実践!「経験学習モデル」 -現場で活かす”最強”の人材開発アプローチ
こんにちは、こがねんです。メガベンチャー人事で「組織開発」をしています。
先日よりこの「組織開発note」を始めました。開始にあたり、ツイッターで皆さんからテーマを募ったところ、多くの声をお寄せいただきました。
この記事を出したあとも追加オーダーをいただいており、全部にお応えできるのはいつになるだろう?というくらい商売繁盛です。(みなさま、ありがとうございます!笑)
さて、そんなわけで引き続き「組織開発」について元気にお伝えしていく本noteですが今日は「組織開発」と切っては切れない永遠のパートナー「人材開発」のお話です。
ご紹介したいのはこちら。ツイッターアカウントはToshiさんからのおハガキです。(2度目のおハガキ紹介です)
コルプの経験学習。
理論はわかるのですが、課題は複雑化しているので、概念化したものをすぐに実践できる場はないことのほうが多いと思います。新人は別ですが。どのように現場で活かすと良いでしょうか?
Toshiさん、ありがとうございます。
「コルブの経験学習」を「どのように現場で活かすとよいか」ということで「組織開発」を語るうえで避けて通れない「箱根の関所」が「組織の成功循環モデル」なら「人材開発」を語るうえで避けて通れない「箱根の関所」はこの「経験学習モデル」といっていい有名な理論的アプローチについてのお話です。
※ちなみに「組織の成功循環モデル」についてはこちらで解説
さて「経験学習モデル」のお話です。
講演会の冒頭などで「経験学習モデルを知ってますか」と訊くと2~3割の方が手を挙げることが多いですが、noteをお読みいただいてる皆さんもおそらく知らない方の方が多いと思うので、まずは「経験学習モデルってなにそれおいしいの?」というところから書いていきます。
個人的にこの理論は「”最強”の人材開発アプローチ」だと考えてまして、是非そのあたりも含めてお伝えできればと思います。
「経験学習モデル」とはなにか
「経験学習モデル」とは、アメリカの組織行動学者デービッド・コルブが提唱した理論で下図のようなサイクル図として表されます。
「経験」「内省」「概念化」「試行」の4つのステップをぐるぐると回す学習法で、何か具体的な経験をしたら、その経験を振り返る(内省)ことで、他の場面でも応用がきく教訓・持論に変えて(概念化)、次の挑戦で実際に試してみる(試行)ことで、さらによい経験に繋げていくというサイクルになってます。
これだけ聞くと「まあ、そうかもしれないな」とは思いつつ、「でも、わりと当たり前のことを言ってるだけよね」という気もします。ではなぜ、この理論が「最強の人材開発アプローチ」なのか。
その説明のために「7:2:1の法則」というアメリカのコンサルティング会社の調査結果についてもお話ししておく必要があります。
調査によると大人の学びは「7:2:1」という比率で、7割は「直接的な経験によるもの」、2割は「他者からのアドバイスやフィードバック」、1割は「研修や読書などからのインプット」という結果だったということです。
この話、感覚的にも納得できますよね。研修や読書など体系的な学びも大事ですし、他者からの言葉で気づくことも多いですが、なんといっても自分が直接経験したことを超える学びには敵いませんよね。
「経験学習モデル」は、その7割を占める「直接経験」を一度経験して終わりにせずに、ちゃんと「振り返り」をすることで二度味わい、自分なりの学びに変えていく必要性を説いているアプローチとなります。
仕事とは「直接的な経験」のオンパレードです。初めてのことに取り組むこと、成功すること、失敗すること、仲間と喜んだこと、一人で悔しい思いをしたこと、これすべて誰もが味わう「経験」です。
仕事とは「経験のかたまり」であり、人は他でもない「経験から最も学ぶ」ため、仕事で人を変化・成長させようと考えるならば「経験学習モデル」というアプローチがいかに「最強」かはおわかりいただけると思います。
現場の実践に必要な「2つのこと」
「経験学習モデル」が理論上優れたアプローチであることはある程度お伝えできたと思いますが、冒頭Toshiさんからのご質問のように同時に出てくるのが「じゃあ、どうやって現場の実践に落とし込むの」という疑問だと思います。
ある日突然「これから我が社は『経験学習モデル』でいくぞ!」と宣言しても、それが具体的な実践に結びつくわけではありません。現場の実践ってそんな甘いもんじゃありません。ではどうしたらいいのか。
ここで「経験学習モデル」を現場の実践に結びつけるために必要な「2つの要素」をお伝えしたいと思います。その1つ目は「経験資源」という考え方です。
まず「経験資源」を配分する
「経験資源」とは僕が勤める会社で使われている言葉で「すべての仕事は『作業』ではなく『経験という名の限られた資源」である」という考え方のことです。
例えば営業部門で競合調査をしようとなったときに、調査そのものや調査結果をまとめる仕事を「作業」と考えれば「手が空いている人にやってもらう」となると思います。
これを「経験資源」と考えたときには「このタイミングで、もっともこの調査活動から学びを得てほしい人は誰か」という視点で、この「誰にでも与えられるわけではない、経験という名の限りある資源である仕事」を「誰に配分するか」という考えで任せることになります。
