YouTubeの今と未来を"中の人"に聞く!|YouTube「メディア化」時代のエンタメ戦略[後編]
ウェブ動画の代名詞的存在とも言えるYouTube。そのユーザーはもはや若者だけにとどまらず、「アナログ世代」にも波及し、魅了し続けている。エンタメにおいて切り離せないYouTubeの活用について、同社の永原錬太郎氏に「前・後編」で話を聞く。
──映像メディアの大手であるテレビ局はどのような取り組みを始めていますか?
テレビ局でもライブ配信機能を使って、スポーツ中継などを積極的に行う活用例が増えています。スポーツ中継以外でも、昨年末には番組のオンエアと並行して"裏ライブ配信"をすることで、より楽しめるような取り組みをされるケースも見られるようになりました。さらに今年増えたのは、世の中の注目が集まる記者会見のライブ配信ですね。
一方で、各番組の魅力や面白さをより広く伝えるために、番組ブランドのチャンネルを立ち上げるケースも増えてきました。実際にアメリカの大手テレビ局が先行して実践しているのは、局のメインチャンネルにさまざまな番組のコンテンツをアップするのではなく、番組ごとにチャンネルを設けて、ユーザーがより好きな番組に集中的にエンゲージできるような環境を整える手法。なかにはチャンネル登録者が2000万人を超えるものも出てきています。今後、日本においても、そのスタイルが定着していくのではないのでしょうか。
──具体的に見込んでいる活用法について教えてください。
国内ではドラマやアニメの本編を配信されているケースも増えていますが、番組の周辺コンテンツを充実させて、積極的に配信するスタイルも見られるようになってきました。ほかでは見られない映像をYouTubeで楽しんでもらうことによって、もっとその番組が好きになり、テレビ視聴への還流を狙うものです。
私たちは「エンゲージメントのプラットフォーム」という言い方をしていますが、YouTubeでは動画の一つひとつをじっくり見ていただけるんです。YouTubeに長く親しんでいただいているユーザーは実感していると思いますが、動画の尺は長くなる傾向にあるといえます。見やすいのは5〜10分ぐらいの尺だとしてもストーリーがしっかりしたコンテンツだと、比較的長尺でもご覧になる方が多い流れにあります。YouTubeが重要視しているのが「視聴時間」で、視聴時間が長いコンテンツほどエンゲージメントが深いというとらえ方をしているので、関連動画などで「おすすめ」をされやすくなっています。新規のファンやライトユーザー層とのつながりをいかにして作るかが、昨今は大事になっている気がします。
──では、今後YouTubeはどのような発展の仕方をしようと考えていますか?
表現できる場を探している方にとって、YouTubeのフォーマットがフィットした…という事例が重なり、配信していただける方が増えた、と私たちはとらえています。「自分のペースで自分の思ったことを伝えられる」ところがYouTubeの良さですので、テレビ局にもオンエアとYouTubeチャンネルを上手く使い分けていただければと思います。通常の番組は週1回のオンエアしかできなくても、残りの6日間を別の切り口でYouTubeに送り出し、常に番組に触れる場として活用する、といったようなことですね。それぞれの媒体特性を生かしていくと番組ファンの獲得につながっていくのではないでしょうか。
半年ぐらいのスパンで見ていくと、以前にはなかったことがどんどん起こっているという実感があるので、弊社側もさまざまな機能を進化させていかなければと思っています。進化した機能を使ったコンテンツの打ち出し方など、いろいろな工夫も可能になってくるはずですので、幅広いカタチで各企業のお手伝いをできるようになるのではないかと考えております。エンタメ業界からも「YouTubeで何ができるのか?」とよく聞かれますが、その答えとして、
・「ファンとのエンゲージメントを深められる」かつ
・「YouTubeの中だけで完結せず、ユーザーをコンテンツ企業の既存ビジネスへと送り出す入り口の役割」を果たしつつ
・「YouTubeにおいて収益化手段を充実させる」
という3つを考えています。この中身を向上させていくことで、さらに大きな変化が見込めると思いますので、その点を追求し続ける…という感じになるのではないでしょうか。ぜひエンタメ業界のコンテンツ企業様とも新たな取り組みをしていければと考えております。
■PROFILE■
グーグル合同会社
YouTube ヘッドオブメディアパートナーシップ
永原 錬太郎(ながはら れんたろう)
1974年、東京生まれ。Google Japan 合同会社において、YouTube の国内メディアパートナーシップの責任者として、コンテンツパートナー企業の動画戦略提案を担当。音楽やゲームなど、日本のエンタテインメント企業での約15年の勤務を経て2014年から現職。
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<取材日:2019/12/04>
<発行日:2019/12/16>
*本記事は、FIREBUGが発行するメールメディア「JEN」で配信された記事を転載したものです。
Writer:平田真人
Photographer:橋口慶
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