【活動報告】株式会社日南様を訪問。生成AIを活用したデザイン開発を紹介いただきました。
デザインマネジメント委員会では活動の一環として、知見の獲得と業界の活性化を目的とした視察交流を行っています。今回は神奈川県綾瀬市にある株式会社日南様を訪問し、生成AIを活用したプロダクトデザインの先進的な取り組みについてご紹介いただきました。
株式会社日南様について
今回訪問した株式会社日南様は1970年の創業以来、プロトタイプ製作を主幹事業として、自動車や家電など幅広い分野で日本のモノづくり企業の開発を支援されてきました。また、早くから3Dモデルの活用などデジタルなモノづくりを推進され、製品開発に係るプロセスをトータルにサポートする「開発総合支援企業」の業態を確立されています。
猿渡義市(えんど ぎいち)様
今回ご講演いただいたのは、デザイン/エンジニアリング統括本部長の猿渡様です。プロダクトデザイナーを経て1990年より日産自動車で25年間にわたりカーデザインに従事。K12マーチのエクステリアデザインやインフィニティーのデザインを手掛け、2015年に株式会社日南に移籍。次世代をリードするモノづくりのスキーム構築を推進する傍ら、デジタルツール活用の第一人者として多くのセミナーや書籍でノウハウを発信されています。
第一部:施設見学
ご講演に先立ち、営業本部長の伊藤様のアテンドで本社の主要施設を見学させていただきました。時間の都合でダイジェスト版のツアーとなりましたが、機械加工から造形、表面処理まで充実した設備の数々に圧倒され、モノづくりの臨場感を十分に感じることができました。
その中でひと際印象的だったのは、最新設備とは対照的な手動の切削機です。創立当初から使用しているものと同型で、今でも現役で活躍しているそうです。モノづくりの技術と精神をしっかりと受け継ぐ日南様の歴史を象徴する設備だと感じました。
第二部:ご講演
デザイン開発プロセスに於ける生成AIの活用
猿渡様によるご講演は現地とオンラインのハイブリッド形式で実施されました。聴講者は合計100名以上と大変盛況なセミナーとなりました。注目度の高さが伺えます。
・領域拡大するデザイン部門の業務
最初にデザイン部門の業務をご紹介いただきました。近年の傾向として、スタートアップ企業との協業やロボティクス、スマートモビリティ、さらにはメタバース向けのデジタルコンテンツなど、業務の内容が多様化してきているとのことです。また、YouTubeチャンネル「CURIOLAB」を運営され、デジタルなツールを活用した新しいデザイン手法や表現を精力的に探求・発信されています。
・生成AIの活用事例
完全自動運転車を開発する株式会社チューリング様から委託されたコンセプトカーのデザイン開発等を紹介いただきました。初期ディスカッションに時間を割き画像生成に適切なキーワードを選定。画像の生成と絞り込みを繰り返し、求める結果にアプローチしていきます。様々なAIアプリの特徴を生かしながら組み合わせることで、目的に合わせた最適なワークフローを実現。人とAIの連携によってデザインを具現化していくプロセスをわかりやすく説明いただきました。さらに具体的なプロンプトの組み立て方など実践の中で得たノウハウやコツを惜しみなく紹介いただきました。
日南創立50周年を機にリニューアルした作業着も生成AIを使ってデザインされたそうです。人物モデルの着用シーンも意のままに生成できるため、イメージを共有しながら効率的なデザイン検討が可能です。
・生成AIとの付き合い方
生成AIは作画時間の短縮に有用であると同時に、想像を超えた新たなインスピレーションを与えてくれる存在でもあります。同じ設定でも結果が変わるランダム性がもたらすハッピーアクシデントもAIの魅力だと猿渡様は語ります。一方で具体的なデザイン検討のフェーズでは自分の描きたいイメージを持って臨まないと、際限なく生成を繰り返すだけになってしまうので注意が必要だとのことです。
・著作権とセキュリティについて
聴講したメンバーからは著作権やセキュリティリスクの懸念について質問が上がりました。メーカーとしては気になる部分です。猿渡様は文化庁によるガイドラインなどを引用しながら、会社としてのスタンスや国内外の現状について説明された上で、今後生成AIのさらなる普及が法整備やソリューションを促し環境が整っていくだろうという展望を語られました。
訪問を終えて
臨場感あふれる加工設備の見学から生成AIの最新事例まで、モノづくりの面白さや奥深さを存分に体感できる訪問となりました。講演では、想像以上に幅広くAIの活用が進んでいることに驚くと同時に、日進月歩の領域で貪欲に探求を続ける猿渡様の姿勢に参加者氏一同大いに刺激を受けた様子でした。
今回の訪問を快く受け入れていただいた日南の皆様、ご講演を通して貴重な学びの機会を提供いただいた猿渡様、本当にありがとうございました!