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マリマリマリーを手掛ける放送作家・深見シンジが語る|アニメコントの可能性と、競争を勝ち抜くカギ

開始2年でチャンネル登録者数124万人を突破し、2021年のYouTube国内急成長クリエイター第1位に輝くなど、今最も注目を集めるアニメコント「マリマリマリー」。“エモいイラスト”と“シュールなコント”で、10代後半から20代の若者を中心に絶大な人気を誇り、アパレルなどのグッズも完売が続出。今年7月には初の展覧会を開催するなど、YouTubeの枠にとらわれない活動の数々も話題となっている。
人気の秘訣や気になる今後の展開、ニーズが高まるアニメコントの動向について、マリマリマリーの生みの親である放送作家の深見シンジさんにたっぷりと語ってもらった。

自分が考えたコントをそのまま表現できる“自分の持ち場”

──まずは、深見さんの放送作家としての活動について教えてください。

もともとコントや漫才を考えることが好きで、芸人さんと一緒にネタを作りたくて放送作家を目指しました。サンドウィッチマンさんや銀シャリさんなどの漫才を、それぞれの個性や芸風に合わせて当て書きのように作って、誰に見せるわけでもなくノートに書き溜める。そんな学生時代を過ごしていました。

放送作家としての活動は4年目で、テレビやラジオ、YouTube、ライブイベントなどを中心に企画構成のほか、ネタ作りのお手伝いをしています。テレビでは、バラエティー番組の「ウケメン」(2020年)と「Do8」(2021年)に参加させてもらい、コントやバラエティの作り方を勉強させていただきました。

ライブイベントでは、土佐兄弟さんの「ネタ兄弟」で全体の構成やイベントの最後を飾る企画を考案したり、今年6月に開催したロッチさんの単独ライブ「すってんこロッチ」でネタ会議に参加してその場で一緒にネタを練り上げるといった関わり方をしています。

メディアごとの特性があるので、自分が面白いと思うものを、どのメディアで、どのようにアウトプットするか、最適な判断をして届けられるようにしたいと思っています。

──放送作家として活動するかたわら、2020年8月に「マリマリマリー」をスタートさせました。

マリマリマリーを始める1年くらい前から、自分が考えたコントをそのまま表現できる“自分の持ち場”のようなものをずっと探していました。YouTubeはそれが実現できるプラットフォーム。ただ、僕自身は演者ではないので、普通にコントをやっても注目を集めることはできないでしょうし、始めるからには今後続けていくためにもすぐに成果を出したかったんです。

ちょうどその頃、YouTubeで「はじめまして松尾です」がバズって、アニメが人気コンテンツのひとつになっていましたが、僕たちが書くようなコントをやっている人はまだいなくて。アニメ×コントの掛け合わせなら可能性があるんじゃないかと考えて、同期の放送作家で一緒に暮らしていた、さかもと良介に相談しました。

そこから具体的に考えていき、僕自身が好きなレトロでポップなテイストのイラストにしようと決めました。ギャグアニメは絵自体もデフォルメされたぶっ飛んだものが多いですよね。逆に、リアルでおしゃれな質感のイラストなのにシュールなことをやっているというところに、面白さのギャップが生まれるんじゃないかと思ったんです。

──MORISAKI SHINYAさんのイラストは、マリマリマリーを語る上では外せない要素ですよね。

MORISAKIさんは友人に紹介してもらったイラストレーターの中のひとりで、僕が求めていたイラストのイメージそのものでした。MORISAKIさんが描くマリマリマリーのイラストは常に期待を超えるクオリティーで、このイラストなしにはマリマリマリーの世界観は成り立たないほど、なくてはならないものです。MORISAKIさんは「らんま1/2」など、主に1980〜1990年代の漫画やアニメが好きで、そういった蓄積が画風につながっているみたいで。トートバッグにプリントされていてもマッチしそうな、おしゃれな雰囲気が漂っていて、MORISAKIさんのイラストを見た瞬間にグッズのイメージが浮かびました

