FIREBUG・カウシェ代表対談。合理化が進む「ショッピング体験」の“エンタメ化”
当社はエンタメの力で、スタートアップ企業のマーケティングをメインにさまざまなビジネスサポートを行ってきました。スタートアップ企業が直面する課題、FIREBUGだからこそ提案できるソリューションを、事業成長の後押しとなった事例を交えて紹介する対談企画「Startup STORY」。
第3回のゲストは、「シェア買いアプリ」を運営するカウシェ代表取締役CEOの門奈剣平さん。今回は門奈さんがカウシェを創業した理由、共同購入の可能性について話を伺います。
日本で「共同購入サービス」を立ち上げようと思ったワケ
佐藤:門奈さんがカウシェ(当時の社名はX Asia)を立ち上げようと思った経緯は何だったのでしょうか?
門奈:自分は宿泊予約サイト「Relux」を提供するLoco Partnersの2人目のメンバーとして参画し、中国子会社の支社長やKDDIによるM&A後の統合プロセス(PMI)なども経験してきました。そうした経験を生かし、自分でも事業を立ち上げたいと思ったんです。
いくつか事業のアイデアもあった中で、共同購入のアプリを提供することにした理由──その背景にはコロナ禍による社会の変化が大きく影響しています。
不要不急の外出自粛要請、飲食店や百貨店への営業自粛要請によって、モノの売り買いが一気に冷え込んでしまいました。例えば、営業自粛によって販路を失った飲食店、食品メーカーや生産者は食品などを廃棄せざるを得なくなってしまったんです。
そうした状況の中、中国で急成長する共同購入のECプラットフォーム「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」からアイデアの着想を得て、日本でも同様に共同購入のECプラットフォームを展開することで、冷え込んでしまったモノの売り買いを盛り上げられるのではないか。そして、デジタルの買い物体験をアップデートしていけるのではないか、と思いました。
中国ではコロナ禍で百貨店が休業した際も、オンライン接客が生まれるなど、オフラインの代替となる新しい買い物体験が立ち上がっていったのに対し、日本ではそういう動きがあまり見られませんでした。だからこそ、チャンスがあるとも思いました。
佐藤:もともと、日本に共同購入のサービスはなかったのでしょうか?
門奈:過去にギャザリング(購入希望者が増えるほど価格が下がる仕組み)というものはありました。いま、共同購入は中国では当たり前になっていて、拼多多(ピンドゥオドゥオ)の年間アクティブ購入者数はアリババを抜くほどの規模です。数年前は誰も知らない状態だったのに、「ここがECを変えた」と言われるくらいの知名度になっています。
佐藤:拼多多(ピンドゥオドゥオ)が急成長したのは、中国の国民性などは関係しているのでしょうか?
門奈:個人的な感覚としてですが、国民性は関係ないと思っています。“中国だから”成長したのではなく、単純に拼多多(ピンドゥオドゥオ)のビジネスの仕組み、ユーザーの体験が素晴らしいからこそ、熾烈な競争環境の中で勝ち残れた。サービスを立ち上げる前から、世界に通じるサービスだと思っていますし、日本の人にも喜んでもらえる仕組みだと思っています。そして、その思いはリリースから1年ほどが経ったいま、さらに強くなっています。
また、広告などを積極的に実施することなく、この1年でアプリが30万ダウンロードされるなど、一定の手応えも感じ始めています。ECプラットフォームは世の中の"血液”とも言えるインフラなのに、不十分な部分はまだまだある。楽天市場の規模のECプラットフォームがあと2〜3個は出てきても不思議ではないと思っているので、自分のバックグラウンドも生かしながら経営し、サービスを今以上に成長させていけたら、と思っています。
商品の掲載数を「7000点」にまで拡大できた裏側
佐藤:バックグラウンドに関しては、どこを生かしているんでしょうか?
門奈:バックグラウンドに関する強みは日中のハーフであること、スタートアップ業界でキャリアを長く積んできたことです。生い立ちについては母親が中国の上海出身ということもあり、15歳までは上海で生まれ育ちました。15歳までは母語が中国語だったので、当時は日本語が全く話せませんでした。16歳くらいの頃以降は高校生活と大学生活、社会人生活を経て日本語を話せるようになり、今は日本語を話していても中国出身の人と思われないようになったのが強みです。
佐藤:中国語の方が話せるんですか?
門奈:中国語を話してても、日本人と思われない。ちょうどいい塩梅です(笑)。キャリアについては、先ほどお話ししたとおり、スタートアップのインターンとしてスタートし、組織が数百人規模にまで成長する過程を見てきました。
いま30歳なのですが、人生の半分は中国で生活し、仕事もした。また、スタートアップやプラットフォームビジネスに馴染みがある。この強みを掛け合わせ、中国で進んでいる事業を持ち帰り、日本に貢献したいという思いでカウシェをやっています。
佐藤:なるほど、そういうバックグラウンドだったんですね。少し話を戻し、カウシェについてもう少し聞かせてください。現在、カウシェを使っているユーザーは商品を購入する前にカウシェを見て、そこに欲しいものがあったら買うというのが一番おトクという体験になっているんですよね?
