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【勉強会レポート】“パンデミック後に留学する意義”

Japan Healthcare Innovation Hub ( JHIH )は2022年8月に立ち上がった、2050年の日本と世界の医療界・ライフサイエンス・ヘルスケア産業を支えることを目標としたプロフェッショナルコミュニティです。Slackコミュニティの参加者は、現在1000名+所属。
noteでは、オンライン勉強会のレポートやコミュニティメンバーの取り組みなどを発信していきます。

JHIHでは、ヘルスケア・ライフサイエンス領域のスペシャリストをお招きし、毎月オンライン勉強会を開催しています。
2023年6月は、University of California, San Francisco Assistant Professorの森岡 和仁 先生( @KazuhitoMorioka )をお迎えし、「パンデミック後に留学する意義」をテーマにお話しいただきました。


スピーカー

森岡 和仁 先生( @KazuhitoMorioka )
Co-Chair, Co-founder DOCSF Japan
Assistant Professor, Dept. of Orthopaedic Surgery, UCSF

2000年、慈恵会医科大学卒業。東京大学整形外科に入局し、臨床医として研鑽を積んだ後、東京大学大学院に進学。東大医科学研究所に国内留学し、医学博士取得後、国立障害者リハビリテーションセンターで脊髄損傷の研究に従事。整形外科専門医を取得後、2012年よりカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)脳神経外科に研究留学し、Zuckerberg San Francisco General HospitalのBrain and Spinal Injury Center に所属。2020年に整形外科のAssistant Professorに就任し、研究の傍ら機器開発にも従事。
日本人研究者や医師のコミュニティを運営し、デジタル×整形外科のグローバル産学コミュニティ( DOCSF-JAPAN )、世界中の日本人研究者を繋ぐネットワーク(UJA)にも理事として携わっている。

モデレーター

串岡 純一 MD, PhD( @perry_orthosurg
UCLA Biodesign Discovery Fellow
株式会社ayumo CMO
Co-founder DOCSF Japan
広島大学バイオデザイン部門 客員准教授


▷基礎研究、トランスレーショナルリサーチを経てファカルティに

  • 基礎研究を臨床研究に繋げ、臨床応用することをモットーとしている

  • 整形外科領域のコミュニティにも積極的に関与し、2年間の留学はとても充実していた


▷医学分野に特化した大学院大学 - UCSF

  • 西海岸を代表する病院の一つでもある。UCLA 10個のキャンパスのうち6つに医学部がありそれがUCSFと呼ばれている

  • 学生数5,000人、ノーベル賞が5人

  • 大学としての売上の2-3割が企業や政府機関からの研究費というところが特徴的

  • 医学に特化した大学院大学であり、企業とアカデミアが非常に近い関係にある

  • 他の医学部と比較して学費は安く、レベルは高い

  • NIHグラントの獲得額では米国で2位

  • 医学に特化していることを考えると1人の研究者が集めている額が大きい

  • チームで年間300本の論文をpublishしている


▷ 異文化適応曲線の変遷

  • 縦軸は精神的満足度で、高いほど幸福。横軸はタイムスケールで0-4年くらい

  • 最初はハネムーン期、次にカルチャーショックを受け、次にメンタルアイソレーション、孤独を感じ、最後にインテグレーションしていく。見ていて多くのケースはこの通り

  • 予想外のことが発生し、当初無給医としてJ1ビザで留学。途中でオーストリアの研究費を自力で獲得し、ポスドクに。そこから研究費だったり各所支援があって長く滞在することになりH1Bビザに変わり、その後O-1Aというメジャーリーガーがよくとっているビザを取得。ファカルティの公募に通ったため、大学からの支援もあり一番早いプロセスでグリーンカードを得た

  • 環境のサポートとオープンなマインドでサバイブし、現在に至る


▷ 新しい研究留学のかたち

  • ファカルティになり、分担者としてR01(Independent Research Project Grants)という研究費にも申請しにいくことを試みている

  • UCSFをハブとして留学も可能なかたちとした国際共同研究を基盤展開している

  • いくつかの日本の大学や企業と連携しており、日本とアメリカの国際共同研究を拡大していく予定。新しい研究留学のかたちを作っている


▷ 日本人コミュニティの活動

  • 現地で日本人コミュニティを運営。有志で集まって立ち上げ、世代交代もしてきている

  • 日本人互助の会としてネットワークをつくる機能を持っており、これから留学する人の助けになるものになっている

  • ベイエリアの日本人整形外科の会を立ち上げて30以上の医療機関、100名以上の整形外科医を集めてオンラインで勉強会を開催したりしている


  • UJAという日本人研究者ネットワークも構築し、留学中の方をサポートしている

  • 10周年6,000人の留学生の所属実績があり、50以上のコミュニティと連携

  • 留学時だけではなく、留学の全てのフェーズでサポート。留学の体験談がコメントとともについていておすすめ


▷ 米国と日本の研究環境の違い

  • 米国は研究費が圧倒的に多い。中でもNIH(National Institutes of Health)がトップ

  • 退役軍人の研究費も大きい

  • 研究費を申請し、お金がとれたら論文を提出する。研究もビジネスで、医療もビジネス。研究費を取るのが研究者としての至上命題

  • 日本の研究室は教授を筆頭としてピラミッド構造でトップダウン。アメリカの研究室は教授が研究スタッフとダイレクトにつながっている

  • 臨床研究でも役割分担が高度に進んでいる。チームサイエンスが実践されていて、できること・できないことが明確化していて、補い合っている

  • ラボ同士のコラボも進んでいる


  • 研究費が獲得できれば残ることができるが、獲得できないとポストを維持できない

  • 長期留学、例えば3年以上残る場合はサバイバルする術を身につけていく必要がある

  • ポスドクがファカルティという職につける割合が10%未満。残ることがなかなか困難で、企業に就職するケースが非常に多い

  • 一旦企業に就職してもまた大学に戻るということもある


まとめ

  • 研究もビジネス

  • 研究者としてサバイブするには研究費獲得が欠かせない

  • 米国は積極的に研究者間やラボ間でコラボが進む環境

  • 最初4年は精神的に変動あり辛いときもあるが徐々に安定
    アカデミアに留まらず企業やコミュニティとの連携も大事に

  • 留学する研究者のコミュニティに積極的に参加して欲しい


参加者の声

参加者の方々からいただいた声を一部ご紹介します。

米国と日本で研究環境の差が大きいことは知っていましたが、リアルをレポート頂き大変勉強になりました。自分も後悔しないチャレンジをしていこうと思いました。

留学にはstudy, research, work等色々なやり方があり、日本の国際競争力を保つために海外に出て挑戦することの大切さを改めて感じました。


ご興味のある方は、ぜひ Japan Healthcare Innovation Hub(JHIH)にご参加ください!

Japan Healthcare Innovation Hub(JHIH)について

JHIHは、ヘルスケア・ライフサイエンス分野でイノベーションに取り組む人たちの横の繋がりを強化し業界の活性化を目指すコミュニティです。
現在1000名+所属。月1勉強会+たまに交流会開催+情報交換Slackコミュニティ運営中。ご参加を希望される方は👉こちらからご登録ください。

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