共感を大切にし、ファン層を狭めない

──エモい質感のイラストと同じく、マリマリマリーの唯一無二の世界観と圧倒的な人気の根底にあるのが、王道と想定外が同居するクオリティーの高いネタです。共感につながるリアリティーや「あるある」をうまく盛り込みながらも、予想を超える展開で、目が離せませんよね。

ありがとうございます。そう言っていただけると、本当にうれしいです。さかもとと僕が “ネタの種”になる1行タイトルを3〜5個くらい持ち寄って、そこから広げられそうなものを1本絞って、ボケ案を出したり展開を考えながら台本を作るというのが大まかな作業の流れですね。

さかもとは大喜利力があって、ボケのワードが面白い。ひとつの言葉で笑わせたいときに、力を発揮してくれる頼もしい存在です。強めのボケとか、ちょっと斜めからの尖った感じも得意で、そういったピンポイントな笑いもたまに織り交ぜていますが、乱発しすぎないように心がけています

見てくれる人を限定せず、ファン層を狭めないようにしたい。そのためにも、最初に考える“ネタの種”の段階から、共感につながるリアリティーを意識して、その共感がどのくらいの人に伝わるかを重視しています。

──なるほど。ファン層を狭めないための意識は、会話劇のような巧みな構成にも表れていると感じました。

芸人さんがコントをする場合は、ダイナミックな動きや微妙な表情といった言葉以外で笑わせられる要素が作れますが、マリマリマリーの場合はそういった見た目のインパクトが出しにくい。会話だけでも笑わせられる、大きな動きがなくても伝わるような構成や展開がベースとなって、そこにイラストが加わることで、笑いを生み出せることが最大の強みだと思っています。

──深見さん、さかもとさん、MORISAKIさん、そしてディレクターとして編集・演出を統括する柳将博さんの4人を中心としたスモールチームで運営しているマリマリマリーは、YouTubeの特長や利点を最大限に活用した、まさに“自分の持ち場”と呼ぶにふさわしい事例だと思います。

“ネタの種”を持ち寄って台本にするまでに1週間。そこからイラスト制作、編集、最終チェックを経て公開と、ゼロから生み出したものが2週間くらいで世に出ていく。このスピード感は、自分でもいまだに「早いな!」という感覚ですね。この前考えたばかりのネタがもう公開されている、みたいな。スピード感も含めて、スモールチームで“自分の持ち場”を構築できるのはYouTubeの魅力ですよね。チームメンバーも少しずつ増え、いろいろな人たちが関わってくださっているので、しっかり頑張っていかなければと決意を新たにしています。とはいえ、気負いすぎないのが自分のいいところだと思っていて、スタートした時と変わることなく、「面白いものをやりたい」という感覚を失わずに続けていきたいですね。

明確な差別化ができているからこそ、伸びていく

──アニメコントの人気は高まり続けていますが、その動向をどのように分析していますか?

アニメコントは、今や“おなじみのコンテンツになった”という印象です。コントをベースにしつつ男女の恋愛に特化している「大学生ズの恋。」とか、少しゲスいネタも扱う「そろ谷のアニメっち」も面白いですよね。それぞれに特色があって、キャラクターの棲み分けもできている。やはり、明確な差別化ができているからこそ、伸びていくんだと思います。競争は激しくなるでしょうが、アニメコントというジャンル自体が当たり前の存在になることで、より多くの人に「マリマリマリー」を知ってもらえる機会が増えるので、ポジティブに捉えています。YouTube黎明期にYouTuberの方々が時代を創っていったように、アニメコントで新たな時代を創っていけたら楽しいですよね。マリマリマリーのクオリティーには自信を持っているので、僕たちはブレずに続けていくだけです。

──競争を勝ち抜くための戦略的な仕掛けや工夫はありますか?

