思いがけない再会
タクシー配車アプリでタクシーを呼んだ。
来てくれた車両は地元の会社ではなかった。
配車アプリは便利なのだが、通常の営業エリアではない会社のタクシーがたまたまエリア内にいた時に捕まってしまい、ドライバーが周辺の道をよく知らないということが時々ある。
今回もそうかなと思い、「〇〇を通って△△方向に行ってください」と言ったら「はい、わかりました」と答えてそのまま動き出す。
その後もすんなりと目的地に向かってくれ、「ここを曲がってください」と言ったら「ああ、⬜︎⬜︎通りね」と地元民しか知らない通りの名称をサラッと口にした。
「そちらの会社、この辺の会社ではないですよね。よく道をご存知ですね。」と聞くと「私はもともとこのあたりで30年近くやってたんですよ。この会社もかなりの台数を運用していて、呼ばれて行ったんです。」
家の近くの道に入ってもらうと、「ああ、お客さん、以前、忘れ物した人でしょ。」と言われた。
やっぱりそうだ。会社が違うからまさかと思ったのだが、乗った瞬間の運転手さんの横顔と行き先の短いやり取りの口調からこの運転手さん、どこかで会ったような気がすると思っていた。
数年前、タクシーの車中にスマホを忘れてしまった時、連絡したら営業の合間にわざわざ近くの駅まで届けに来てくれた親切な運転手さんだった。
その後、2〜3回その方の車に乗ることがあったが、その会社の車は当時もこのエリアでは2台しか稼働していないとのことで、最近では車自体を見ることもなくなっていた。
思いがけない出会いになんとなく幸せな気持ちで降車。「またよろしくお願いします」と言われて「こちらこそ、またお願いします。」と言って降りたのは言うまでもない。
※ イラストはあんころうさんのイラストを使わせていただきました。ありがとうございます。
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