セックス、トラック&ロックンロール・ヘヴィー・メタル・キッス…7
前者は不明、後者はあれだ……。
アタシは回転するLPを見下ろしながら、その思いを口にしてみた。
「だから、アレは何だっけ? ‛カッチョイー!‚ってのさ、ほら、誰のどのアルバムだったっけ?」
「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウトでしょ」
「あ―、そっか……。え? えっ!?」
ハッとして、声がした方、そう、段ボールの方を見下ろした。 と、そこには今まさに立ち上がりつつあった全裸のデブの姿があった。気になっていた何かが形になって、アタシに突き付けられた、その瞬間、気付けばアームが指から離れていった。
プッツッ! ザーザザッ!
‛悪魔の招待状‚が頭ちょっと欠けて流れ出すのと、全裸でビンビンのデブが、アタシに詰め寄るのとは同時だった。ムワーっという男の汗と脂と精子の臭いのミクスチャーが、こちらの鼻腔を満たした時には、おもいっきりデブに腹を殴られていた。
こいつ、長谷部安春の‛犯す!‚観てんじゃね?
息が詰まって、ぐったり脱力したアタシを脂肪の塊が受け止めた。ハグされた。苦しかった。おもいっきり呼吸をしてみた。互いの体臭が混じっていて、臭かった。吐き気が込み上げた。と、そのまま段ボールを押し潰す呈で、床へ押し倒された。
この、デブ……、見覚えがある。
そのデブが今、耳元へ口を寄せた。荒過ぎる呼吸音を感じた。そんな息遣いに紛れた唾を耳に浴びながら、デブのたわ言に付き合わされた。
「サキちゃん、背中がぬめってないかい? 段ボールのなかで、この瞬間待ちわびて抜きまくったからさ、ボクの精子がサキちゃんの背中に染み込んでいってるだろ? サキちゃん、耳が臭いよ、堪んないや……。ちょっと、首曲げようね」
こ、こいつが、あれか!?
アタシは、ピースがパズルを完成させるのを感じながら、首を右へ捩られると、項が強烈な鼻息に襲われた。
「さっきは記憶に頼って、この臭いがおかずだったのに……、そ、 それが、今じゃ生でたらふく好きなだけ……ああああああー!!」
舌が、唇が、歯が、入れ替わり立ち替わり項へ押し付けられ、アタシには理解出来ない何かを味わっているのがイヤというほど伝わってくる。そして、それは腰に跨がっているデブのペニスが、アタシの臍の辺りでピクピク脈打っているのが何よりの証明だったし、上下に脈動する度にピチャピチャ音まで立てていた。
こいつ、アタシが品出ししていた時に、狭い店内でその背後を行きつ戻りつしていたヤツだ。そう、何度かこの店へやって来て、クラシック・ロックの名盤を、その度に買ってったデブ。いや、にもかかわらず印象の薄い、記憶の隅にかろうじて引っ掛かっている、そんなヤツがまさか!?
あー、デブの唇がスライドし始めるにつれ、アタシの首は元へと戻っていき、徐々に天井が視界に入ってきて、唇は塞がれて、歯茎が嘗め廻され……、そうだ! アタシは食い縛った歯を、誘うように弛めていき、デブがその舌でアタシの舌を求め始めるように仕向けた。そして、その時こそが、アタシにとっては反撃のチャンスだ。デブの舌を、そう、噛みきってやろうじゃんか!
