セキュリティクリアランス法案が成立
「セキュリティクリアランス」法案が成立
Confidentialに該当する情報を取扱うセキュリティクリアランス制度が2024年5月10日に成立しました。
これは、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」といいます。
セキュリティクリアランス制度
セキュリティクリアランス制度は、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報に対して、アクセスする必要がある者のうち、情報を漏らすおそれがないという信頼性を確認した者の中で取り扱うとする制度です。
この制度については、特定秘密保護法が2014年12月から施行されていて、こちらは特定秘密が対象になります。
「特定秘密」とは
・別表該当性
・非公知性
・特段の秘匿の必要性(漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの)
を満たす情報であり、漏えいによって著しい支障を与えるおそれがあるものです。
他方、「重要経済安保情報」は、
・重要経済基盤保護情報該当性
・非公知性
・特段の秘匿の必要性(漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるもの)
・特定秘密に該当するものは除外
を満たす情報であり、漏えいによって支障を与えるおそれがあるものです。
本法案は、衆議院では2024年4月9日に修正案として可決しました。
参議院では2024年5月10日に可決して成立しました。
衆議院可決時に修正案(19条等の追加)が提案されていますので、国会提出時とは少し条文が変わると思います。
条文
条文を見ていきましょう。
最初は、本法案の目的です。
次は、重要経済安保情報の定義です。
要約すると、先にも記載したとおり、重要経済安保情報とは、
・重要経済基盤保護情報であって(情報該当性)
・公になっていないもののうち(非公知性)
・漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿する必要があるもの
・特定秘密に該当する情報を除く
になります。
これには、サイバー脅威・対策等に関する情報、サプライチェーン上の脆弱性関連情報ほかにも、AI、量子、宇宙等も想定されています。
ここで「重要経済基盤保護情報」とは、
「重要経済基盤」とは、
適正評価
重要経済安保情報を取扱うには適正評価を経て、取扱うことが認められた事業者及び取扱者でなければなりません。
適正評価は、以下の7項目に基づき、漏らすおそれがないことについての評価を実施します。
重要経済基盤毀損活動(重要経済基盤に関する公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、重要経済基盤に関して我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるもの並びに重要経済基盤に支障を生じさせるための活動であって、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人を当該主義主張に従わせ、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行われるものをいう。)との関係に関する事項(評価対象者の家族(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下この号において同じ。)、父母、子及び兄弟姉妹並びにこれらの者以外の配偶者の父母及び子をいう。以下この号において同じ。)及び同居人(家族を除く。)の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む。)及び住所を含む。)
犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
薬物の濫用及び影響に関する事項
精神疾患に関する事項
飲酒についての節度に関する事項
信用状態その他の経済的な状況に関する事項
罰則
漏えい時の罰則があり、過失犯も規定されています。
・重要経済安保情報の取扱いの業務に従事する者
故意:5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金
過失:1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金
・公益上の必要により行政機関から重要経済安保情報の提供を受け、これを知得した者
故意:3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金
過失:6か月以下の拘禁刑・20万円以下の罰金
・外国の利益等を図る目的で行われる、重要経済安保情報の各種の取得行為
5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金
・適合事業者への罰則あり(両罰規定)
範囲
当初、特定秘密保護法では対象とされていない経済安保情報を定義してこれを保護するといった報道がされていたように思いますが、国会の委員会審議では、特定秘密でも経済安保情報を対象とすることができることとされており、特定秘密に該当する場合は、本法案ではなく、当然に特定秘密保護法の対象となる、ということのようです。
そのため、米国におけるTop Secret、Secretは特定秘密で、Confidentialは重要経済安保情報として対象になるとのことです。
図式化すると以下のようになると思います。
経済安保推進法改正
重要経済安保情報保護法と同時に経済安保推進法も可決し、港湾運送事業も対象となりました。
第二一三回
閣第二五号
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和四年法律第四十三号)の一部を次のように改正する。
第五十条第一項中第十四号を第十五号とし、第八号から第十三号までを一号ずつ繰り下げ、第七号の次に次の一号を加える。
八 港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)第三条第一号に規定する一般港湾運送事業
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律による改正後の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、当該規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
理 由
経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為が多様化し、安全保障を取り巻く環境が変化していることを踏まえ、特定社会基盤役務の安定的な提供を確保するため、特定社会基盤事業として定めることができる事業に一般港湾運送事業を追加する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。