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急行電車、飛び込み、のち終わり

ラインが消えかけた横断歩道、何も息をしていない花壇、エアコンの不快な風、去年の話

近所の知らない人間の宝物、擦った跡のある車、放課後に登校するとき見かける懐かない猫と誰もいない時間帯の夕日が眩しい電車、自分も学生なのに自分以外の制服を着た人間を表面だけで怖がってしまう罪悪感、今も同じ
駅のホームでの飛び込もうかなという思考が何も知らずに通り過ぎて行く急行電車の風に邪魔される

昨日聴いた曲も憶えていないくせにまた消費するだけの音楽を探している
馬鹿にされたくない、見られたくない、泣きたくない、泣いてしまいたい、変なところはないだろうかと鏡の前でさんざ自分とにらめっこをしてそれでも玄関前で泣いてしまうような人や泣きながら帰り道を歩いたり自転車をこいだことがある人は仲間だよ、馬鹿にされたくないわたしを見るなという思いでイヤホンをして音楽を流し込む(ヘッドホンが欲しいな)、馬鹿にされても笑われても気付かないように、わたしはあなたたちの言葉なんて聞こえていませんよと主張するためだけに音楽を聴いている、消費されるだけでわたしが場違いに苦しくなる
「こんなことするために生きてるんじゃない」?
じゃあ、じゃあどうして生きてるんだと自分に訊くけれど答えはいつまでも分からなくて
自分を愛せるのは自分だけらしい、それってほんとうですか、じゃあなんでわたしはこんな風にしか生きられないんだおかしいだろ、なあ聞いてるか
どうしてこうなったんだと何度も自分に問う、ぜんぶ全部わたしの所為でしたそうでした
通学路が変わってしまって消えかけのあの横断歩道を見ることはなくなった、消えかけかどうかも定かではない、最近は猫を見なくなってしまった、あの部屋のエアコンの暖かくて不快な風がほんとうは気に入っていた、家から出て15分で靴擦れを起こしてしまうローファー、外に出ない理由ばかり探している

スプーン一杯分のしあわせなんかじゃ足りないと嘆くぼくと、スプーン一杯分のしあわせも貰ってはいけないのだと分かっているぼくがいる、しあわせとはなんだろう、■■■■も■■■■も分からないのにしあわせが分かるはずないね
急行列車の速く冷たい風に吹かれて考えた、足は踏み出せなくて教科書の入った鞄が重いことが去年も今年も変わらなくて心が冷たくなっていく

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