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YouTubeの今と未来を"中の人"に聞く!|YouTube「メディア化」時代のエンタメ戦略[前編]

ウェブ動画の代名詞的存在となったYouTube。テレビや映画、webメディア等の映像分野のエンタメは、今後どのようにYouTubeを活用していくべきなのか?同社の永原錬太郎氏インタビューの「前編」をお届けする。

──今やYouTubeはツールの枠にとどまらず、1つのメディアになったと言っても過言ではありません。この現況をどうとらえていますか?

我々としてはYouTubeを「技術プラットフォーム」として考えています。これは、主役であるコンテンツオーナーのみなさまが、ご自身のメディアをYouTube上に持つのを支援している、という意味です。ただ、既存のメディアと違うのは、YouTubeは固定されたトップページを持っていないところです。つまり、どのユーザーに対してもカスタマイズしたものをお見せできているのが特徴で、自分の好きなモノがたくさんある場だと示せているのではないでしょうか。開発チームも機械学習をふくめて、各ユーザーへのおすすめの精度をより高めようと日々取り組んでいます。

実際、関連動画やYouTubeのホーム画面に表示される「おすすめ」からの流入も多くなっています。さまざまな経緯で1つ目のYouTube動画を見ていただいた後、次に出てくる「おすすめ」が数珠つなぎになっていくことで、世代や嗜好を超えて楽しんでいただけるようになった、と感じています。総務省の調査データによると、YouTubeは若年層から大人の方々まで幅広く利用されていると出ておりますが、特に50代のユーザーは1年前に比べて9.3ポイントの伸び率と、非常に高まっているのも興味深いところです。

ちなみに、月間のアクティブユーザーは日本国内で約6200万人、世界では月間で約20億人のログインユーザーがYouTubeを利用しており、1日あたりの動画視聴時間は10億時間を超え、1分あたり500時間もの動画が投稿されています。

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──中でも、どのようなシステム構築に力を入れているのでしょうか?

ここ数年はライブ配信にも力を入れています。クオリティの高いライブ配信をストレスなく視聴できる環境が整ってきたこともあり、メディア企業の方にもご活用が広がっています。コミュニティを育みつつ、併せて収益化を視野に入れたところでは、ライブ配信をしながら多くのユーザーとコミュニケーションができる「Super Chat(スーパーチャット)」という機能も提供しています。この機能により、クリエイターの方々などは広告収益だけではなく、熱心なファンの方々からも収益を得ることができるようになりました


また、活用例が増えている機能では「プレミア公開」があります。これは、ライブ配信とアーカイブのいいところ取りと言うとわかりやすいかと思います。アーカイブを配信するような手順で配信開始時間の設定できるので、多くのユーザーが同時に視聴しながらチャットも楽しめる機能になります。クリエイターご本人がチャットに参加すると、ひときわ盛り上がるようです。

それから、3万人以上の登録者のチャンネルなどの要件を満たすと使える「チャンネルメンバーシップ」という機能も提供しています。月額制でチャンネル メンバー限定の配信動画を見ることができたり、限定のデジタルアイテムが使用できたりするので、コンテンツ企業でも活用されるようになってきました。価格帯もバリエーションがあるので、興味を示される企業も増えてきた印象を受けています。

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──コンテンツの権利保護については、どのような取り組みをしていますか?

毎分、500時間分の動画がアップされているとお話ししましたが、そのすべてが配信する前にスキャンされています。一定の要件をクリアした権利者は、事前にコンテンツIDという仕組みに動画を登録しておくと、同じ動画や一部分が他のチャンネルでアップされた場合、「ブロックする」「捕捉する」あるいは「収益化する」を定めておいたポリシーに沿って選択するシステムをとっています。さまざまなタイプの動画がアップされる可能性に備えて、コンテンツIDは日々ブラッシュアップしてはいますが、権利者の方にも「気づいたことがあれば、ご連絡をお願いします」と呼びかけ、開発チームには随時対応を働きかけております。少しでも早くそういった不便をなくせるよう尽力しているところです。まずは的確にマッチングさせて、権利者が望まないものをブロックするのが基本です。

捕捉する」という選択肢を設けているのは、たとえば海外の市場を考えた時に、権利者のコンテンツがどの国や地域で多く見られているのかを知ることができるのも一つの理由です。コンテンツIDで捕捉された投稿動画からは視聴傾向のデータをとることができますし、基本的にアップロードした人の収益にならないようになっているので、権利者様のファンがどこにいるのかを調べる、という活用例もあります。

とあるパートナー企業ですと、中東あたりで多くの作品が視聴されていることがわかって、中東エリアに訴求する戦略を考え直すに至ったと、役立てていただいたケースもありました。いずれにしても、権利者側のいろいろな要望がありますので、選択肢を増やして対応しています。場合によっては、無許諾でアップロードされたコンテンツにコンテンツIDを使って公式動画へのリンクを張ることも技術的には可能ですので、それを実践している企業も存在しています。

人口の半分に及ぶ6000万人超のアクティブユーザーを抱えるYouTube。日々進歩するさまざまなシステムが、コンテンツのあり方さえも変えていこうとしている。次号、後編ではエンタメ業界はどのようにYouTubeを活用していくべきなのか、テレビ局はどのように「使い倒し」ていくべきなのか、などについて紹介する。
■PROFILE■
グーグル合同会社
YouTube ヘッドオブメディアパートナーシップ
永原 錬太郎(ながはら れんたろう)

1974年、東京生まれ。Google Japan 合同会社において、YouTube の国内メディアパートナーシップの責任者として、コンテンツパートナー企業の動画戦略提案を担当。音楽やゲームなど、日本のエンタテインメント企業での約15年の勤務を経て2014年から現職。


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<取材日:2019/12/04>
<発行日:2019/12/09>
*本記事は、FIREBUGが発行するメールメディア「JEN」で配信された記事を転載したものです。

Writer:平田真人
Photographer:橋口慶​

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