の経過は いかがです?」
と 声を掛けてくれます。
女性の元部会長さん同士も、様々な場所でお会いしますが 
苦労を共にした、という認識が 互いの絆を強めてくれていると感じます。

あの一年間、様々な経験をしました。
難しい課題に それぞれの立場で立ち向かい 
時には苦しい思いも、辛い思いもしながらでしたが、
勇気を振り絞って立ち向かったことは 
本当に良い経験でした。

あの時の庶務会長さんは、というと 
ご自身の行動がどれだけ相手を敵に回すかという視点が全く欠如されていた、
ということを やっと自覚されたようで 最近 色々な方に ご自分から
コンタクトを取っているらしいのですが、誰からも相手にされてません。
もちろん、私の所にもお見えになりましたが、このご時世、お会いすることも
憚られますので、謹んで遠慮しておきました。

怖くても 勇気を振り絞って立ち向かった自分に、自信を持とうと思います。

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四葉と話すネコ
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