彼の名はプチグレイン
彼の名はプチグレイン。
青年になる前の
無駄のない細い肢体、
固く閉ざした唇からは
おいそれと気持ちを表さない。
固く重たい皮のマントの
びっしり並んだ前ボタンを上まできっちり全て閉め
クラシカルな石畳の中庭で
冬の日を背から浴びている。
ひゅうと冷たい風が吹き
背後から葉を運んでくる。
流れては飛んでいく緑の葉。
偶然のように、少年は一枚捕まえた。
ウイテマテ
ふと受け取った葉に刻まれた
メッセージを読み空を見る。
知らなかった。寒いというのに青い空。
そして
少年は空に浮かぶ。
途端、マントがシフォンに変わる。
青空の中 ふわふわと風にたゆたう。
周りには雲。
いやこれはサヴォンだ。
虹が映り込みキラキラと光るサヴォンの泡。
気付けば全身白のふわふわを纏い笑っていた。
【精油物語・プチグレイン】