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メタバースプラットフォーム「cluster」に学ぶ|エンタメ&ビジネス活用最新事例とメタバース市場拡大のカギ

2022年のトレンドを占う上で、絶対に外すことのできない最重要領域「メタバース」。コロナ禍におけるコミュニケーションの課題解決という“守り”の役割を担いつつ、「自由な発想を創造できる場」だからこその“攻め”の姿勢で、新たなビジネスチャンスの可能性も無限大。
メタバースプラットフォーム「cluster」を開発・運営するクラスター株式会社の成田暁彦さんにメタバースを活用した最新事例、今後の発展のカギについて伺いました。

メタバースを活用して「挑戦する姿勢」を示す

──近年話題となっているメタバースとはどういったものなのか、あらためて教えてください。

メタバースは簡単に言うと、インターネット上に構築されたバーチャル空間にアバターを介して身体性を持ち込んだものの総称で、時間や場所といった物理的制約に縛られることなく他者と交流できる新たなコミュニケーションの場として注目されています。

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© Cluster, Inc. All Rights Reserved.

一概にメタバースと言われてもよくわからないと思いますが、「あつまれ どうぶつの森」や「マインクラフト」といったメタバース的なゲームを例に挙げると想像がつくという方も多いと思います。

──メタバースによって、画期的なエンターテインメント体験が可能になりました。

その最たるものが、2020年4月にラッパーのトラヴィス・スコットがゲーム「フォートナイト」で開催した「Astronomical」でしょう。グローバルアーティストによるバーチャルコンサートとして、かつてないインパクトを与え、大成功を収めました。

実は世界初のVR音楽ライブが行われたのは日本で、その制作を手がけたのがクラスターです。2018年8月にバーチャルYouTuberの輝夜 月(かぐや るな)さんが開催した「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」で、これを機にバーチャルライブが広く知られるようになりました。

この2つのトピックスは、メタバースを活用したエンタメ体験を語る上で欠かせないターニングポイントと言えます。

──コロナ禍における新たなコミュニケーションツールとして、ビジネスシーンにも急速に浸透しているのではないでしょうか。

リアルの場で集まる体験が難しい今、商談会や、展示会、就職セミナー、内定式・入社式、社員総会、PRイベントなど、幅広く活用されています。コロナ禍におけるコミュニケーションの課題解決にとどまらず、バーチャルオフィスを構築して社内ツアーを実施したり、株主総会に導入するなど、「挑戦する姿勢」を示す取り組みとしても注目されています。実際に、「新しさ」「面白さ」を追求していると学生や株主から好評を得て、企業価値の向上につながっているという声も耳にします。クラスターに寄せられたビジネス活用に関するお問い合わせやご相談は昨年1年間だけでも1,000件近くあり、ニーズの高まりを強く感じています。

clusterが目指す「最も敷居の低いメタバース」

──クラスターが開発・運営しているメタバースプラットフォーム「cluster」について教えてください。

2017年にリリースしたclusterは、バーチャル空間で音楽ライブやカンファレンスなどのイベントに参加したり、自分だけのバーチャル空間=ワールドを創ったり、ゲームで遊ぶことのできる国内最大級のメタバースプラットフォームで、スマホやPC、VRデバイスを使って、誰でも簡単に楽しめる「最も敷居の低いメタバース」を標榜しています。

──clusterでは日夜さまざまなイベントが開催されていると伺いました。

フレンドを招待して楽しめるプライベートなイベントから、「ポケットモンスター」とのコラボによるバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」、「ディズニー ツイステッドワンダーランド」とのコラボによる「バーチャル ハロウィーンイベント2021」、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」で行われている定期的なイベントまで、規模やジャンルを問わず、多種多様なニーズに対応しています。その反響は大きく、「バーチャル ハロウィーンイベント2021」では、1週間のイベント開催期間中に55万人もの方に参加してだきました。

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©KDDI・au 5G / 渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト

多くのファン・サポーターと一緒に観ている感覚を味わいながら応援できるスポーツのライブビューイングも人気です。cluster上に創られた横浜DeNAベイスターズの本拠地・横浜スタジアムで球場さながらに野球観戦が楽しめる「バーチャルハマスタ」や、「バーチャル渋谷」特設ステージでのサッカー日本代表バーチャル応援イベントなどが好評でこれまで数回実施しています。サッカー日本代表バーチャル応援イベントは3月24日のオーストラリア戦、3月29日のベトナム戦でも開催したばかりで、今回も多くの方々に参加いただきました。

このようにclusterではさまざまなイベントを開催し、その累計動員数は1,000万人を超えようとしています。cluster全体での2020年のイベント累計動員数が300万人でしたから700万人増えたことになります。2022年もさらに多くの方々に楽しんでいただけるよう、ラインナップを拡大し、機能面のアップデートも重ねていきます。

