#4 【こどもを勝ち負けの世界に置きたくないが、これでいいのか吹っ切れない】
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宮本さん、こんにちは。ジブン説明書(星読みの鑑定書)はどうでしたか?
「上岡さんありがとうございます。これは自分の話だ、と思いました」
よかったです。今日はモヤモヤしていることについて話したいということでしたね。
「私は塾を経営しているのですがそのことについて。以前は、いわゆる進学塾で講師をしていたのですが、経営陣の方針に納得がいなくて、個人塾を始めたんです。でもなぜか吹っ切れなくて。」
経営方針の、どのようなところに納得がいかなかったんですか。
「色々ありますが、一番は、結果が全て、というところですね。とにかく数字数字で。子どものためというベクトルは同じなのだけど、見えている景色が違うように感じました」
ありがとうございます。結果が全てという場所だと、具体的に何が傷付けられるような気持ちになりますか。
「やっぱり存在かな。思うように点が伸びない子や受験がうなくいかなかった子は存在が否定されたようになってしまう。だから子どもたちを追い込んだり結果を求めたりしない塾を自分で始めたんです」
始めてみてどうでしたか?
「みんなワイワイ楽しんで勉強をしていますよ。進学塾から私の塾に移ってきた子もいるんですが、保護者も『子どもがイキイキしている』と言っています」
宮本さんの、あたたかい塾の様子が目に浮かぶようですね。でも、ご自身としては、なんかモヤモヤすると?
「そうなんです。これでよかったのかなと」
進学塾というのはやはり、受験のためにある場所だから勝ち負けの世界になってきますよね。
ただ、宮本さんのホロスコープ(生まれた時の空の配置図)を見ると、結構、宮本さん自身は勝負事が好きなように感じたんですが?
「お恥ずかしいですが、そうかもしれないです」
いやいや、恥ずかしいことではないですよ!なんだか恥ずかしいことを指摘された気持ちになったんですね?
「そうなんですよね。うーん、矛盾しているかもしれませんが、勝ち負けのない世界なんて面白くないじゃないですか。サッカーの日本代表が負けたら『くそ!やめちまえ!』ぐらいの気持ちでテレビ見ています。」
そうですよね。だから『結果にはこだわりません』という勉強には、どこかつまらなさを感じていませんか?
「それはありますね」
宮本さんにも、負けたくないって気持ちありますよね?負けたくないって気持ちで努力して結果が出る楽しさも知っているはずです。勉強は苦しいことでもあるけど、結果がついてくることや、できることわかることが増えていくことはすごい喜びであるはずです。
一方で、受験というのは、誰かが受かる代わりに誰かが落ちるし、点数という数字は、残酷なほど人に順位をつけていく。
「そうなんです」
でもその苦しさを乗り越えて強くなっていく。本当はそうやって磨きあって強くなっていく子どもたちの成長も、見届けたいのではないですか?
「そのとおりですね」
だから「結果にこだわらなくていいんだよ」という方針では、実は力が思うように出せない。力を抑えてしまっている。それは宮本さんが本当に知っている勉強の楽しさの一部分でしかない。うまくいかない苦しさも含めて「楽しさ」ですよね。重要な部分を切り離してしまった気がして、モヤモヤしていたというのはないですか。
「なるほど」
宮本さんってすっごく愛の人なんですよ。数字だけの序列の世界で傷ついている子どもたちを、見ていられない、守ってあげなきゃって思ったんじゃないですか。
「そうですね。受験の結果よりも、その子たちの未来につながる必要な体験をして欲しいんです。何よりも心を大事にする塾でありたいですね。」
いいですね。宮本さんの本質の話になるんですが、わざわざ「結果にこだわりません」って説明しなくていいんじゃないですか?
「どういうことでしょうか。」
宮本さんがたとえ、「結果を出す」ことを目標にした塾をやったとしても、そこで子どもたちを否定することには、絶対にならないと思うからです。
宮本さんが宮本さんらしく勉強を教えるだけで「目標が達成したら嬉しい、できなかったら悔しい、だけど目標に向かって楽しかった」という体験することが可能だと思うんです。それぞれの子どもたちにとって必要な体験ができれば、それは幸せなことだと思いませんか。
「そうですね。何がなんでも点がとれればいい、志望校に落ちたらおしまい、っていうのは許せないけど。全員が自分の限界に挑めたらいいですね。」
そして、その体験を分かち合う、家族のような、チームのような塾が理想ではないですか?
「そうですそうです。みんなで分かち合いたい。」
宮本さんが宮本さんらしく塾を運営していけば自然と、そのような方向になっていくと思いますよ。自分がやりたいことをやるために、何かを否定する必要はないです。何かを否定して、それが間違っているという証明をしようとし始めると、少しずつ、本当にやりたいこととズレていきます。
「耳が痛いですね」
否定したくなるのは当然だったかもしれませんね。勝ち負けの世界で否定されたり、無闇に傷付けられたりするのを、みてきたんですもんね。これ以上誰かが傷つくのは嫌だから自分が守らないといけないって奮い立たせるようなこともあったかもしれない。
一方で、勝ちにこだわって自分が誰かを傷付けたこともあったかもしれない。
宮本さんは最初に、どういう塾をやりたいって言ったか覚えていますか?
「受験の結果よりも、その子たちの未来につながる必要な体験をして欲しい。何よりも心を大事にする塾でありたい・・・ですかね?」
どんな体験も、全部あっていいんです。自分の存在を認めてくれる宮本先生とだったら子どもたちも保護者も、チャレンジするのが怖くなくなるかもしれない。勝ち負けにこだわることを恥ずかしく思わないかもしれない。
それに、遠慮なくパワーを出し合って、ぶつかり合って、互いに磨きあっていくのって、すごく面白いじゃないですか。「本物」という感じで、輝いていて。
(続く)