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どうにか、こうにか

ちょっと早いお昼を食べ終わった時、ケイタイに電話が掛かってきた。
見たことの無い電話番号だった。
「はい」と出ると 義父母が通っている病院からだった。

嫌な予感。

今日は 義母がデイサービスに行ってる日だ。
先週の今日は、義父が警察署へ行っちゃった。
財布が無い。通帳が消えた。お金も消えた。
いえ、最初から、そんな多額のお金 ありませんってば。
警察官の皆さんが 機転を聴かせて お茶を淹れて 話を聞いてくれて
そのうち 何の相談に来たのかも よく分からなくなったらしくて
「明るいうちなら 運転できるって? 後ろから ついて行っても良い?」と
パトカーに後ろを任せて 自分の軽トラで無事に帰ってきたんだった。

今日は、何が 起こったのかな?

「あの、もう1年くらい前から お義父さん尿管カテーテル入れてるんです。」
「はい、お世話になってます。」
「今日、入れ替えする予定だったのですが、うまく入りませんで。」
「え? あ、あぁ、そうでしたか。」
「はい、それで 20キロ先に泌尿器科の専門医がありまして。」
「えぇ、存じております。」
「申し訳ありませんが、そちらに連れて行って頂けないでしょうか?」
「はい。それは大丈夫なんですが。義父は なんと言ってるんでしょうか?」
「国道を30分も運転するのは難しい。息子の嫁に連れてってくれと電話で
 頼んでくれないか、そう仰ってます。」
「そうでしたか。私は大丈夫なので、一旦、自宅で待って欲しいと伝えて
 ください。あ、紹介状を頂けたんですね。ありがとうございます。先方にも
 お電話で14時過ぎに行くと お伝え下さい。お手数かけますが。はい。
 よろしくお願いします。」

ふへ〜。
自分から、私を指名したってことは、先週のような せん妄状態じゃ無いのね?
と思いつつ、また 何を言い出すか分からない 季節の変わり目だし。
ため息が出てしまう。

出発まで 30分ある。
コーヒーを丁寧に淹れて、呼吸を整える。ちょっとだけ 瞑想する。
義父との辛い出来事を 一旦は 頭の中から追いやって、今 この瞬間に
必要なことを 真っ白い気持ちで受け止めよう。
と言う気持ちが 浮かんだところで、時間が来た。

嫁ぎ先だった家に向かう。
チャイムを鳴らして「こんにちは〜。」と声をかけた。
モソモソと出てきて 「やっぱ 今日は 行くの辞めるわ〜。」と言う。
玄関に出てきて早々、そりゃないわ〜。思わず ズッコケそうになる。
「じいちゃん、尿管 入れなくても オシッコでるの?」と聞くと
「うん、痛いけど、出る。」と言う。
「でもさ、痛いのはマズイし。もしも出てなくて 膀胱に溜まってて
 今夜 熱が出たり痛かったら 切ないよ。しかも 今日行った○○病院は
 夜中に、救急で運ばれても入れられないから、無理じゃん。
 明日はね Rもリハビリで 私は連れてけないの。今日だから大丈夫なの。
 用意するまで待ってるからさ、行こう。ね?」

この堂々巡りを繰り返しながら 説得するのに要した時間は 30分。
「いや、良いわ。」「ううん、行こう。」
私も半分 意地になってたか?
でも 最後は「分かった。用意するで。」と言ってくれた。

泌尿器科の専門医は、実父も通っている。でも 私は初めてだ。
ドキドキしながら病院に入る。新しくてキレイな病院。
紹介状を出して 住所など記入してたら すぐに呼ばれた。
私も一緒に 診察室に入る。
カーテンの向こうで エコーで膀胱の状態を調べてくれて
「やっぱり溜まってるよ。排出できてない。尿管、入れましょうね。」と
先生に言われてた。
「お嫁さんね、まずは 普通に入れてみるから、もし時間が掛かるようなら
 声かけますね〜。」

すぐに呼ばれたので、無理だったのか?と思ったら
「すぐに入りました。大丈夫ですので。ただ お薬を少し出しますね。」
と言われた。
間もなく身支度を整えて 義父が出てきた。
「すんなり入った。大丈夫だった。」拍子抜けしたような顔だった。
「良かったね。お薬が出るから、薬局に寄って帰ろうね。」というと
素直に「うん。」と言っている。
会計が済んで、処方箋を貰って、ドライブしながら帰ってきた。

ばあちゃんがデイサービスから戻る前に 帰って来れたね。
良かったね。
「ありがとう。ほんとに 助かったわ。」
「どう致しまして。また いつでも 電話して。送り迎えするからね。」

車を見送って 手を降ってくれる義父を バックミラーで確認しながら
家に戻りました。
ガンバッタ、私!! 

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四葉と話すネコ
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