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テレビ、ラジオ、YouTube引く手あまたの若手放送作家が語る|番組の命運を左右するコミュニティー作りの重要性

放送作家としてのキャリアは3年目ながら、テレビを中心に、ラジオ、YouTubeなど数多くの番組やコンテンツを手掛けている堤映月さん。トレンド入りの常連「あざとくて何が悪いの?」、平日昼の定番「ヒルナンデス!」、35年以上続く「ミュージックステーション」など、絶大な人気を誇る担当番組の事例を交えて、支持されるコンテンツメイクの秘訣を語ってもらいました。

上手く番組の色に染まりながら、独自の目線を生かした企画を

──堤さんは、「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)、「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)、「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」(TOKYO FM)、Netflix Japan YouTubeなど幅広いジャンルの番組やコンテンツ制作に携わっていますね。

「あざとくて」は、2020年10月のレギュラー化のタイミングから参加していて、ミニドラマのストーリーやセリフの構成を担当しています。実際に私があざとい言動をよく見ているだろうし、しているだろうし(笑)、ということで、あざとい女性のリアルな会話や行動を落とし込むことを期待されていますね。番組のテーマもターゲットも明確なので、ある意味やりやすいというか、迷いなく、突き抜けてやれています。

──「あざとくて」は今年1月にフェスを開催しましたよね。
はい。コロナ禍で多くのテレビ番組が観覧を休止していて、実際に視聴者のみなさんとお会いする機会がないので、とても貴重な場になりました。フェスに来られたお客さんはみなさんイメージ通り。「田中みな実さんを崇拝しています!」といった雰囲気で、ニットワンピを着て、番組にも出てきそうな方が多かったですね。届くべきターゲットにしっかり届いているという印象で、うれしかったです。

──「ヒルナンデス!」はお昼の情報番組で、リアルタイムで見ている視聴者がほとんどかなと思います。
そうですね。リアルタイムでご覧になっている視聴者の中でも、主婦の方々が多いので、番組で扱うテーマや使う言葉にも気を使っています。例えば骨格診断やパーソナルカラー診断系の企画では、「これ以外あなたには似合いませんよ!」と受け取られないように、あくまでも参考に、迷ったときの判断材料にということを押す伝え方を会議で提案したりします。楽しくトレンド情報を受けとってもらえるように、番組に貢献したいです。

──番組で扱う人気グルメやおでかけスポット、最新の情報などは、どのようにインプットしていますか?
自分が興味を持って実際に体験したり、感じた物事を紹介したいので、普段の生活の中で友達と行って面白かった場所だったり、SNSで自然と触れている物事からヒントを得ていますね。

──「ミュージックステーション」では、どういったことを担当されていますか?
「Mステ」は今年5月から参加していて、主にVTR企画を担当しています。もともと、音楽好きなので本当に楽しいですし、今まで以上に音楽を好きになっていっていると感じます。どの仕事の現場でもそうですが、若い子たちが興味あるものを知りたいということで、同世代のリアルな意見を求められることが多いですね。35年以上も続く番組で、伝統を大事にしながらも、常に新たな企画に挑戦したいという意向もあって。なので、私に求められているのは、ありがちな企画ではなく、ある意味ぶっ飛んだ企画なのかなと。参加当初はそういった企画を中心に提案していたのですが、なかなか採用されず、少しずつ「Mステ」らしさにも寄せて考えた企画が、5月20日放送の「10~50代に聞いた時代を超えて愛される昭和・平成神イントロBEST10」です。今のイントロってすごく短いじゃないですか。なので、現代の短い中ですごく練られたイントロと、昔の長いイントロを取り上げたら面白いかなと。そういう気付きに、番組に携わる音楽エリートの方々の知識と経験が加わって、成立したことに感動しました。長きにわたって築いてきた番組のノウハウもあるので、上手く番組の色に染まりながら、独自の目線を生かした企画を考えていきたいですね。

ラジオに学ぶ、ファンとの結びつきと居心地の良さ

──続いては、ラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」(以下 ダレハナ)についてお聞かせください。
「ダレハナ」は月曜日〜木曜日の帯番組で、私は火曜日を担当しています。山崎さんとは同い年で、24歳女子2人がブース内でキャッキャ言って楽しんでいます。最近買ったコスメのこと、面白かったテレビのこと、そんな日常の何気ないことを話していて、考えてみるとその時間も自然とインプットにつながっているかもしれませんね。

リスナーの方が生まれる前にリリースされた曲にリクエストする「B.B.S」(BEFORE BIRTH SONG)というコーナーがあって、洋楽・邦楽問わず、さまざまな時代の曲を紹介しているのですが、ラジオの仕事に携わっていることで音楽の知識の幅も広がりますし、企画につながるアイデアを得ることもありますね。先ほどお話しした「Mステ」の「神イントロBEST10」もラジオから思いついた企画でした。

ラジオの仕事は企画を考えたり、台本を作るといった放送作家の基本業務だけでなく、パーソナリティーのトーク内容を練る、ゲストと打合せをする、ときにはキャスティングも行うというように、テレビと比べて担当範囲が広いですね。その分、全体に関わることができるので、やりがいも大きいです。なによりラジオは、帰って来られるコミュニティーという感じで、仲間意識があって、リスナーとパーソナリティーの結びつきをすごく感じます。その居心地の良さがラジオのいいところですよね。

