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肌感覚の錆びをとる

最近、毎日のように物件サイトを見ている。

目的は、自分たちの場所をもつため。じぶんジカンの工房兼お店にできる場所を探してる。

そのなかで、ちょっと驚いていることがある。

それは、以前に比べて段違いに「心が動く物件」を見つけられるようになったこと。

毎週のように「こんな物件があったよ」「ここをこんなふうに使いたいよねえ」と盛り上がってしまうほど、すてきな物件が次から次へと見つかるのだ。

結婚してから8年間で4回も引っ越しているほどの引っ越し好き(?)なわたし達なので、もともと物件を探す経験はわりと多い方だと思う。

でもこれまでの引っ越しは、「仕方なく、ここで」と決めるようなケースが多かった。転職に伴って急いでいて、とかそんな理由で。

特に希望したわけでもない街で、家賃や通勤距離などの現実をものさしにして「まあこここなら、良いか」と決めてきたと思う。

でも前回、つまり今暮らしている神奈川県・辻堂への引っ越しからは、これまでの選び方からガラリと変わった。

ここ辻堂に住み始めたのは、2020年のおわり頃。

それまでは「夫の職場に近い場所へ」と、8ヶ月ほど都内に住んでいたのだけれど、どうにもわたしが息苦しくなってしまい、みるみる元気がなくなってしまったので、「このままじゃいけない」とずっと住んでみたかった海街・辻堂へ引っ越すことにした。

それで最初に内見した家に惚れ込んでしまい、他と比べることなく即決したのが、いまの家。

海に近くて、風通しの良い場所だ。

「心が死んでしまう前に」という、ある種の必要性に迫られた引っ越しではあったものの、ここ辻堂に決めたときは、これまでの引っ越しとは心持ちが大きく違ったと思う。

通勤距離なんてこれっぽっちも考えず(それゆえこのあと数ヶ月間、夫は1時間半ほどかけて通勤した)、それまで地味に気にしていた実家とのアクセスも考えなかった(片親なので何かあったらすぐ行けるようにと思っていたのと、子どもを産むかもしれないから近い方が……とかごちゃごちゃ考えていた)。

これまでと同じものさしだったのは、家賃だけかな。それ以外は、ぜんぶ自分の「肌の感覚」を信じた。

ここで生きていきたいか。心地よいと感じるか。ぐっと惹かれる何かがあるか。気持ちよく、息ができるか。

この「肌の感覚」というのが、わたしはとても大事なことだと、ようやくわかった。

これまで現実的なものさしばかりを用いて、本当は自分にとって大切なことまでも「仕方ない」と飲み込んでた。

そんなことを繰り返すうちに、バッキバキに錆びていたのだ。わたしの、肌感覚。

あのとき、東京での暮らしで心が死にそうになって初めて、わたしは「錆びてしまった」と気づいたのだと思う。「このままではまずい」と思った。それでどうにか錆びついた肌をさすって、なけなしの感覚をフル稼働させて感じ取った「心地よさ」を基準に選んだのが、いまのこの暮らしだった。

この海街に来てから2年間。

錆び固まった感覚を、すこしずつ動かして、どうにかメンテナンスしてきた。

その甲斐あって今や、冒頭の通り、物件サイトを覗くと「心が動く物件」を次々に見つけられるようになった。

たくさんある中から、自分の肌に合うものを掬い出せること。

それは感覚が錆びていないからこそ、できることなのかもしれない。

現状、まだリサーチと妄想を繰り返すばかりで、何か動き始めたわけではないのだけれど。

いまは、自分の感覚を動かして、いろんな可能性の引き出しをあけているところ。


おわり


じぶんジカン」では、自分と向きあう時間をつくるノートをお届けしています。

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じぶんジカン松岡
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