今ではたくさんの人に見ていただけるようになりましたが、始めたばかりの頃は思ったようにいかなくて…サムネにド派手なテロップを入れてみたり、すべてが手探りでしたね。ただ、ネタやイラストに関わる核心の部分がブレることはなくて

そうしているうちに、2020年9月に公開した「LINEでありがちな会話が複数並行するやつ電話でやるやつ」がTikTokでバズって。「このままでいいんだ」「自分たちのやり方は間違っていないんだ」という確信を早い段階で持てたことは大きかったですね。戦略的な仕掛けや工夫ももちろん大事ですが、何よりも「ブレずに貫く部分も持っておく」ことの重要性を実感しました。

それでもYouTubeのチャンネル登録者数は1万人程度で、動画の再生回数もあまり伸びず。そんな中でもスタンスは変えず、マリマリマリーを知らない人にも「なんだこれ⁉︎」と刺さるように、「東京卍リベンジャーズ」などのトレンドを取り入れたネタにも意識的に取り組みました。そこからYouTubeで引きのあるネタをもう少し続けてみようというタイミングで、2021年6月に公開したひろゆきさんのネタが大バズりして。

最初はいつもと変わらず、チャンネル登録者が見てくれているなという印象だったんですが、翌日の朝になったらめちゃくちゃ伸びていて。10万回再生も初めてだったのに、夕方には30万回再生も超え、チャンネル登録者数も一気に増えて。その時は震えましたね。たった1本の動画でこんなに変わるのかと、本当に驚きました。多くの人が見たいと思うような要素や話題になっていることを上手く取り入れることで、知ってもらう機会をいかに増やしていけるか。その手応えをつかんだ瞬間でした。

──グッズは人気で完売が続出。今年7月には初の展覧会も開催するなど、さまざまな広がりを見せています。今後の展望についてお聞かせください。

MARY MARY MARY 1st EXHIBITION「We Love MARY MARY MARY」と題した展覧会を名古屋PARCOで開催させていただきました。僕とさかもと、MORISAKIさんの3人によるサイン会もあって、初めてファンの方々と直接お会いすることができました。大学生や僕たちと同世代の20代半ばくらいの方々が多い印象でしたが、小学3年生と6年生の姉妹とそのお母さん、40代の男性など、幅広い層の方々にお越しいただいて、本当にうれしかったですね。子どもも見てくれているんだとわかって、恥ずかしくないものをつくり続けないといけないなと、背筋が伸びた感じです(笑)。

今後の展開でいうと、「いつも面白いことを仕掛けてくるな」と期待してもらえるようなことを、いろいろと考えています。グッズ展開など、さまざまな可能性を想像できたほうがモチベーションも高まるし、単純に動画の再生回数だけを指標にすると伸びなかった時に苦しくなってしまう。これはマリマリマリーを始める前から頭の中にあったことで、「こんなことがしてみたい」「これで大成功するぞ!」といった数々の妄想をしていたからこそ、今、実現できているんだと思います。

マリマリマリーのイラストは、音楽やアパレルとの相性もいいでしょうし、多方面でのコラボの可能性があると思っています。その際に、「マリマリマリーとのコラボで提供できるメリットはなんだろう」といったことを、しっかりと考えていく必要がある。どんなコラボができるのか、どんなメリットがあるのか、そういった明確なイメージにつながるモデルケースを示していくべき段階なのかなと感じています。

グッズやコラボのほかに、イベントもやりたいですね。例えば芸人さんと一緒にライブができたら面白いだろうなとか。妄想は尽きないので、タイミングを計りながら、成功する道筋を具体的に考えていきたいと思います。軸となるマリマリマリーのチャンネル本体を飽きることなく楽しんでもらえるように、既存のYouTubeの範囲にとどまらない活動を続けていきますので、これからも期待してください。

■本記事のTIPS

・ファン層を狭めないための「共感」と「予想を超える展開」を重視
・人気ジャンルとなったアニメコント。競争を勝ち抜くには明確な差別化が不可欠
・ブレずに貫きつつ、認知を広げる仕掛けとしてトレンドを意識

■PROFILE■
深見シンジ(ふかみ しんじ)
放送作家
1996年生まれ。大学卒業後に放送作家として活動を開始。 四千頭身「YonTube」(YouTube)、 ハナコ「ミッドナイト・ダイバーシティー〜正気のSaturday Night〜」(ラジオ)、ロッチ単独ライブ2022「すってんこロッチ」、土佐兄弟「ネタ兄弟」(ライブイベント)、「修造・一茂のイミシン」(テレビ)など、幅広いジャンルで活躍中。
Twitter:https://twitter.com/tbp3oyyi575

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Writer:龍輪剛


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