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【活動報告】バーミキュラ ビレッジ by 愛知ドビー様と意見交換会を実施しました(ビジュアルシンボル委員会)
JEITA「ビジュアルシンボル委員会」の活動の一環として、愛知県名古屋市にあるバーミキュラビレッジを訪問しました。
JEITAデザイン部会
「ビジュアルシンボル委員会」とは?
ビジュアルシンボル委員会は、デザイン部会の傘下にある、テーマ別の委員会の一つです。図記号の標準化などの活動を行うほか、普遍的なデザイン要素に関する調査研究を⾏うことで、各社・社会への貢献を⽬指しています。2023年度は「美しさとはなにか」、という問いに対し探索的な活動を実施しています。
はじめに
ビジュアルシンボル委員会では、「デザイナーの活躍するフィールド拡大」という時代背景を受け、異業種の方々と交流し、各領域との相互理解を深めることを活動の中心にしています。
今回は、バーミキュラ ビレッジの視察を行い、魅力的な製品を生み出し続けるバーミキュラの思想に触れることで、体験を通じて「美しさを形成する要素」について考察していきます。
VERMICULAR(バーミキュラ)
愛知ドビーは、1936年に愛知県名古屋市で創業された老舗鋳造メーカーです。
3代目の兄弟の「町工場から世界最高の製品を作りたい」という思いから生まれたのが、メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」です。
「手料理と、生きよう。」をブランドスローガンに掲げ、素材本来の味を楽しむライフスタイルを通じて、世界中に手料理のある暮らしの素晴らしさをお届けする事がバーミキュラブランドの使命です。
https://www.vermicular.jp/aboutus/company/
バーミキュラ ビレッジ
「バーミキュラ ビレッジ」は、「最高のバーミキュラ体験」をテーマに、“バーミキュラの料理の美味しさ”を誰でも気軽に体験できる「DINE AREA(ダインエリア)」と、“バーミキュラブランドの世界観”・“メイド・イン・ジャパンのものづくり”を体験し、バーミキュラを深く知ることができる「STUDIO AREA(スタジオエリア)」の2つのエリアからなるブランドの発信拠点です。
https://www.vermicular.jp/village/concept/
当日レポート
愛知県名古屋市中川運河沿いにあるバーミキュラ ビレッジは「DINE AREA(ダインエリア)」と「STUDIO AREA(スタジオエリア)」の2つのエリアで構成されています。
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「DINE AREA(ダインエリア)」はレストランとベーカリーカフェがありバーミキュラの特徴を最大限に引き出したバーミキュラ料理を体験することができます。
「STUDIO AREA(スタジオエリア)」は、フラッグシップショップ、ラボラトリー、キッチンスタジオ、アトリエ、オーナーズデスクなどがあり、バーミキュラをより深く知ることができる施設となっています。
2つのエリアは120mほどの距離にあり、徒歩で行き来することができるようになっています。
今回の視察では、まず「DINE AREA(ダインエリア)」にあるレストランでバーミキュラで素材本来の味を引き出した料理をいただきました。
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運河を眺めるインダストリアルな空間と落ち着いた調度品が印象的です。
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店内はオープンキッチンになっており、実際にバーミキュラで調理する様子を見る事ができます。
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バーミキュラといえば美味しいご飯のイメージが強いかもしれませんが、ここで提供される料理は、前菜からデザートまですべてバーミキュラ製品を使用して調理されています。
様々な使い方によって丁寧に調理された料理が順に運ばれてきました。
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無水ベイクした白菜のブレゼ アンチョビのクリームソース
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食器類もバーミキュラのブランドイメージと哲学を反映し、バーミキュラの世界観に合ったものが選ばれています。ブランドを軸にコラボレーションを積極的に推進し、各要素が一体となってブランドの世界観を表現していることが伺えます。
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料理が提供される際、どのようにバーミキュラで調理しているのか丁寧な説明がありました。どの料理も、素材の特性を引き立てており、「バーミキュラを使えば、自分でもこんなに美味しい料理が作れるかも」と感じられるような演出が印象的でした。
レストランの隣には「VERMICULAR POT MADE BAKERY」というベーカリーが隣接されており、バーミキュラで焼き上げたパンを購入することができます。