メタバース市場拡大のカギは、「UGC」と「クリエイターエコノミー」

──「最も敷居の低いメタバース」として、具体的にどういった取り組みをされているのでしょうか。

clusterはメタバースプラットフォームと称していますが、VRデバイスやPCはもちろん、スマホでのアクセス、クリエイトを可能としており、手触り感としては、先ほど挙げた「あつまれ どうぶつの森」や「マインクラフト」などと並ぶ存在になりたいという想いを持っています。そのためには、誰でも、どこからでもエントリーできることが非常に重要だと考えています。

その入り口として、外部ツールの導入やプログラミングなどの専門知識がなくても、スマホ一台で誰でも簡単に自分の想像したバーチャル空間を創造できる新機能「ワールドクラフト」を2月16日にリリースしました。104個のアイテムを自由に組み合わせてバーチャルワールドを創ることができ、他のユーザーと一緒にマルチプレイしながら創って、遊ぶことが可能です。

2021年末時点で5,000を超えるワールドが存在していましたが、「ワールドクラフト」のリリースからわずか1週間ほどで早くも数千近いワールドが創られており、ユーザーのみなさんの「モノを創りたい」という強い意欲をあらためて実感しました。ワールドクラフトで創ったアイテムを自由にアップロードして売買できるストア機能も実装予定で、今夏にはお披露目できるように鋭意開発中です。ユーザー間での売買が可能になることで、新たなクリエイターエコノミーが生み出せると考えています。

──ユーザーのアイデアが投影しやすくなり、さらに新たな経済圏も生まれることで、メタバースプラットフォームとして担う役割が今まで以上に大きくなりそうですね。

YouTubeやTikTok、Instagramがそうであるように、さまざまなクリエイターが「面白い」と思って集まることで、流行になる。クリエイティビティをスマホひとつでアウトプットできる場として、一般ユーザーも含めて、優秀なクリエイターの注目を集めることは、サービスが浸透し、インフラ的存在になっていく上で欠かせない条件のひとつだと思います。

2022年は、「UGC(User Generated Content)」「クリエイターエコノミー」の2つを、メタバース市場を拡大していくための最重要ポイントと捉えて、注力していきます。

海外でも勝ち抜ける可能性が十分にある

──インフラ的存在を目指す上で、昨年11月に設立された「メタバース研究所」の取り組みも重要になりますね。

そのとおりです。メタバースはビジネス面でも重要な役割を担いますが、それ以上に、インターネット空間に身体性を持ち込むことの社会実装が大きなテーマになります。ここは、私たちクラスターがR&D組織として全うすべき責務として、研究を重ね、clusterに活かし、得られた知見をしっかりと社会に還元したいと考えています。

国境もなく、さまざまな価値観が混在するメタバースでは、エリア性や嗜好性など、あらゆることに配慮して、心理的安全性を担保していく必要があります。エンタメやビジネスの枠を超えて、精神を肉体から解放するという広義の意味で、身体性を持ち込むことにどれほどの可能性があるのか。東京大学稲見研究室と京都大学神谷研究室の協力のもと、⽇本社会におけるメタバースのあり⽅を再定義し、真の価値創造を図るべく、活発に議論を重ねている最中です。

──最後に今後の展望についてお聞かせください。

メタバースという領域においては、海外でも勝ち抜ける可能性が十分にあると考えています。日本のアニメやゲームは世界に誇るプロダクトで、それらを支える優秀なクリエイターやエンジニアの方々が数多く存在しています。その知識や経験はメタバースを発展させる上でも大いに活かせる武器になりますので、積極的に挑戦してほしいですし、ぜひお力をお借りしたいと思っています。日本だから提供できるサービス、日本だから実現できるメタバースを創造していきますので、ご期待ください。

本記事のTIPS

・メタバースを活用して「挑戦する姿勢」を示し、企業価値を高める
・スマホひとつで創造力をアウトプットできる場に、優秀なクリエイターが集まる
・メタバース市場拡大のカギは「UGC」と「クリエイターエコノミー」

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■PROFILE■
クラスター株式会社 取締役COO
成田暁彦(なりた あきひこ)
2008年に新卒で株式会社サイバーエージェントへ入社し11年半在籍。ネット広告営業を経験後、新規事業(子会社)立ち上げ2社を経験。その後、株式会社CyberZ(子会社)で広告部門の営業統括および、企画マーケ部門、海外支社(SF/KR/TW)の責任者を兼務。2019年10月よりクラスターに参画し、ビジネス、アライアンス全般を管掌。2020年9月より取締役就任。


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Writer:龍輪剛

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