門奈:そうですね。「何か良いものはないかな?」と掘り出し物を期待してアプリを立ち上げる人もいます。ミネラルウォーターや炭酸水、白米などの日々の生活に必要なサービスは他のECプラットフォームより10〜30%おトクな状態がつくれています。
現在、商品数は約7,000点となっており、取引のある事業者の数は350社くらいに拡大しています。当初、日本において「割引=悪」なのかと思っていたのですが、いまは想定していた以上に応援と期待をしてもらっているな、と感じます。
佐藤:それはなぜ、実現できるんですか?
門奈:一言で説明すると、広告費を使って商品を販売するよりも、カウシェに掲載した方が良いと思ってもらえているからです。例えば、数%の手数料を払ってECプラットフォームに商品を掲載しても、結局は自分たちで集客しなければいけません。その結果、SNS運用の担当者をつけ、トラフィックが集まらなければインフルエンサーにギフティングするなど、オンラインで誰かにリーチするとなると一定の先行投資が必要になります。
カウシェはそうしたコストをユーザーに“割引”という形で還元し、ユーザーに新しいユーザーを呼んできてもらう、という仕組みを提案しています。
先を見据えた「組織づくり」へのこだわり
佐藤:共同購入のサービスはこの1年ほどで、いくつか立ち上がってきたと思います。競合も増えている中で、なぜシェアを伸ばすことができたのですか。
門奈:早いタイミングで市場に参入していたことも関係していると思います。また、真剣に日本のEC、モノの売り買いの構造自体にアップデートをかけたい、最終的には「買い物体験を変えた」と言われるサービスにしたいと思っているからこそ、チームづくりには特に注力しています。例えば、社内には過去に自分で起業した人やスタートアップのボードメンバーだった人など、いわゆる“2週目”の人が多いです。
規律を持ってユーザーにサービスを提供できるかどうか。ここがサービスの限界を決める天井になると思っているからこそ、最初からガバナンスは強く意識しています。最初から1000万人、2000万人のお客様に使ってもらえるサービスにしたいと思っているので、何かしらの問題が起きないように、CTOとCOOがサービス提供に向き合い、自分は経営に向き合うという形で社内の役割を整備して事業を進めていっています。
佐藤:人のマネジメントで大切にしていることはありますか?
門奈:ワンマン社長にならない、ということです。日本全国のユーザーに愛され、なおかつ将来的にはグローバルに進出するサービスを目指していくにあたって、ひとりの想像にはすぐに限界が来ると思っています。だからこそ、経営チームを強くしていき、なるべく権限を委譲して、主体者意識を持てるような体制にしています。いま、組織自体はフルタイムが約10人、インターン生が約5人、副業が40人ほどの規模になっています。
佐藤:副業はどうやってマネジメントしているんですか?
門奈:マネジメントに関しては、スキルや時間を切り売りしてもらうのではなく、例えば(本業ではない)別の業務をやってみたい、自分の腕試しをしてみたいなど、キャリアを充実させていくことに向き合って、マネジメントしています。
4〜5年後のカウシェのあるべき姿
佐藤:4〜5年後のサービスのイメージはどう描いていますか?
門奈:4〜5年後はまず、取扱高を1兆円の規模にしたいですね。そこが実現できて、初めて「世界一楽しいショッピング体験をつくる」というビジョンの実現に少しだけ繋がると思っています。
イケアやコストコ、アウトレットモールなど“オフラインの場所”に買い物に行く際、もちろん価格がおトクであることもそうなのですが、それ以上に「その場所に行く楽しさ」があります。一方で、オンラインでの購買はAmazonを筆頭に商品を検索して購入し、翌日に届くというもの。すごく便利なのですが、どちらかと言えば倉庫から引き出す感覚に近い。そこにゲーム性、ソーシャル性、エンタメ性を掛け合わせていくことに特化して、カウシェはオンラインでの買い物に情緒的な価値をつくっていきたいな、と思います。
佐藤:買い物に行くと、とりあえず3時間くらいは時間を潰せるじゃないですか。あれは「モノを買う」よりかは、その場所に行ったら「時間を潰せる」ことに価値がある。そういう意味ではYouTubeやNetflixなどで動画を見ていたら時間を潰せるように、長い時間楽しめるもの、暇をつぶせるものは良いなと最近よく考えています。まさにエンターテインメントですよね。
門奈:おトクという言い訳や、誰かと一緒に購入するという言い訳をつくっていきながら、究極的にはカウシェに来てモノを買わなくてもいいので、そのままアプリにきて遊んでもらえるようなプロダクトになっていってもいいなと思います。
多くの人が想像できる5年後の世界は“機能的な世界”だと思います。例えば、注文すれば5時間後にモノが届くといったような感じです。いま、トレンドとなっている小売のDXはまさにそれだと思います。カウシェは真逆をいっていて、購入するまで手間もかかりますし、誰かとコミュニケーションしなければいけないんですけど、「友達同士で買う」「知らない人と一緒に買う」というエンターテインメントを楽しめる空間になったらいいなと思います。
佐藤:最後、FIREBUGに期待していることも教えてください。
門奈:スタートアップにとって、マーケティングは一度限りのチャレンジになる可能性が高い。そこをマーケティングパートナーとして伴走してもらい、スタートアップの“次のステージ”を創造していただけるのは、業界全体が盛り上がっていくという意味でも大事なことだなと思います。
FIREBUGさんが持つ広告業界、芸能界など各方面への知識やネットワークを元にサポートしていただくことで、失敗するリスクが少なくなり、起業家が最大限チャレンジできるようになるのは有難いです!
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