──Netflix Japan YouTubeでは、どういったことを担当されていますか?
Netflixで配信されている作品をある視点で絞って紹介するダイジェストや、テーマを設けて複数作品を紹介するまとめ動画を作っていて、私は主に韓国ドラマを担当しています。特におすすめのまとめ動画は「男心を掻き乱す『オッパ』の威力」です。女性が年上の親しい男性を「オッパ」と呼ぶという韓国ならではの文化なので、なかなかこのニュアンスを理解するのは難しいかもしれませんが、ぜひチェックしてみてください。

私自身、韓国ドラマが大好きでおすすめしたい作品がたくさんあるのですが、こういったまとめ動画やダイジェストをきっかけに、新たな作品に出会ったり、お気に入りの作品が見つかったという方が少しでも増えたらうれしいです。

強いコミュニティーを作り、番組を長く継続していくサイクルが理想

──テレビ、ラジオ、YouTubeなど、それぞれの仕事で得る経験が相乗効果となって、堤さんならではの視点につながっている印象を受けました。
ありがとうございます。テレビの構成は細部までしっかりと組み立てられていますし、それぞれの現場で学ぶことがたくさんありますね。あとは、大好きな韓国ドラマを教材として、惹きつけるドラマのポイントを勉強する時間も楽しいですね。たとえば、キュンとするシーンにしても、韓国ドラマに出てくるシチュエーションをそのまま日本のドラマに持ち込むことは難しいですが、そのシチュエーションで生まれるキュンとした感情自体は表現できる可能性があると思うんです。上手に消化してアウトプットしないといけないなと考えながら、キュンのパターンをめちゃメモってます(笑)。

──視聴者の目線と作り手の目線、その両方を踏まえて、番組やコンテンツ制作において意識していることはありますか?
それぞれの番組のコアファンを増やすことが重要だと考えています。「あざとくて」のように、毎週の放送をベースに、イベントや配信オリジナルコンテンツを通して、満足度を高め、コアファンを増やし、強いコミュニティーを作る。その結果、番組を長く継続していくというサイクルは良いなと思いました。企画を考える際にもその観点は常に意識しています。今番組内では連ドラを放送していますが、そうやってどんどんいろんな形のエンタメにトライする番組の考え方に刺激されています。

──これから挑戦したいことはありますか?
バラエティとドラマ、それぞれで目標があります。バラエティの目標は、大好きな小籔千豊さんとお仕事をして、小籔さんの魅力を全世界に広めること(笑)。まわりからは、「いつでも小籔さんの現場に入れるのでは?」と言われますが、私自身が小籔さんのレベルに全然追いついていないので、今の不完全な状態で小籔さんとお会いするのが恥ずかしいというか…まだまだ道のりは遠いです。今は「ヒルナンデス」や「Mステ」といった大きな船に乗せてもらっていて自分で何かを成し遂げたという実感はないので、バラエティでもドラマでもYouTubeでも、自分らしく、自分自身の手で何かを作り出せるようになったら、アプローチしたいと思っています。

──いいですね。ドラマはどんな目標ですか?
挑戦してみたいジャンルはいろいろありますが、自分が好きなラブコメは作りたいですね。あとは、「絶対放送できないでしょ」といった社会派の際どいテーマに向き合ってみたいです。日本では難しいかもしれませんが、韓国ではエンタメジャンルのひとつとして確立されていて、その違いはどこにあるんだろうと考えることがよくあります。少年法を題材にした「未成年裁判」、兵役の不条理を扱った「D.P. -脱走兵追跡官-」、など、事実に基づいた事件や問題を真っ向から世の中に伝えるという点に魅力を感じます。

じつは私が放送作家を目指したのは、中学1年生の時に松田翔太さんと高橋克実さん主演のドラマ「ドン★キホーテ」(2011年)を見て、将来は脚本家になりたいと思ったのがきっかけなんです。気弱な児童福祉司とアホで突っ走る任侠集団の親分という真逆の2人が入れ替わるという設定も面白かったですし、そのペアで子どもたちを助けるのが素敵で。笑いを織り交ぜながら社会問題に鋭く切り込んで、こんな作品を作る人はすごいな!と。それまでもドラマやバラエティはよく見ていましたが、自分で作りたいと思ったのはこの時が初めてでした。

バラエティもやりたいという思いがあり、いきなり脚本家として活動するよりも、まずは放送作家としてさまざまな経験を積んで、名前を知っていただき、人脈を広げることで、脚本家への道も開けていくかなと。そこは冷静に考えての判断でした。実際にそういったキャリアで脚本家になっている先輩方もたくさんいらっしゃるので。今経験していることを、ドラマ作りに生かしたいです。いつかドラマを作れるようになったら、その時は憧れの松田翔太さんに出てもらうのが夢ですね。松田翔太さんに、もう一度ヒーローになっていただきたいと本気で思っています。

■本記事のTIPS

・番組のテーマ、ターゲットを明確にし、届けるべきところにしっかり届ける
・リスナーとパーソナリティーの結びつきが生み出すラジオの居心地の良さは、テレビにも応用したい重要なポイント
・イベントや配信オリジナルコンテンツを通して満足度を高め、強いコミュニティーを作る

■PROFILE■
堤映月(つつみ はづき)

放送作家
1997年生まれ。大学卒業後に放送作家として活動を開始。「あざとくて何が悪いの?」(テレビ朝日系)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)、「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)、「100%!アピールちゃん」(MBS/TBS系)、「あしたの内村‼︎」(フジテレビ系)、「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。」(TOKYO FM)、Netflix Japan YouTube、ViVi YouTubeなど、幅広いジャンルで活躍中。
Twitter:https://twitter.com/otsukisankirari
Instagram:https://www.instagram.com/hazuki_0910/


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Writer:龍輪剛


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