もしかしたら入ってきたばかりの新人が適任かも知れませんし、逆に仕事に慣れ過ぎて競合視点が足りなくなったベテランにお願いする方が良いのかもしれません。その時の状況によって「経験資源の配分方法」の最適は変わってきます。
これはかなりシンプルな仕事の例でしたが「新規プロジェクトのプロジェクトマネジメント」を誰に任せるか、「この役職ポストを誰に任せるか」といった場合も「ただお願いする」という考えではなく「この経験資源を誰に配分すべきか」という視点で考えることが重要になります。
「経験学習モデル」を現場で実践するうえでまずベースとして必要なのが、この「経験資源を配分する」という考え方が組織の中で機能していることが重要になってきます。
では「経験資源を配分する」という考え方があれば「経験学習モデル」は回るのかといえば、まだ十分ではありません。ここで「経験学習」を促進するために必要なもう1つの要素「1on1」についてのお話をしたいと思います。
次に「1on1」でサポートする
「1on1」とは、ヤフーをはじめ各社で行われるようになり今や一大ムーブメントになっている「1on1ミーティング(略して1on1)」のことです。
「ヤフーの1on1 -部下を成長させるコミュニケーションの技法」によれば「1on1」とは「上司と部下で定期的に行う対話の場」であり、週1回程度・30分程度行うのが効果的とされています。
「1on1」は「部下のための時間」であり「質問」「傾聴」「承認」などを通じて「部下の自律的な成長」を促進することとされています。
「1on1」はよく「コーチング」と同一視されますが、より正しくは「コーチングを中心に、ティーチングやフィードバックもまじえながらマネジメント上必要なコミュニケーションをする場」という理解になります。
※「ティーチング」「コーチング」「フィードバック」の違い
では、なぜ「1on1」が「経験学習」にとって重要な要素になるのか。
それは「経験学習」のサイクルを回すうえで「経験資源の配分」の次に重要なのが「内省の支援」にあるからです。
「内省(振り返り)」は一人で自問自答することで行うことも可能です。
仕事の帰り道に「今日の仕事はどうだったかな」「うまくいったかな、いかなかったかな」「その理由は何かな」と考えることも立派な「内省」です。
でも人と対話し、人から問われることで「内省(振り返り)」はさらに深まり、そこからの気づきも圧倒的に増えます。
「経験学習」は仕事が「経験資源」として配分されることだけでなく、「1on1」のように「経験を振り返る対話の場」がセットされていることで「経験」「内省」「概念化」「試行」のサイクルが回り出す、ということです。
ここまでを図解でふりかえると
文字だけだとわかりづらいので、図解でまとめるとこんな感じになります。
まずは「経験学習モデル」のサイクル図を用意します。さきほどお見せしたものと同じ絵ですね。
ここに上からマリコ・・・ではなく上から「経験資源」をかぶせます。こんな感じですね。
「経験資源」が配分されることで「経験学習」のサイクルが回り始めます。それを下支えするように「1on1」をもってきます。よっこらっしょっと。
こんな感じですね。
白黒だと味気ないので少し色味も足してみると・・・
こんな感じに・・・って、おお!これはまるで!「ハンバーガー」じゃないですか!!
これは美味しそうなハンバーガーができました。しかも割と肉厚の具が入っていて、これはそんじょそこらのハンバーガーじゃない!!「青山あたりのオシャレグルメバーガー」ですよコレは!!!
これはあれですね。食べる時はこんな感じでギュッと押しつぶすようにもって食べないといけませんね。
ギューッとね。
「経験資源」と「1on1」でギューッとはさみこむことで「経験学習」から美味しい学びがしみだしてくる。
そんな絵にも見えますね。見えますね?見えますよね?そうですか。見えてよかったです。今日も皆さんの共感あってのコンテンツです。ありがとうございますありがとうございます。
さいごに
ハンバーガーの絵あたりからいつもの悪ノリが始まってしまいましたが、今日も書いてる本人は大真面目です。
今日お伝えしたかったことは「経験学習モデル」は本当に優れた「人材開発アプローチ」であるということ。
そして、それ以上に「理論は実践してこそ意味がある」ということ。そのためには「理論を理論のままにせず、実践的なアプローチで挟み込んで徹底的に実務に組み込むこと」。つまり「ハンバーガー」だということ。(結局ハンバーガーの話かい)
僕は「仕事の報酬は仕事」という言葉が好きですが、「仕事=経験資源」ととらえるとそれもうなづける話だと思いませんか。
そして近年よく言われるように、人は生涯学び続けるし、学生でなくなっても、何歳になっても、「経験という学校」からの卒業はないんだなと考えれば「経験学習モデル」を意識しないで生きていくのはとてももったいないことだと思っています。
「経験学習こそ”最強”の人材開発アプローチ」
という今日のテーマに込めたかったのはそんな思いでした。
ふう、そんなことよりも「ハンバーガー」が食べたくなってきちゃいましたね。笑
それでは、また。