妄想物 オートシャンプー③

すまない、母さん。
ゲルトは母親に心配させたことを、弱々しい声で謝った。母親は泣きながらゲルトの体をさすっていた。そこに、不愉快な声が響く。

全く、父親も父親なら子供も子供だな。人騒がせな。
と聞こえた。この声は何度も聞かされては心を乱す叔父の声だった。

ローザ、そもそもお前がこいつに甘いからこんなことになるんだ。フッスバルになどうつつをぬかすから。親父と一緒なんだよ、こいつは。

ユルゲン兄さん、子供の前でなんてことを。
更に付け加えようとしたローザの声を遮り、ゲルトは思わず体を動かした。
何かがおかしい。バランスをうまく取れない。
ゲルトが不可思議な顔をしていると、ユルゲンは投げ捨てるように言った。

なんだ、お前自分のことも分からないのか。お前はもうフッスバルなんかやれやしないんだ。なにせ大事な左足がなくなっちまったんだからな。
これで潔く事務所の経理でもやれるんだ。神様に感謝しろよ。

ユルゲン!
ローザはとっさにユルゲンの頬をひっぱたいた。

いいなと思ったら応援しよう!