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2025/02/15 米津玄師2025 TOUR / JUNK
端的に言えば心を動かされた。圧倒された。
私は去年の秋ぐらいの二次先行抽選に落ちてから諦めていたんだけど、母親が粘り続けて、福岡公演Day2を当ててくれた。私はその同行人。諦めない心は大事だね。
今日は確か大阪公演なんだけど、感想をまとめるのに時間がかかって結局今日になっちゃった。
行きの九州新幹線にて
九州新幹線なるものに乗るのは初めてだったんだけど、まずその内装に驚いた。普通の新幹線は全体的に白っぽいけど、九州新幹線は暖かみを感じる。壁もダークブラウン木目が採用されていて、どことなく高級感があった。
そのうえ座席が広い。ゆったりと座れるので過ごしやすく、座席を倒されても圧迫感が無い。総じてとても快適。
一周LOST CORNERを聴いて「今からこれを生で聴くんだなぁ」とワクワクしていた頃、私たちは駅で買った和食弁当を食べた。これがとても美味しい。何が美味しいって白米が良かった。炊き立てとはいえ、2時間は置いたもの。べちゃべちゃになっていてもおかしく無いのに、ちゃんと全部粒立っていた。ご飯が美味しいと、お料理全体の評価もグッと上がるよね。
そして博多駅に到着!何気に人生初の博多駅。思っていたよりもずっと都会で驚いた。新幹線から見えた景色は、まだ雪の残る田園風景ばかりだったのに。東京一極集中を、まずはこういう地方中枢都市を起点に解決していけないものなんだろうか。やっぱり仕事がないんだろうか。こんなに都会なのにね。
最寄り駅まで乗った後は徒歩で1kmほど歩く。母親曰く各地のドームはここ以外駅からすぐのところにあるらしい。なんで福岡だけ遠いんだろう。道中はツアーを観に来た人がズラリと列を成していた。年齢層はサカナクションより高めな気がして、落ち着いて見れそうな雰囲気。座席についてから見渡すと、若い人も多かったけどね。
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例によって弾丸旅なので、観光は全くできず……。
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交通系ICカードを使っているけど思わず吸い寄せられた。
米津玄師2025 TOUR / JUNK
ドームの中はやや寒くて、持ってきたカイロで手を温めていた。マツキヨの貼らないカイロなんだけど、これ持続時間がすごく長いのでオススメ。世の中の「10時間持ちます!」みたいなやつは大体3時間もすればダメになることが多いと思うんだけど、これだけは文字通り10時間保つ。家を出る時に使うと、夕方まではほぼ確実に暖かい代物。本当に良いよこれ。
座席は一塁側のやや後方で、ステージを右前に見る形。「たのしんでいってね😀」みたいなのが撮影禁止と並んでスクリーンに表示されていた。子供が読めるように平仮名なのかな。なんか子供の頃お弁当に入っていた、スマイルポテトを思い出して和んだ。そんなこと言われなくても楽しめるに決まってるのにね。
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記憶に残っているよりもずっと大きい!
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可愛くて好きだったな。
ステージ上に見える黒い枕のようなものや、上に浮かんでいる2つの白い円柱状の物体は何に使うんだろう……。と考えていたら暗転した。
人生初の「生」米津玄師。ワクワクが止まらない……!
セットリストはこんな感じ。全体として改めて見ると、徐々に深く引き込まれてからの、畳み掛けるようなアッパーチューンで綺麗に締まる良いセトリだなぁと思う。
1: RED OUT
2: 感電
3: マルゲリータ
4: メランコリーキッチン
5: LADY
6: Azalea
7: ゆめうつつ
8: さよーならまたいつか!
