見出し画像

介護休暇をいただきます!

 介護離職などの問題がニュースで取り上げられるのを見ても、自分ごととして考えたことがありませんでした。私が生まれたとき、まだ20代前半だった両親の介護をするのは、ずっとずっと先だろうという、根拠のない楽観的な思考が心のかたすみにあったのです。

 昭和23年生まれの母ががんの手術をしたのは今から9年前、2015年のこと。2年後の2017年に再発と言われ、手術をした大学病院へ多い時は月に3回ほど電車で治療に通っていました。

 一昨年、外で転倒し腕を骨折したときは、コロナ禍でいくつもの病院に断られ、手術も入院もさせてもらえませんでした。がんの治療の通院は、一緒に住む私の弟がそのたびに有給をとって車で付き添っていました。

「もう使えるお薬がなく、治療法がないので、今後は緩和ケアに移行していきましょう」

 そう言われてしまったのが今年10月なかば。あれよあれよと訪問診療、訪問看護、訪問薬局の契約をしました。それでも母は納得がいかないのか「お薬が効いてないのかな、(通院していた)病院に電話をしようかと思う。あと、この次は何月何日に予約もしてあるから」と言うのです。ちなみに母は認知症ではありません。

「もう訪問診療に切り替えたのだから、今後は往診に来てくれるあの先生に相談すればいいんだよ。その前に何かあるならまずは訪問看護の看護師さんに電話だよ」と伝え、電話をすると、すぐに駆けつけてくれました。

 12月に入って間もなく急に体調が悪くなり、呼吸が苦しいため在宅酸素が入りました。往診の先生には「もう緩和ケア病棟に入ってもおかしくない状態ですね。今後入浴、排泄がひとりでは難しくなったときにどうするのかが、病棟に入ってもらうかどうかの目安になると思います。ご本人の希望もふまえて、ご家族でよく話し合って決めて教えてください」と言われました。

 私は週に2日だけ、療養病棟の看護助手をしています。療養病棟の患者さんは、ほとんどが寝たきりで、自分では身体を動かすことができない高齢の方たちですが、まれに30~50代の方もいます。助手といっても、看護師や介護士でなくてもできること=雑用のようなことを引き受けています。患者さんに直接触れる身体介護はむしろしてはいけないため、「テレビのリモコンを取って、またはチャンネルを変えて」と言われたらできますが、「ベッドを起こして」「食事用のエプロンをつけて」はだめなのです。

 その業務の中に「尿破棄」があります。自分でおしっこを出すことができない患者さん(ここでは皆さんほとんどおむつです)の尿道に管を入れ、その管からベッド脇に吊るしたバルーンといわれる袋に自然に尿が排出されるものです。蛇口がついており、使い捨てのビニールのガウンにゴーグル、使い捨て手袋は二重にしてプラスチックの計量カップに出し、量を排泄チェック表に記入していきます。

 以前の短い介護職の経験で、おむつ交換も何度もやりましたし、もし母がおむつになりバルーンが入っても難なくできそうです。若い頃から常々「子どもには(老後)迷惑をかけたくない」と言っていた母は、着替えすら呼吸苦で大変なのに、ひとりでがんばってやってしまうのです。

「お母さん、そこがんばるとこじゃないから。無理をしてひとりで着替えて、よろけて転倒、骨折したらもう間違いなく寝たきりだよ? 一緒に住んでるんだから呼んでよ」と言ったらやっとわかってくれました。

 仕事しか能がなく、自分のことすらおぼつかない父といつ急変するかもしれない母がふたりきりでいるのが恐ろしく、60日間の介護休暇をいただくことに。職場で会う人会う人簡単に説明していたら、みんな「偉い!」「身体に気をつけて、無理をしないでね」「絶対に戻ってきてね!」などと嬉しい言葉をもらいました。介護士の頼もしいお姉さまに休むこと、ご迷惑をおかけします、と伝えたとき、

「なんですって。でもさ、やり直しはきかないんだから、後悔しないようにやんなよ!」

 と言われ、勇気をもらいました。

 別に偉くなんかない。私は私が納得いくようにするだけです。ひとりで抱えて潰れるようなことにもなってはいけません。


#介護休暇
#母の介護
#訪問診療
#訪問看護
#訪問薬局

いいなと思ったら応援しよう!

こんゆじまじこ
おもしろいと思って下さった方はサポートをいただけると大変ありがたいです。いただいたらまずは小躍りして喜びます。そして、水引セラピーに関わる材料費や書籍の購入に、大切に使わせていただきます♬