ぴざ。
渋谷。栄枯盛衰の街。ジャケットを一枚羽織る季節に俺はその街にいた。時代の中心地であるそこは駅前があまりにも臭すぎる。ビル風一つ吹きやしない。サクラダファミリアよりも終わらなそうな工事の騒音を聞きながら街を小さくみせる大きな石の頭の前で人を待っていた。
「久しぶり。」
三つ揃った小さな頭を並べて二十四時間中継されている交差点を渡った。両脇に身長差を感じながら少し低い位置にあるその頭を見失わないように先へと足を進めた。途中のCDショップにはでかでかと面の良い人間が張り出されている。俺たちはその前を通り緩やかな傾斜の途中にある雑居ビルへと入った。
暗い店内、大きな蠟燭が姿を写すことを放棄した鏡の前に置かれていた。 年季の入った大きな木の机、その横の少しがたつく小さな木の椅子に座った。脆弱なWi-Fiに接続し料理を注文した。
渋谷。栄枯盛衰の街。眠ることを知らないその街で俺はピザを切り分けていた。均等に、平等に、具材の配分も気にかけながら。
もしピザが動詞だったら意味はなんだろうか。切り分けるか、盛り付けるか、薄く伸ばすか、どれもしっくりはこなかった。
再会に喜びを感じながら会っていなかった間の話をした。目くるめく話題に一抹の疲れを覚え始めた頃、店内の壁にプロジェクターから映像が映し出された。海の生物、夜景、抽象画。商業的だった。壁の端に置かれた石膏像がやけに目立っていた。
話と映像に夢中になっている間に残ったピザの耳が固くなっていた。
もしピザが動詞だったら切り分けるよりも囲む、繋ぐなのかもしれない。
固くなったピザの耳を溶けた氷で薄まったレモネードで流し込んだ。
今この時を残すように写真を撮った。
帰りの電車でその日の思い出を二人に切り分けた。乗り換えに夢中になっている間に俺の頬は固くなっていた。