少年の覚醒

少年だった時期は、男には無論、ある。
必ずあるのだ。

だが、いつの日か男は、己の中にいた男の子を忘れた。存在は遠いものの様に感じた。駅のプラットホームで男は泣いた。暫くの年月を経て、少年のもとに男は帰った。

少年は、この世に既に居なかった。一つだけ、掌に熱い追憶が浮かぶのを、男は見た。
「そうか、君はずっと側にいたんだ」
男は、少年だったのだ。

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