講義 思ったように生きる
さて、そろそろ私の講義も終わりを迎えようとしている。
諸君、君たちはこれからどう生きるね。この講義を受講したということは、やはり企業に勤めるかね。
勇気ある学生がいれば、この場で意気込みを聞かせてくれないか。
講堂にざわめきが起こる。
そうか、そんな意気込みのある者はいないか、
言葉を続けようとした時、一人の学生が立ち上がった。
私は、先生からの教えを礎に社会のお役に立てるような企業マンになろうと考えております。
あまりに真面目な発言に、講堂中に笑いが起こる。
おいおい、笑ってはいかんぞ。私の講義で諸君は何を学んだのかね。
思い、熱意、ちょっとしたきっかけから大きな事業は起こることがあるのだ。
ゲルトも良く言っていたそうだぞ。
大事というものは、いつも小事の積み重ねで起こるものだ。良くも悪くもね。
とな。
さてさて、私からも小事の積み重ねを諸君に報告しようと思う。
サヤくん、ここへ。
教授が言うと、ひときわ美しい女学生がすっくと立ち壇上に上がり、教授の横に立った。
諸君、私はこのサヤくんと一緒になろうと思う。
そう言うと講堂中にどよめきと冷やかしと賛辞の声が入り混じった。
これから私達には様々な困難が訪れることだろう。教職も解かれ、世間からは冷たい目で見られるであろう。
でもな、私は思ったように生きたいのだよ。生きている内にな。
さらばだ諸君。
初老の男性とうら若き女学生は、講堂を後にした。