色々な人々

マルは冷たい空気の中をただ歩いていた。
星は音も発せず、ただその身を震わせていた。月明かりに満たされた青い夜空はどこまでも深く、果てがあるようだったし、ないようでもあった。
着込んだコーデュロイの外套はしっかりとした重みがあったが、その分マルを護っているようにも思える。

歩いていくと、水銀燈に照らされた場所に行き着いた。
その仄白い灯りの中に立ったマルは、そのような灯りがまだまだ先に続いていることに気づいた。

はて、この灯りの先には何があるのだろう。等間隔に配置された水銀燈は、マルの目から遠くに行くに従って距離を縮めやがて一本の光線となっている。
遠近というものがこうさせるか。
マルは知識の豊富な少年だったので、そのようなことを思うのだ。

しばらく行くと、遠くの方に明るく白い人々が集う場所があった。
白い人々は明るく、みな仲良さそうにしていたが、胸に様々な色の塊を抱えていた。黒いもの、黄色いもの、赤いもの。

マルのいるところは、彼らがいるところよりも暗いので、彼らからはほとんど見えないのであろう。
彼らはマルの輪郭だけをとらえても、一瞥するだけで気にもしていない様子だった。

マルはそのような光景をしばらくの間見ていた。そのうち白い人々は形を変え、先ほどの自分たちと同じ姿をした新しい者があらわれ始めると攻撃を始めた。
先ほど白かったものは黒へ。黄色は赤へ。白い人々は変わり、攻撃した。

マルはその時間と空間を眺め、やがてその場を去った。

いいなと思ったら応援しよう!