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自分の人生なのだから、欲を言ってもいいじゃない。

「画面に向かわない時間を、増やしたいんだよね」

すこし前の夏。
砂浜に腰をおろし、隣で海を眺める友達に向けて、そうつぶやいた。

あの夏のわたしは一日中画面に向かってばかりで、とても疲れていた。

数年前から始めたWeb編集者としての仕事。次々と上がってくるチェックすべき原稿。一日数時間にも及ぶオンライン会議の嵐。即レスが求められている気がして、画面から離れられなくなった心。

やりがいはあったし、もちろん楽しい部分もたくさんあった。だけれど画面から顔を上げた瞬間に気づく、ひどい頭痛。夜も潰してしまうほどの疲労感。鏡にうつる、どんよりと疲れた顔の自分。

ひたすら画面の前に張り付く日々のなかで悟った。わたしの脳の仕様は、長時間画面を見ていられるものではないのだ、と。

* *

海を眺めていた友達が、すこし首をかしげながらこちらを見る。

「画面を見ない仕事って、例えばどういうものですか?」

そうだなあ、例えば。

じぶんジカン』で言えば、ノートの製本などの手作業はまさにそれだけれど、大雑把なわたしはあまり得意ではないな。かといって接客は、たぶんもっと向いてない。

すこし思案して、ひとつの可能性にたどり着く。
小さく息を吸って、ぼそりと言葉にする。

「例えば、考える仕事を増やす、とかね」

考える。つまり企画をする。
そしてそれを、カタチにする。

自分はそれがもっとも好きなのだということには、だいぶ前から気づいていた、かもしれない。

ノートを開いて、ペンを握る時間が好きだ。思い浮かんだ言葉たちをつらつらと書き綴り、そうして散らかした言葉たちが集まって、企画の種となるその一連の流れが、わたしにとってはとても心地よいのだ。

だから、その時間を、増やしていきたい。

それから夏が来るたびに、わたしはすこしずつ、画面に向かう仕事を減らしていった。

そして、自分の思考にどっぷりと浸る時間を増やしていった。

カフェで、家で、散歩をしながら、海を眺めながら、考える。

そうしてわたしが考えることが、ちゃんと仕事になるように。ただの趣味で終わらないように。

実は『じぶんジカン相談室』を始めたのも、わたしの脳みそが誰かの役に立ったら、と思ったのがきっかけ。相談室でいただいた「考えるテーマ」を、わたしは1週間ほど頭のなかに置きながら日々を過ごし、考え、ぐるぐると思いを巡らせ、それらを言葉にして、お返しする。その過程で画面を見て作業するのはほんの一瞬で、言わば相談室はわたしの「考える時間」を誰かに活用してもらえたら、というサービスだ。

そして今。
わたしの1日は、画面に向かう時間60%と、考える時間40%ぐらいで構成されている。

最初に「画面に向かう時間を減らしたい」と願ったときは、画面に向かう時間が90%ぐらいだったと考えると、その割合はぐーんと減った。一番大きな要因は、クライアントワークを辞めたこと。すべての責任を自分で負うかわりに、仕事の割合をコントロールできる自由を手に入れたこと。

いま、考える時間のなかでは、新しい商品の企画や、経営に関する判断や勉強、文章やSNSのコンテンツを考えることが含まれる。そして商品やコンテンツをカタチにする(つまりデザインや執筆をする)のが、画面に向かう時間だ。

一日中画面と向き合っていた頃とは違って、肩こりや頭痛に悩まされることはなくなった。鏡にうつるわたしも、少し生き生きしているように見える。

しかし、わたしはまだ満足してない。

欲を言えば、もっともっと「考える時間」を増やしたいのだ。

自分の人生なのだから欲を言って良いと思ってるし、実現する人生のほうが絶対に楽しい。どうしたら自分の希望を叶えてあげられるかは、これからまだまだ試行錯誤。


おわり
***

運営しているブランド「じぶんジカン」では、自分と向きあう時間をつくるノートを販売しています。毎週月曜&金曜が発送日です。

エッセイ集も、ぜひ。


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じぶんジカン松岡
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