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泣けない子ども

私が六歳で父は単身赴任をした。

愛情は感じなかったけれど、
唯一私を怒鳴らず怒らなかった父を
私は大好きだった。

2ヶ月に1度、帰ってくるか帰ってこないかの父。
帰ってきても2日といるくらいだった。

父が帰ると、車を見送って、
バレないようにこたつの中で、泣いた。
私もまた、居間にしかいる場所がなかった。
ひどく大きくて広い家でどこにだって
隠れることは出来たのに
幼い私には知恵がなかった。
もっとも大人の家族たちも、
皆居間にしかいなかった。

家族の前で悲しくて泣くなど私はできなかった。
きっと泣いたら叱られたのだと思う。
叱られて泣いて、それを叱られて。

父親が不在の寂しさも
父が行ってしまう寂しさも
誰も慰めてくれたり、優しく声をかけてくれたり、
気持ちを聞いてくれたり、抱き締めてくれたりなんて
してくれなかった。

あの頃、『大丈夫?』『悲しいね』
『こっち来てたくさん泣いていいのよ』
『お父さん帰ってしまって寂しいね』と
誰か寄り添ってくれたら、
私の気持ちを認めてくれたら、
私は今どんなにか楽だっただろうか。

私の家族は、
見ない振りをしたのか、
受け止められる度量がなかったのか、
気づけなかったのか、
1度もそうしてくれることはなかった。

私への愛がなく、
私への関心がなかった。
各々が自分自身のことだけしか出来ない人たちだった。

間違いなく、
母は私への愛情は全くなく、
私の気持ちを推し量り楽にしてくれる度量は皆無で
親としての能力の低い人だった。

私は子どもだった。
まだ小さく自分の気持ちを言葉にしたり処理したりする力のない、誰かの助けが必要な幼い子どもだった。

私は人前で泣けない子どもだった。


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ジョバンニ~毒親サバイバー
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