が、デブは不意にその唇を離し、上体を起こしていった。視界が捉えたデブの垂れたパイオツが実に醜かった。が、それに反してペニスの漲りたるや冗談抜きで凄かった! 今や何かが近付いているのだ……。
と、デブがそっと頭を後ろへ引いた。数秒に渡って、何かを溜めている、そんな感じに思えた次の瞬間、デブが唇をすぼめたと思ったら、‛カー、ペッ!‚ってな案配で、アタシは顔面にデブの唾を喰らった。前後の流れから鑑みれば、痰が混じって……。
デブは、その掌で今吐いたばかりのそれを顔全体に塗り広げた。じきにその掌の動きも止まり、手が顔から離れていき、とうとうアタシの視界にはデブの悲壮なまでに引き攣った笑顔が刻まれた。
ブライアン・ジョンソンが‛Fire!‚ってシャウトした。
デブがアタシに擦り付けたその手を、自分の口内へ挿入しだしたのはまさにその時だった。顎が外れんばかりに大きく開いた口内へ指ごと飲み込んでいき、勢い溢れ出る涎がその手首を伝ってアタシのTシャツの胸元へ点々と染みを作っていった。
「グゲゲルルルレレレグゲゲッ……」
脂肪だらけのデブの腹が波打ち、その波が胸へ、首へ、そして喉へと駆け抜けて行くその頃、デブは唸りながらその顔をアタシの顔へと寄せ始め、それに合わせたように五本の指を徐々に引き抜いていき、最後の最後にキスする間際に抜き切った。
‛Fire!‚
ブライアン・ジョンソンのシャウトに乗って、デブはアタシの口内へ、なんと、ゲロを吐きやがった! アタシは反射的に四肢を、いや、身体全体を揺さぶり、その反動でもって顔をも引き剥がそうとしたものの、デブの唇は吸盤みたいに吸い付いて離れない……。
アタシは、パニックめいた状態で、貰いゲロを必死に耐え忍びを耐え、また、それだけがアタシが唯一取り得る抗う姿勢だったが、もう無理、限界!
と、デブが満足げにヘラヘラ唇を離した途端、プロレスの毒霧よろしくアタシの口からゲロと貰いゲロがミクスチャーで噴き上げた。その時、レコードからは大砲の音がしたのは言うまでもない。
‛悪魔の招待状‚って曲、知ってるよね?
で、アタシはアタシで‛たーまやー!‚って心で呟いていた。もっとも、天に吐いた唾は……、そう、ゲロ花火はアタシの顔面へと落下してきた。
しばし、放心状態なアタシ……。首まで捲られたTシャツ、ノーブラで剥き出しの胸はモノみたいに揉みしだかれ、かと思えば、腋へゲロまみれの口を付着させ、まるでキャンディを舐めるみたいな音をさせて、しゃぶり回し……って、やりたい放題だ、このデブ!
ドビュ……。確かにそんな音が聞こえた、いや、まだまだその音は続いている。上半身から首筋まで、デブの精子が撒き散らされているのだ。この生暖かさ、しばらく忘れられない感触になりそうで、憂鬱だ……。
もうー、いいだろー、デブ!
と、デブがぶちまけたばかりの精子を両手を使ってアタシの胸の辺りへ寄せ集めた。また、なにか……、イヤな予感しかなかった。
大概にしろな、デブ!
デブがアタシの上から床へと座り直した。途端に重しのとれたアタシは、自由のなんたるかを、この身体で知った。さあ、そろそろなんとかしなくちゃだ。そう思いながらも、アタシは今、デブにデニムを脱がされていたりする。デブの両目は爛々と見開かれ、露になったショーツを射抜きそうな熱っぽさで、それをまたアタシの両膝辺りまでむんずとずり下げると、デブはアタシの両足を掴んで持ち上げ、ショーツの真下から頭を入れ、アタシの膝下を自分の両肩へ載せやがった。
アソコがクパァっと開いた。今晩のクパァは、妙に澱んで聞こえた……。
すると、デブは寄せ集めた精子の群れを右手指先全体にねっとり付着させると、その右手をアソコの正面へ移し、今や遅しと挿入の機会を窺っているようだった。
こいつ、なに考えてんだ!?
デブは右手を構えたまま、アタシへこういってのけた。
「サキちゃん、種付けぇ」
あー、こいつ、最低だわー! アタシには、もう、今しかない! なんでもいい、行動しなきゃ、今、今! 今!!
‛Shoot!‚ ってブライアン・ジョンソンがシャウトしていた。
そうよ、今よ!
デブが視線をアソコへと戻したその瞬間、アタシはありったけの力を振り絞って、両踵をデブの左右のこめかみへ‛Shoot!‚してやった!
「あ、んんんぐッ……」
悲鳴ともつかない唸りを発したデブがアタシへ勢いよく伸し掛かって来た。と、その際に精子まみれのデブの右手が、アタシのアソコをかすめて、ペチョッという小さな音を立てた。
アタシは、緊張が緩んでいくのを感じながら、デブと折り重なったままで、眠りに落ちていった……。
続く
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