講義 オートシャンプーに見る歴史
あの時の男の子は、実はみなしごだったんだ。ボールも周りの子供たちに言われて無理やり取りに行かされていたに過ぎなかったと、後にルポルタージュで語っていた。
ゲルトの病室に孤児院のシスターときた男の子は、とても申しわけなさそうな、悲しい顔をしていた。
それを見たゲルトは、あえて明るく振る舞ったようだよ。
信じられるかい、自分の夢はついえ、五体満足に生きることもできなくなった未成年の青年が、そのきっかけを作った少年に笑顔でこう言ったんだ。
好きな遊びはなんだい?
男の子は、フッスバル、とは答えなかった。その時彼は、おままごとだよ、と笑顔で答えたんだ。
それから二人は友達になり、男の子は一生ゲルトの補佐をした。
彼の名は、ミラセン・ワーゲル。
ピクシーカンパニーの初代の総務マネージャーを務めた男だ。彼がいなければ健全な企業運営はあり得なかったと、後にゲルトの子、ピクシーカンパニー二代目CEOは語っている。