9: 地球儀
10: YELLOW GHOST
11: M八七
12: Lemon
13: 海の幽霊
14: とまれみよ
15: LENS FLARE
16: 毎日
17: LOSER
18: KICK BACK
19: ピースサイン
20: ドーナツホール
21: がらくた
Encore
E1: BOW AND ARROW
E2: Plazma
E3: LOST CORNER
ED: おはよう
終わった頃にはファンになっていた
まずはRED OUTで幕開け。遠すぎてさすがに登場は見えなかったけど、赤いライトに照らされた時にパッと現れたような感じがして逆に良かった。1曲目としての選抜はそれなりに予想通りではあった。「消えろ!」の迫力ある生シャウトがとても良い。狂気的な感情の発露という感じで、私の好みにストレートに刺さる。音源とはやや違うその響きが、目の前にいるんだ……という実感を起こさせる。
続いて感電。個人的にはやや意外な選曲だと感じた。でも終わってみて、がらくた感の演出としてはそれなりに役目を果たす曲だなと印象が変化した。そして1曲目では謎だった枕は、背景の映像と同化してビルのようになっていた!ONE OK ROCKが渚園のアンサイズニアで、去年サカナクションがユリイカでやったのと似た雰囲気。このためだったのか!「お前はどうしたい?返事はいらない」って歌詞いいね。あくまで知りたいだけで、私の意思がどうあれ生き様は変えないといった風で。
今回のセットリストで、私が知らなかったのは2曲 (意図的に知ろうとしなかったものを除く)。それがメランコリーキッチンとAzaleaだ。特にAzaleaは、初見でここまで切なさという意味で胸に迫る曲というのは、私の人生においては無かった。帰って改めて聴いてみても良い。
LOST CORNERに収録されているPale Blueと同じく、色をつけるなら青色なんだけどその中身はかなり対照的。Pale Blueは現在の話をしていてそれなりに前向きであるのに対し、Azaleaは過去の話をしていて結果となった恋愛についての描写な気がする。結構悲しめかと思っていたが、歌詞を改めて見るとそこまで悲壮でもない。そしてアザレアの花言葉は「恋の喜び」で、特に白いものは「充足」なんだそうな。後悔はないけど、悲しさをしっかり抱えているような心情が浮かんだ。
ライブの話に戻って、次の曲はゆめうつつ。まず思ったのは天井に吊られていた2本の円柱の使い方。サビで透けるような白い布をはためかせ、その前で米津玄師本人が歌うことでまさしく羽が生えたように見えた。総合的な演出としても、ピンクや紫っぽい照明でなんかバクとか出てきそうな雰囲気。まさに夢の中といった感じで、この辺りからAzaleaと合わせて私はもう一段引き込まれ始める。
「しぐるるやしぐるる町へ歩み入る そこかしこで袖触れる」という2番の歌い出しが好きなさよーならまたいつか!。理由は至って浅くて、種田山頭火を引用して土砂降りでも構わず飛ぶ力を暗に手に入れたいことを示してそうな点や、袖触れるという文学っぽさを感じる表現が好き。紅白でもやっていたあのピースはライブでもやってくれるんだね。何やってもミステリアスのヴェールが消えないのに、意外とお茶目な一面がある。
そして私が冒頭に「圧倒された」と書いた所以がここから押し寄せてくる。まずは地球儀。後ろのピクトグラムのアニメーションも含めて壮大で、存在しない自然の中で育った記憶を見てしまう。子供が大人になっていく様子をイメージして、懐郷というよりも未来への憧憬が感じられる。「この道が続くのは 続けと願ったから」という詩も良いよね。それを生で味わってしまった日にはもう……。泣く理由が「単純にすごい」というのは、最上級の感動ではないだろうか。
次にM八七。後ろの車は中古車だろうか?LOST CORNERというアルバム、またJUNKというツアータイトルに相応しい。この曲もまたその壮大さで感動した。特に好きなのはサビ直前のストリングスの音。あれを聴くと、自分の瞳孔が開かれるような、心を掴まれる感覚がする。
ここまででもう完全に私は、私という主体を意識できなくなっていた。そしてLemon。あの時期誰もが耳にしたであろう名曲。紅白で歌うと聴いた時は、みんなテレビの前に集まって、微動だにせず聴き入っていた。それを今生で聞けるのか……。人生生きていれば良いことあるんだね……。
この曲では、背後に蝋燭のような灯りを持ったダンサーがゆらゆら動いていて、それが霊的な何かを感じさせた。MVからしても曲からしても、それに沿った演出なんじゃないかと。そして、背景に出ていた星空が凄く綺麗だった。