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続いて「STUDIO AREA(スタジオエリア)」に移動します。
こちらにはフラッグシップショップ、ラボラトリー、キッチンスタジオ、アトリエ、オーナーズデスクなどがあり、バーミキュラをより深く知ることができます。
店内には落ち着いたインテイリアの中にバーミキュラ製品の他、食器や調理に関する書籍などが並んでおり、お料理教室や試食もできる空間になっています。
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ラボラトリーでは重厚な機械が複数展示されていて、バーミキュラが製造される工程を詳しく知ることができます。これらは再現模型ではなく実働する、ということを知り驚きました。
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ラボラトリーにはパネルや動画があり、視覚的に理解できるように工夫されています。
続いて製品体験、調理実演がありました。
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13年ぶりにリニューアルしたという新製品を手に取り、色や重さ、手触りなど実物で体感することができます。
製造工程を知ったことで、形状や構造、質感の意味を深く理解できるので、より製品に親しみを感じることができます。
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調理実演では、バーミキュラ製品の特長や使い方の説明を受けながら、先程のレストランでの食事とは少し異なるシンプルな炒め物や無水カレー等の試食をしました。
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最後にディスカッションを行い、バーミキュラブランドについてのお話を伺いました。
得られた気付きと知見をまとめていきます。
バーミキュラの「美しさ」
高い技術と一貫した思想
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バーミキュラは、その洗練されたデザイン思想と鋳造メーカーとしてのアイデンティティを見事に融合させていると感じました。空間デザインにおいても鋳物製の表札やプライスタグ等、鋳造メーカーならではの演出が散りばめられているのが印象的でした。バーミキュラの哲学は、単なる調理道具にとどまらず、食卓全体をコーディネートすることにあるという一貫したこだわりを感じました。
工芸品のような量産品
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バーミキュラの製品は、量産品でありながらも、その工程は職人の手による細部の仕上げが光る工芸品のようでした。製品の色や仕様に至るまで、細かな配慮が感じられます。特に、環境や職人の健康を考慮したカドミウム非使用の色彩設計や、その背後にあるストーリーは、知ることでよりブランドへの信頼が深まります。
リペア・リクラフトプログラムによる環境配慮と長期的なブランド構築
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バーミキュラのリペアプログラム、リクラフトプログラムは「一生」のブランド作りを目指すものであり、このサービスがあることで、ずっと使い続けられる安心感を醸成しつつ、環境にも配慮したブランド戦略の一環を担っていると感じました。
ユーザーコミュニケーション
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バーミキュラ ビレッジの上層階にあるオフィスでは、ファンミーティングや体験型イベントを通じて、開発者とユーザーが直接コミュニケーションを取っているとのことです。この取り組みは、製品の魅力を直接伝え、ユーザーの意見を聞くことにより、開発者とユーザーとの繋がりを重視していることが伺えます。
バーミキュラの経営陣は、製品を通じて「世界中に手料理のある暮らしの素晴らしさを届けたい」という強い想いを持っており、これが従業員の姿勢にも反映されているようでした。ユーザーとの関係構築、そして環境への配慮までに及ぶ一貫した取り組みがこのブランドの世界観を担っていることが理解できました。
また、その製品が生み出す「美味しい料理」という結果に対する深い想いや、それを支える技術など、バーミキュラのブランド哲学の深さを改めて感じることができました。
今回の視察に際して、スタッフの皆様による熱心なご説明と、ブランドに対する想いによって多くの気づきと学びを得る事ができました。
人と製品との関わり方を考えるにあたり、とても示唆に富んだ視察となりました。貴重な体験を提供してくださったバーミキュラの皆様に、心からの感謝を申し上げます。
JEITAデザイン部会に関する問い合わせ
一般社団法人 電子情報技術産業協会
事業戦略本部 市場創生部 志村・飯生・関・飯沼・飯野
デザイン部会|JEITA
2023年度JEITAデザイン部会参加企業は以下の通り(敬称略)
OKIプロサーブ、オムロンヘルスケア、キヤノン、コニカミノルタ、
JVCケンウッド・デザイン、シャープ、セイコーエプソン、
ソニーグループ、TOTO、東芝、ニコン、NEC、東芝テック、パイオニア、
パナソニック、日立製作所、富士通、富士電機、富士フイルム、
富士フイルムビジネスイノベーション、ブラザー工業、三菱電機、
横河電機、リコー、レノボ・ジャパン