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Photo by
neko_vuillard
楽曲「それでも」Aくんの独白
台本のない雪の街。
頼りない子供の僕は、街頭に照らされ、前方に見える名もしらぬ家族を見ていた。父、母、子供。母の手には、ケンタッキーの袋。
先ほどまで、子役として近場で撮影をしていたけど、作品の中の家族の姿、どこにも無いんだ。探しても見つからない。
僕だけ、いないんだ。
時々、この弱い顔を出す僕が、とにかく嫌で、辛かった。普通の子供として、10メートル先にいるあの人たちに、加わりたい。
例えば、ドッキリでもいいから。
冷蔵庫の中には、冷めたスープがある。
当たり前だ。冷蔵庫、なんだから。
コーンスープのみずうみに僕を埋めたい。
家族がほしい。
大人が書いた台本なんかに、本当の事なんて書いてない。少なくとも僕の本心は。
ドラマの中でしか、どうして家族になれないの?
教えてよ
家に帰って、冷めた家族と会う。
おかえり、もない
演じていたあの子の服と、空白。
僕の素肌との間、空白。寂しいよ。
あの子を、抱きしめたい