『キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される』
皆さんはこのキャリア理論をご存じだろうか。この理論はスタンフォード大学のジョン・Ⅾ・クランボルツ教授が1999年に提案した、比較的新しいキャリア理論で正式には「計画された偶発性理論」である。
この理論の大きなポイントは、
・個人のキャリアの8割は予想しない偶然的な出会いによって決定される
・その偶然的な出会いを計画的に導くことで、キャリアアップをしていく
ということである。自分もそうだが、新卒で入る会社を決めたとき、転職を決意した時、など、その時々の人との出会いが決め手となったことが多いと思う。人それぞれのキャリアはそうした自分で予測しなかった偶然の出来事の積み重ねで作られていくと考えるのである。
人の「夢」や「目標」などは変わっても、変わったことで、今までの努力が無駄になるのではなく、それぞれが積み重なっていくものだ。とすると、その折々に花が咲くのが、豊かで実りある人生といえる。ではその花の種はどこから来たか。それはほとんどの場合、偶然であり、その偶然は人との出会いがきっかけとなっている。ならば、そうした偶然の出会いを増やし、その出会いから生まれる「夢の種」を前向きに受け止めるような行動をしていれば、花はたくさん咲く。つまるところ、これがクランボルツの指し示すところである。”偶然を計画的に増やす”。 だから「計画された偶発性」という言葉になるのだ。
キャリア理論には大別すると、”未来””に重きを置く考え方と”今、現在”を重視する考え方とあるが、クランボルツの「計画された偶発性理論」は完全に後者だ。今は変化のスピードが速く、5年先、10年先の未来などだれも予測できない。そのいい例がリーマンショックであり、東日本大震災であり、今まさに世界中がその脅威に晒されているコロナウイルスしかり。そして「5年単位、10年単位でキャリア計画を立てるべき」という従来型キャリア理論が通用したのは、将来の見通しが立てやすかった20世紀までの話で、IT 革新による新しい技術が次々に世の中を席捲し、刻一刻と我々を取り巻く社会は日進月歩で変わり続けている。10年前はスマホを持っている人は一部のみで「LINE」などもなかった時代である。今後も激しく変化を続け、キャリアプランを立てるのがまずます困難になっていく現代社会において、クランボルツの提唱した「計画された偶発性理論」がキャリア形成を考えるのに大いに役立つといえよう。
「計画された偶発性理論」を実践してキャリアアップする5つの習慣
では計画的に偶然の出会いを増やし、キャリアも人生も豊かにするにはどうしたらよいだろうか?これについてクランボルツは5つの習慣(というか条件)を挙げている。
①好奇心:たえず新しい学びを模索する。新しいことに興味関心を持つ
②持続性:失敗に屈せず、負けずに努力をし続ける
③柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変える
④楽観性:新しい機会は必ず実現するとポジティブに考え、くよくよしない
⑤冒険心:結果が不確実でもリスクを取って行動を起こす。失敗を恐れない
今、コロナ下の中、なかなか内定が出ないでいる就活中の学生たち、転職しようか迷っている人、定年退職後の人生をどのように生きていこうかと考えている方々、あらゆる世代のあらゆる人たちに、大いなるヒントとなるキャリア理論ではないだろうか。まずはこだわりを捨てて心を開き、新たな出会いの機会を増やしていきましょう。夢や豊かな人生を手に入れるために!