再び「教員の働き方改革」 ~ 大阪府の取組みを例に ~
おはようございます!
毎週ご高覧いただきありがとうございます!
再び、「教員の働き方改革」についてです
問題の抜本的改善は、
「教職員不足」の改善=「教職員定数」の抜本的改善=「教員の働き方改革」の劇的な改善
しかありません
※ 教員だけが不足しているわけではありません。学校事務職員・実習助手(大阪府では実習教員)等、そして教育委員会(教育庁)指導主事の不足も喫緊の課題なのです
高校での週当たりの持ち授業時数は、担任16時間(+LHR+総合的な探究の時間)、非担任18時間が、私の37年間(うち、校長6年・教頭5年)の教員生活の常識です
加配定数のある総合学科や専門課程、普通科専門コースを有する学校では、若干持ち授業時数は減じられますが、その分、「学校設定科目」等の開講科目が多くなるので、4色14時間、5色10時間等が普通にあり得ます
「色」は、私たち教員の jargonで、持ち教科数のことです。「色」が多ければ、それだけ教材研究の時間が増えるので授業時数が少なくても負担は過重です
私は、首席(主幹教諭)最後の年には、学校設定科目「世界の地理Ⅰ」(2単位)、「世界の地理Ⅱ」(2単位)、「地理B増単位」(2単位)、「福祉基礎」(2単位)と、4色8時間でした
首席(主幹教諭)は8時間の非常勤講師時数が付くので、持ち授業は8~10時間が一般的です
話を戻すと、教職員定数が増えれば、授業時数や校務分掌校務が減じられますので、教職員にゆとりができ、生徒と向き合える時間も確保され、定時退勤できる教職員も増加することが容易に想像できます
「働き方改革」が叫ばれるなか、大阪府においても、令和5年4月、すべての学校で導入すべきものとして「学校における働き方改革の取組10項目を策定し、全庁を挙げて課題の解決に取組んでいます
大阪府教育庁は、校長・准校長へのヒアリング、先生方へのアンケート結果、在校等時間の状況等にエビデンスを求め、2024(R6)年2月に「第2次大阪府教育振興基本計画(前期事業計画)にもとづく府立学校における働き方改革の取組について」を取りまとめました
府立学校教員の勤務状況に関するアンケート結果について(令和5年10月12日)
【参考資料】在校等時間の状況
「働き方改革を進めるにあたっては、なぜ忙しいのか、どの業務にどれくらいの時間がかかっているのかを客観的に把握することが重要である。
これまで、業務遂行にあたって効率化を図ることができそうな分野を洗い出すことや国や他府県の状況を参考にすることで取組を進めてきた。
今後は、これに加え、在校等時間等のデータを活用して統計分析を行い、客観的なエビデンスにもとづいて取組を検討していく。また、より精緻な分析を行うため、大阪公立大学と統計分野での連携を進めていく。」
とし、法改正(「公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」)や財源の確保等、国の「本気の教員の働き方改革改善」施策を待たずして、地方自治体や教職員の努力、生徒・保護者の理解に助けられながらの問題改善に歩みだす決意をしました
今回は、本論の趣旨に沿った項目を取りあげるとともに、私見を述べていきます
長時間勤務の要因に関する分析は3点にわたり整理されています
(1)学校の在校等時間等に関する分析
【分析結果と仮説】
「週休日等の部活動」は勤務が長時間化する要因のひとつであると考えられる。
(2)個人の在校等時間等に関する分析
【分析結果】
「部活動」は勤務が長時間化する要因となっている。
「授業準備・評価」は勤務が長時間化する要因となっている可能性がある。
(3)業務の縮減ニーズ
‣校長・准校長は調査・通知の縮減ニーズが最も大きい。
‣教員は会議の縮減ニーズが最も大きい。また、学校行事についても半数以上が縮減が必要と回答している。
分析結果は、
■ 多忙(ママ;「多用」石田修正)の要因を、「週休日等の部活動」、「調査・通知への対応」や「会議」としています
今後の働き方改革の取組について、
既定の取組
‣専門人材や教員業務支援員等の外部人材の活用やICTを活用した校務運営の効率化など、令和5年度までに開始した取組の着実な実施に加え、下記①から③の取組を実施する。
①入学者選抜におけるオンライン出願及びデジタル採点(令和6年度)
②校務用システムのクラウド化(令和6年度)及び教職員端末機の無線・軽量化(令和6-令和8年度予定)
③部活動大阪モデルの本格実施(令和6-令和7年度)
に加えて、新たな取組みとして
‣分析結果及び学校現場の業務縮減ニーズを踏まえ、下記(1)から(9)の取組を新たに実施する。
なお、教育庁で取り組むものは、教育庁で方針等決定の上、全府立学校を対象に実施する。
としました
(1)部活動方針の遵守(「部活動働き方改革マニュアル」等の推進)
‣統計分析の結果、特に週休日等の部活動が長時間勤務の要因となっていること、また、多くの部活動で部活動方針が遵守されていないことが分かった。
働き方改革推進のための体制整備は、
‣指導者の配置による働き方改革の推進
※指導者の確保及び学校への配置支援、学校における効果的な活用例などの提示
‣「部活動大阪モデル」の一層の推進
※合同部活動による教員の負担軽減
が挙げられています
「部活動大阪モデル」について
「部活動⼤阪モデル」は、先生方の「働き方改革」の文脈で、知事肝いり施策として導入されましたが、知事の発言を聞いていると「少子化や顧問不在により希望する部活動が在籍高校にない生徒たちの自己実現を、近隣校とのペアリングによる合同部活により保障する」ことだと個人的には読み取れました
生徒たちのアンケート調査をみると、83%の生徒が肯定的評価をしています
この結果より、知事の思いに多くの生徒たちが救われていることがわかります
本流の先生方の「働き方改革」で言うと、
相手校での合同部活の顧問付添は「必ず行っている」66%
付き添う理由は「怪我や事故の対応で相手校に負担をかけたくない」61%、生徒指導面の心配15%
と、顧問の先生方の負担は改善されていないようです
週休日に、部活動指導員や外部指導者、合同練習で相手校の顧問に練習や公式戦等に付き添ってもらう
週休日で部活殿付き添いがないので、家族と遊びに出かける、たまの一人の時間をゆっくり楽しむ、ことが心ゆくまで安心してできるのか!
私の長年部活動主顧問をしていた経験では「NO」です
練習中や公式戦参加中の生徒に、熱中症、大きな怪我や頚より上の身体への事故が生起した場合、保護者への緊急連絡、管理職への報告、担任・学年主任の先生への連絡、病院受診の付添等々に大きな問題が生じます
顧問は練習や公式戦が終わるまで心配でなりません
他校で、自校の生徒たちが活動している間は、身体的にはOFFかもしれませんが、危機管理対応を常に心のなかにもっておく心理的負担
これを軽視しては何が働き方改革だ、と思わざるを得ません
「多くの部活動で部活動方針が遵守されていない」の評価は慎重に行う必要があります
スポーツ庁が平成30年3月に策定・公表した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」は、学校種や設置者にかかわらず該当するものであり、公立、国立、私立全てが対象です
私学も含めて「遵守」されるように文部科学省・スポーツ庁が「本気で」取組むべきです
部活動の問題については、私も20年以上女子硬式テニス部顧問をしていましたので言いたいことが山ほどあります
文字数が3,300字を超えたので、今回はここまでとして、来週は、「第2次大阪府教育振興基本計画(前期事業計画)にもとづく府立学校における働き方改革の取組について」「新たな取組み」の続きについて論じていきます
何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします