読みかけ日記「私と街たち(ほぼ自伝)」(吉本ばなな)
読みかけというのもおこがましい、読みはじめたばかりの本です。
吉本ばななさんの本に出会ったのは、多分10年前、時期やシチュエーションの記憶は曖昧なのですが、とある病院の売店だったことだけは鮮明に覚えています。
高齢の母が大きな手術を受けることになって、その手術を待つ間だったか、とにかく待ち時間を過ごすのに本でもないかなと病院の売店を覗いた時、ミステリーやSF、歴史小説などに混じってばななさんの本がありました。
その時点でばななさんは著名な作家さんで本もたくさん出しておられたので、名前や幾つかの作品名は知っていましたが、手に取る機会はなぜかありませんでした。
手に取ったのは「なんくるない」だったように思うのですが、今見るともしかしたら最初に手に取ったのは違う本だったかも。
そんな曖昧な記憶ですが、初めて触れたばななさんのゆったりした優しさのある文章に、不安がずいぶん和らぎました。
それから機会があるとばななさんの作品を読んだり、新刊が出ると購入して読んでいました。
この本も先日購入して、読みはじめたばかりなのですが、読みはじめた直後に、母の状況が少し心配になる知らせがあり、ばななさんの本と母との結びつきに苦笑い。
そんなふうに読みはじめた本は、これまでとは少し印象が違っていました。
年齢を重ねるってこういうことなのかな。いろいろな経験を積み重ねた後に見る世界と、若くて突っ走っている最中に見る世界とは、同じ光景を見ていても見えている世界は全然違うのかなと思わせる。
「陰影」とでもいうのかな。明るいだけではない、悲しみだったり、手放したもの、知らなければ無邪気に笑えたものが知ってしまったから笑えなくなってしまった、そういう世界があることを知りながらそれに向かい合うだけのエネルギーがなくて閉じてしまうことを自覚するからこその哀しさ。
優しい柔らかさが印象的だったばななさんの作品にこんなことを強く感じてしまうのは、自分が歳を取ったということかな。
今日はお休みなので、続きをゆっくり読めるかな。読み進めると受ける感じは違ってくるのかなと楽しみな朝です。