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産婦人科の先生は性別を教えたくてしょうがない、のか?

 赤ちゃんができたとわかったら。

 早く性別を知りたい、と親になるほとんどの人が思うのでしょうか。私は妊娠した時「健康な身体で生まれて育ってくれたら、性別はもとより勉強なんかよくできなくたっていい」と考えていました。

 長男がお腹の中で順調に育ち、超音波で性別がわかるようになると、先生に「もう性別わかるけど、知りたい?」と聞かれました。すかさず「あ、私は知りたくないです」と答えました。今から33年前、1990年のことです。

 そのあと検診に行くたびに「性別、知りたい?」と聞かれるのでいぶかしく思っていました。

(先生ったら、まだそんなにお年でもないのに、性別知らなくていいって私の話、聞いても毎回忘れちゃうのかなぁ)

 当時産婦人科の先生は40代ぐらいだったでしょうか。大学病院などではなく、個人の産婦人科医院でしたが、良い先生と評判で、待ち時間は大学病院並でした

 さて。予定日まであと一週間ほどに迫った検診でのこと。超音波をお腹にあてながら先生はあろうことか、

「ほらこれがお◯◯◯◯! カッコいいだろう?」

 と、はっきりと言ってのけたのです……。ズバリ、男の子のシンボルを。

 その瞬間、先生は性別を教えたくて仕方がなかったのだ、とようやく気づきました。時既に遅し。

 その夜仕事から帰ってきた夫に「ねぇ、なんだか性別わかっちゃったんだけど」と言うと「え! それなら教えてほしい。でも男だろ?」

 夫も私も、根拠は全くないものの、なぜか男の子ではないか、という予感がありました。

 長男が生まれたあと、分娩室で看護師さんに、
「性別、知ってたの?」と聞かれ、「聞かなくてもよかったのに先生が直前に言っちゃったんですよー」と言うと、先生はしらばっくれて、

「俺は何も言ってないよ、性別なんて」

 と言ってのけました。そりゃあね。男の子、というワードは使ってませんでしたよ。

 3年後に二男を出産した時は、先生はとうとう最後まで性別の話をしませんでした。だから、

「今回は長男と同じ、男の子だろう。男の子が続いてがっかりさせると思って言わないんだな」

 と、わかってしまい、やはり男の子でした。

 二男の出産から2年後、長男の時と同じ質問が繰り返されました。そして、長男、二男の妊娠中は全くなかった逆子で、何度か猫のポーズのような体操をしました。赤ちゃんは無事に頭を下にしてくれて、自然分娩で生むことができました。やはり先生は、最後の最後で

「今度は楽しみにしてていいよ」

 と、女の子だな、とわかる発言をしてくれました……。

 3回とも、男の子だ女の子だという性別じたいは口にしていないのです。でも、わかってしまうじゃないですか。

 いえ、産婦人科の先生にクレームを言いたいわけではないです。性別がわかったら聞いて、名前を考えたり洋服やインテリアを用意したい、そういうのはいいと思いますし、無駄がなく合理的だと思います。

 30年以上経ってもこのできごとを忘れられず、時々思い出したり、若いママや友達におもしろおかしく話したりもします。

 それではいったい私は、何にモヤモヤしたのだろう?

 これから生まれてくる子が、男の子でも女の子でも、どちらでもいい。

 ただただ、健康であってほしい。

 それだけだったのです。

 男の子が3人だってかまわなかったし、多くは望みませんでした。こればっかりは、努力すれば叶う問題ではありません。私は長男と二男の間にひとり亡くしています。妊娠中に頭の骨が一部欠けていることがわかり、人工的に陣痛を起こして出したのです。

 その私の、健康でさえいてくれたら、というささやかな希望を理解してくれない先生にモヤモヤしたのだろう、と思います(やはりクレームか⁉)。

 あれから先生は何人のベビーをとりあげたのでしょう。分院もできたりして、いまだ現役なのかしら?

 今どきだと、病院の口コミサイトをのぞいたら

「医師が性別を教えたくて仕方がない人。知りたくない、と断っても無駄で最後には言ってしまうので、知りたくない人は行かない方がよい」

 なぁんて書かれちゃうのかな。もちろん書いてませんよ私は!


 画像は、去年娘が生んだ孫の手(背中をかくアレではない)です。早いもので今年一歳になりました。

#赤ちゃんの性別 #妊娠出産 #エッセイ

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こんゆじまじこ
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