そして壮大パートは次で区切り。海の幽霊。リリース当初はロックにご執心だったこともあり、特に刺さっていなかった。が、ライブで聴くと恐ろしい。この曲だけで1回ライブが成立するんじゃないかというぐらいの壮大さを持って、私の心に迫ってきた。あの数分で映画を観たかのような満足感。切ないものを見たわけでも、特別な意味があったわけでもないのに、ただただ圧倒されて涙が出ていた。
やや真面目なMCを挟んでとまれみよ。そんなテンションの曲じゃないと言った通りの不安定な曲。「無事に帰れると思うなよ」の不安にさせるような笑い方を生で聴けたのが嬉しい。というかここまで歌ってきて、そんなことをする余裕があるのもすごいよね。他に歌詞だと「さよなら描いてた未来」を明るく言うのが好き。完全に迷子になった人の開き直りとも取れる「この先誰も知らない」というポジティブさ、見習いたい。私も今人生が酷い迷子なので……。
しかし、さすがに疲れていたのか、毎日では椅子に座って歌っていた一幕も。その座り方がどうにもVaundyのアー写を鏡写しにしたように見えた。アーティスト以外がやるとただ行儀の悪い & 腰にも悪い座り方だよねアレ。遠目に見ていたので自信はないけど、恐らくダンサーの帽子が7色=曜日の数に一致していて、細かいところまで配慮されてんなぁと思った。
そしてここから私的ブチ上がりゾーン。LOSER→KICK BACK→ピースサイン→ドーナツホール。LOSER についてはガラクタ感があってこのアルバムの世界に溶け込めると思っており、予想的中。LOSERからのKICK BACKって両方負け犬系統(嫌な分類だな……)で、結構繋いでみてもストーリー性があって良いなと振り返って思う。同じく新規MVが公開されたドーナツホールも的中。逆にピースサインは完全に予想外だった。
私はここまで頑なに腕を上げてこなかったけど、ここに来て遂に腕を振ってしまった。「ho〜」はやらずにはいられないし、「努力 未来 a beautiful star」なんかもうノリノリで。ドーナツホールの新規MVは観たことがなかったのでここが初めましてになった。あの「いきもの」はこの曲出身だったんだね。
そしてがらくたで綺麗に本編は締められた。タイアップ先のことは毎度のごとく知らないけど、私はこの曲すごく好き。提示されている哲学、今回のアルバムを通して有るものだと思うけど「壊れていても構いません」が如実に出ている。人生や社会を上手くできない側であるという事実をまざまざと見せつけられている今だからこそ、物凄く刺さるし心の拠り所になる言葉だなと思う。
ちなみにこの曲のコメント欄には(真偽不明ながら)私みたいなたくさんの「がらくた」達が、互いの幸せを祈りあったり、この曲に救われたことの感謝を告げにきたりしていて暖かいですよ。
アンコールは新曲2曲で幕開け。本編でやらなかったのならもうタイミングはここしか無いよね。私は1曲目のBOW AND ARROWの方が好みだったけど、Plazmaの方が頭には残った。Azaleaの感動が凄すぎてまだ調べてないけど、ちゃんと聴いてみようかしら。
そして正真正銘最後の曲は、LOST CORNER。生き続けることは失うことだったと歌う曲に、遺失物取扱所というタイトルをつけるなんて興味深い。要は生き続けて失ったものを置いている、ないしそういったものに思いを馳せる場所なのかもしれない。そうなら、アルバムのタイトルにもなっているわけだから、収録曲一つ一つにそういった属性が付与されていくのかもしれない。
ライブの話に戻って、米津玄師は車に乗ってきた。ドームだからこそできる演出。しかもバックシートにはしっかりがらくたが載っている。あの黄色い車は、私が昔遊んでいたおもちゃの車にすごく似ていて、前述の曲に対する視点も相まって強烈に印象に残った。
そんな車に乗って、客席全部を見渡してライブは終了。おはようが流れる中でエンドロールが流れて終幕した。
終わった後の感想は上に書いた通り。ただただ圧倒されたの一言に尽きる。人の手で作られたもので、意味付けのないある種純粋な感動を味わったのは初めてだ。なんというか、こんなに素敵なものが生まれてくるのなら、世の中まだ捨てたものじゃないかもしれないと思えた。それは、このライブを通して改めて、私自身と私から見た社会に対して「壊れていても構いません」と思えたからなのかもしれない。
帰りの新幹線では牛飯と唐揚げ、そしてスイートポテトとイチゴ大福を食べていた。ライブの感動を台無しにするまいと、これでもかと美味しいものを食べて胃も幸せにした。この状態の私は無敵!全方位死角なしのゴキゲン状態!ただ本を読んでいるだけなんだけど。
とにかく素晴らしい1日だった。これまでは「メジャーなアーティストだよね〜」ぐらいの認識だった米津玄師を、しっかり味わえて幸せだった。とりあえず家にあるSTRAY SHEEPを聴いてみようか。